LINEやメッセンジャーはもう古い?! 文通のアナログな魅力とは

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 知らない相手と手紙で交流する「文通」が、改めて注目されています。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使った交流が増える中、なぜアナログな手法が人気なのでしょうか。今どきの文通事情を取材しました。

顔を知らないからこそ伝わる気持ち

 東京都の大倉美佐子さん(35)は、同世代の女性10人と、それぞれ数か月に1度手紙を交わしています。「顔を知らない相手だからこそ、率直に気持ちを伝えられる。子育て中の悩みなども分かち合える。手紙を読んだり書いたりするのは気分転換になり、癒やしの時間」と魅力を語ります。

文通相手から届いた手紙を読む大倉さん。「心に残る手紙は何度も読み返しますね」(東京都内で)

 大倉さんが利用するのは、文通相手をオンライン上でつなぐ会員サイト「文通村」。会報にある文通相手募集欄を見て、文通したい相手がいれば、住所や名前を相手に知らせずに、サイト事務局経由で手紙をやりとりできます。会費は月に700~1000円。サイトを運営する保科直樹さんは、「個人情報を気にすることなくやり取りできる安心感が喜ばれている」と話していました。

 同サイトを利用する東京都の新井聡子さん(45)に3月、同世代の女性から手紙が届きました。4年ほど文通しているが、会ったことはありません。「身の回りのことをいつも楽しく伝えてくれて、心が和みます」と新井さん。早速、飼い猫の話題で返事を書いていました。

SNSのハッシュタグで文通相手を探す

 文通はかつて、雑誌の投稿欄などに文通相手募集コーナーがあり、若者を中心に盛んに行われていました。しかし、携帯電話や電子メールが普及するにつれ、手紙によるやり取りが減少。個人情報保護の問題もあり、雑誌の投稿欄はいつしか姿を消してしまいました。

 その文通が今、形を変えてじわじわと広がりを見せています。文通村のようなオンラインサービスが複数提供され、国内外の文通相手を紹介する日本郵便の「青少年ペンフレンドクラブ」の会員数は、2017年度末に1万986人と、前年度末より6割近くも増えました。

 博報堂生活総合研究所の夏山明美さんは、文通人気の背景には、「SNS疲れ」があるとみています。SNSが新たな社会基盤となり、身の回りの情報を簡単に他人に伝えられるようになった一方で、ネット上での中傷や疎外感に悩む人も増えたそうです。夏山さんは「文通は特定の相手との関係を、ゆっくり、深く築くことができる。SNSでは得られない癒やしを感じられるのでは」と分析しています。

 インスタグラムやツイッターでも、「#文通」「#文通相手募集」というハッシュタグ(キーワード)が多く見られるようになりました。SNSを使って文通相手を探すという、意外な現象です。

インスタグラムのハッシュタグ「#文通」の画面。カラフルなレターセットが並ぶ

 インスタグラムを見ると、「#文通」のハッシュタグで6万件近くが投稿されています。写真投稿のSNSだけに、文通相手を募集する方法も、紙に文字を手書きして撮影したものが多く見られます。投稿者は10~30代の女性が中心。投稿写真にはカラフルな便箋や封筒なども多く、「インスタ映え」を意識する若者のニーズも満たしているよう。

 楽天によると、レターセットの売り上げは、この3年で約2割増えました。「じわじわと人気が出てきている」と同社の担当者は話す。

 夏山さんは、「絵文字やスタンプがあふれる時代、今の若者には手紙を書いたり、絵を描いたりする作業は新鮮。時間と手間をかけて関係を築いていく文通が、若い世代で見直されている」と話していました。

見直される「手書き」の魅力

 コミュニケーションの手段として、ペンなどによる手書きが見直されています。

 ゼブラが2014年に行った調査では「仕事や生活で手書きすることが必要か」との問いに87%が「かなり必要」または「必要」と答えました。「手書きの良さを感じることがあるか」との問いには、90%が「かなり感じる」または「感じる」と回答しました。

 一般社団法人手紙文化振興協会代表理事のむらかみかずこさんは、「ぬくもりを感じさせる手書きに価値を見いだす人が増えている」と指摘。「手書きは『自分を大事に扱ってくれている』という印象を相手に与える。そんな効果に注目して、積極的に手書きを取り入れる人が多いのでは」とむらかみさん。

 東京・銀座の文房具専門店の伊東屋は、15年に本店を建て替えた際、手紙関連を取り扱う専用のフロアを設けました。レターセットや万年筆など約1500種を取りそろえ、郵便ポストも設置する。同社広報室の市原美子さんは、「すてきな便箋やはがきを選ぶところから、豊潤な時間が始まります。手紙に不慣れな人も試してみてほしい」と話しています。

相手思う心地よさ

 取材を終えて 字が下手ということもあり、手紙やはがきを書くのが苦手。そんな私が取材先に感化され、まずは身近な家族に手紙を出してみた。どんな便箋なら喜ぶかな、何を書こうか――。相手のことに頭を巡らす時間が、何とも心地よいのだと再発見した。数日後、手紙を受け取った妻と子の笑顔も弾んだ。乱れた字は相変わらずだが、苦手意識を捨て、習慣にしてみようと思っている。(志磨力)