性愛と避妊について話さないのはなぜ?

サンドラがみる女の生き方

 東京都の区立中学校の性教育の授業で「性交」や「避妊」といった言葉を使ったことが論議になっています。そもそも「性についてあまり詳細に話さないほうが良い」と考えるオトナが日本には多いのではないかという印象が私にはあります。

 ドイツでは、たとえば「避妊」について、カップル間ではもちろん、女性同士の会話の中でもよく話題に上ります。飲み忘れを防ぐため、学校や大学で使う筆箱にピルを入れている女子に、仲間が「ピル飲んだ?」と声をかける光景は珍しくないですし、未成年のカップルなら親と会話をする際に「それで、あなたたち、避妊はどのようにしているの?」と直球で聞かれることもあります。

 どのようなシチュエーションであっても、そこに茶化ちゃかす雰囲気はなく、気軽に堂々と語られている印象です。

カップルにとって不可欠な避妊にまつわる話し合い

 ドイツでは、恋愛をしてカップルとして付き合うようになると、必ずといっていいほど避妊について話し合います。男性のほうから「聞いていい? 君はピルを飲んでいるの?」(男性がこの質問をするのは特に失礼なことではありません)と切り出すこともあれば、女性のほうから「私はこうしているのだけれど、どう思う?」と聞く場合も。 

 体に合わないなどの理由でピルを飲んでいない場合は、そのあたりのことも説明します。そこに恥ずかしさはあまりありません。避妊について話す中で、相手の人となりも見えてきますし、ピルでいいか、避妊具を使うかなど、お互いの考えを話した上で合意します。ちなみに「子供ができたら結婚するから避妊はしないでおこう」という考え方は、ドイツにおいてはアウトだとされています。

「大事に思ってくれている男性」こそ、一緒に避妊を考える

 「自分(女性)を大事に考えてくれている男性」は、必ず避妊について一緒に話し合い、お互いの健康や将来設計も考えている、と評価されます。逆に、男性側が避妊の話をしなかったり、興味を示さなかったりする場合は「イコール無責任な男」だと見なされますので、ドイツでは親が自分の娘に対して「避妊の事を考えようとしない男性と付き合うのは論外。危険だからやめなさい」と注意することもあります。

写真はイメージです

 ピルに関して、日本での解禁は1999年ですが、ドイツでは1961年から使われています。加入している保険にもよりますが、ドイツでは女性が20歳になるまではピルが無料で、その後、一部自己負担になるため、恋人と話し合い、費用を男性側が負担することも多いのです。このあたりの費用のこと、副作用のことを、医師ともカップル同士でもオープンに話し合います。

性教育は「寝た子を起こす」?

 性教育を詳細に行うと「寝た子を起こすことになる」という意見が日本にあるようですが、ドイツでは「子供はとっくに起きている」という考え方が社会の共通認識です。むしろ子供が性に関心を持つ際に、誤った情報を入手して信じてしまうことを防ぐためにも、学校や家庭で正しい情報を大人が子供に教えるべきだと広く考えられています。

 ドイツの学校では、小学校1年生から性教育をして、州によって差はあるものの大体10歳ぐらいで避妊の大切さについて教えられます。いわゆる思春期の「難しいお年頃」になると聞く耳を持たなくなる子もいますので、思春期に入る前に知識として教えておくことが大切だとされています。

 「ネットに情報があふれている中、10歳で教えるのは遅すぎるのではないか」という意見も聞かれます。また今は時代の流れに伴い、LGBTQについても性教育で取り上げるべきとの声もあり、一部では既にスタートしています。

「赤ちゃんはどこから?」をきっかけに

 学校に限らず、ドイツは家庭の中でも性に関してオープンです。今のドイツでは、子供が「赤ちゃんはどこから来るの?」と質問をした「まさにそのタイミング」で、親がはぐらかさずに自分の言葉で説明するのが良いとされています。

 言葉で説明するのが難しいので、多くの親は子供向けの性教育の絵本の助けを借りて子供に教えます。かわいいイラストで、性行為や出産の絵が描かれており、人工授精によって誕生する子供もいることが書かれている現実的な内容です。

ドイツの性教育用の絵本(サンドラさん提供)

「できちゃった婚」への目は厳しいドイツ

 逆に、ドイツでは「できちゃった」ことや、いわゆる「デキ婚」に対する目は日本よりも厳しいかもしれません。キリスト教の影響もあり、中絶につながりかねないような「深く考えず子どもができてしまった」事態はできるだけ避けるべきだと考えられているよう。ただそうはいっても、子どもができた10代の女の子に、高校が自主退学を迫るようなことはありません。

 このテーマに関しては、日本とヨーロッパの文化の違いもあるかと思うので、「この方法が良い!」と白黒つけることは難しいと思います。けれども、女性の生き方について考えるとき、性や避妊について「ぼかした感じ」でしか教えられなかった場合、大人になってから自分の主張を通したり、照れずに考えを述べたりするのって、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。

 

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/