妊娠したら舌打ちされた! マタハラを許す思考とは?

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 女性が妊娠・出産する順番を職場で決める「妊娠輪番制」が話題になったり、「人手不足のために採用した人が妊娠して困った」という国会議員の発言が報じられたり。今回は話題になっているマタニティー・ハラスメント(マタハラ)について考えたいと思います。

 マタハラとは、妊娠や出産などを理由に、女性が職場で不利益な扱いや嫌がらせを受けること。厚生労働省が実施した実態調査(2015年)では、職場でマタハラを受けたことのある女性の割合は、なんと正社員で21.8%、派遣社員では48.7%にも。上司などから「迷惑だ」「辞めたら」と嫌がらせ発言を受けた人が47.3%で最も多く、「雇い止め」が21.3%、「解雇」が20.5%もありました。

 マタハラが裁判に発展したケースも珍しくありません。十数年前の事案ですが、幼稚園勤務の女性が、妊娠を報告した園長に中絶を迫られ、流産の末、解雇されたケースがありました。この女性は、幼稚園側に損害賠償などを求めて提訴。裁判所は、女性の解雇を無効とし、幼稚園側に損害賠償の支払いを命じています。

事業主にマタハラ対策を義務づけ

 マタハラについては、セクハラ同様、男女雇用機会均等法に定めがあり、9条3項で「事業主は妊娠や出産などを理由に、女性労働者に不利益な扱いをしてはならない」という趣旨のことが書いてあります。

 ところが、事業主側は「妊娠以外の理由で不利益な扱いをしたのだから、均等法9条3項違反ではない」という詭弁きべんを持ち出してくる可能性があります。例えば、「妊娠とたまたま時期が重なっただけで、営業成績が良くないから解雇するのだ」といった具合です。

 そこで厚労省はこんな詭弁を許さないために、2015年1月の通達で、妊娠・出産、育児休業などを「契機」として事業主が不利益な扱いを行った場合には、原則として男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反するとしました。違反した場合には是正指導や勧告を行い、これに従わない悪質な事業主は名前を公表することにしたのです。

 さらに、17年1月に施行した改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法で、事業主による解雇や降格だけでなく、上司や同僚による嫌がらせなどもマタハラとして禁じ、事業主に防止策を義務づけました。

妊娠を祝福してあげられる職場環境に

 このように国による対策は進んだものの、日本からマタハラがなくなったわけではありません。確かに解雇や露骨な嫌がらせなどは減っているかもしれませんが、私の周りでも「職場の同僚に妊娠を報告したら、舌打ちされた」などと耳にすることがあります。

 その背景には、「妊娠はコントロールできるはず」「産休・育休で休む人は職場にとって迷惑」といった考え方がまだ根強いからだと感じます。

 どのような形であれ、職場の誰かが妊娠したら、上司や同僚が精神的余裕を持って、それを祝福してあげられない方がおかしい。マタハラを「当たり前」にせず、妊娠した人を祝福し、サポートする世の中を「当たり前」にしていきたいものです。

【あわせて読みたい】
なぜセクハラを撲滅できない?
不妊治療、事実婚への助成見送り…「法律婚至上主義」は続くのか?
女は50歳で定年!?「当たり前」の裏にあること

三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。