SNS発「打ち言葉」、文章にも影響する?

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「入力が面倒」 目立つ極端な省略

 「りょ」「いみふ」「ワンチャン」――。若者が使う言葉の意味が分からず困惑することは少なくない。「若者言葉」は昔から存在するものだが、最近はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によって、登場のサイクルが早くなっているようだ。

 「あーね(あー、なるほどね)」「とりま(とりあえず、まあ)」。東京都に住む女子高生(17)の無料通信アプリ「LINE(ライン)」のトーク画面には、見慣れない言葉が並ぶ。「頻繁にやり取りするから、きちんと打つのはかったるい」という。

 プリントシール機大手の「フリュー」(東京)が運営する「ガールズトレンド研究所」が女子高生ら514人を対象に行った調査によると、昨年流行した言葉は「マジマンジ」「それな」「ワンチャン」など。広報担当者は「卍は『ヤバイ』のように、ポジティブな意味にもネガティブな意味にも使われているようです」と話す。

 梅花女子大学教授の米川明彦さん(日本語学)は「近年は、SNSで使う『打ち言葉』から新語が生まれている」と話す。

 例えば、LINEでのグループ会話。誰かが「フロリダ(風呂に入るため会話から離脱する)」と言うと、「いってら(いってらっしゃい)」と返す。入浴後は「ほかいま(『ただいま』と『ほかほか』を合成した言葉)」で再び会話に参加する。それに対し、「ほかえり(おかえり)」と返す。「あいさつに関する新語が増えている。互いに良い関係を維持したいという意識が感じられる」と話す。

 「りょ(了解)」「おこ(怒っている)」など極端な省略も最近の特徴だ。ITジャーナリストの高橋暁子さんは「ツイッターに140文字の上限があることや、スマートフォンでの入力が面倒なことなどが影響しているのでは」と指摘する。

 米川さんによると、「現代若者言葉」が登場したのは1970年代後半から。「みんなで経済的な豊かさや真面目さを追い求めた高度成長期が終わり、価値観が多様化した。楽しさを求める社会になり、若者が言葉で遊ぶようになった」と分析する。

 定着した言葉もあり、「ムズい(難しい)」「ドタキャン(約束を直前にキャンセルする)」などは今でも使われている。文化庁の「国語に関する世論調査」(2014年度)によると、判断がつかないときの「微妙」は、30歳代までの9割以上、70歳以上でも4割強が使っていた。

 一方、最近の若者言葉は誕生サイクルが早い分根付く前に消えてしまうものも多い。

 教育事業大手「ベネッセコーポレーション」などが高校生から60代まで3130人を対象に行った調査(2017年)によると、高校生と親世代(40~60代)の認知度で大きく差が開いたのは「りょ」「わず」など、SNS発の「打ち言葉」だった。「わず」は英語の「was」が元で、「テスト勉強わず」のように、「○○をした」「○○に行った」などの意味で使う。

 高橋さんは「特定のテレビ番組や音楽に、若者たちがこぞって夢中になる時代は去った。だからこそ、言葉を通じて世代の一体感を形成しようとしている面があるのでは」と話す。

文章の書き方に影響

 若者言葉を多く生み出しているSNS。総務省の調査(2016年)によると、10代、20代の利用時間が圧倒的に多い。その分、従来のコミュニケーションに影響も出ているようだ。

 大正大学助教の中島紀子さんは「段落の始まりで1字下げをしない、句読点をきちんと打っていないといった学生のリポートが散見されます」と明かす。SNSで短文を使う機会が増えたことと関係がありそうだ。

 「若い人たちは年賀状もやりとりせず、書く機会が減っている。起承転結をつけ、長文を書くことが苦手になっているようです」と中島さん。同大では、文章の基本的な書き方などを復習する授業が初年度の必須科目になっている。

 別の大学の教授は「LINEで会話するように、『課題の提出日はいつですか』とだけ書いたメールが学生から届くことがある」と話す。文面には宛名、あいさつの言葉、タイトル、差出人の名もなかった。用件だけ短く書かれていたという。

 中島さんは「誰に向けて、何を書いているのかきちんと意識し、SNSの場合とそれ以外では書き方を使い分けることが大切」と話す。

世代を映す鏡

 取材を終えて 個人的にツイッターを利用している。句読点が少ない書き込みに接すると、「若者が投稿したのかな」と思う。今回の取材で、言葉は世代を映す鏡のようなものなのだと改めて感じた。ちなみに、記者が10代だった時に流行した言葉は、「チョベリバ(超ベリーバッド)」「MM(マジムカつく)」などであった。……年齢がバレてしまいそう。(山村翠)