なぜセクハラを撲滅できない?

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 みなさんは「これってセクハラだよね」って思うことに直面していませんか?

 私は日々直面しています。日々、なんて言ったら言い過ぎかもしれませんが、直面しています。例えば、学生の頃に遡ると、「女のくせにしゃしゃり出てくるな!」と男性の先輩にどなられたことがありました。体育会系の陸上部に入っており、「ザ・男社会」だったのです。他には、先輩から度重なる食事やゴルフの誘いがあり、複数人で行くものだと思っていたら、二人きりなうえ、ボディータッチされ……。思い出し始めたらまだまだあります(割愛)。そして読者のみなさんもきっと、直面していることと思います。

 セクハラが社会問題として注目され、日本新語・流行語大賞に「セクシャル・ハラスメント」が選ばれたのは1989年。それから30年近くたつのに、なくならないのはなぜなんでしょう。

男でも女でも同性間でも加害者に

 男女雇用機会均等法は、「職場での性的な言動に起因する問題」、つまりセクハラについて、事業主にも責任があるとしています。第11条第1項には、事業主は労働者から職場での「性的な言動」に関する相談を受けたら、その労働者が不利益を被ったり、職場環境が害されたりしないよう、必要な措置を講じなければいけないと記されています。

 ここで「労働者」と書かれているのは、必ずしも女性のこととは限りません。「セクハラって男性から女性に対するものでしょ!」って思っていらっしゃる方もいるようですが、それは違います。セクハラは、女性から男性に対しても起こり得ます。実際に、男性社員が女性上司から「男のくせに、そんなこともできないの!」などと叱責され続けたり、彼女との関係をしつこく聞かれたりといったセクハラの事例があります。同性間でセクハラが生じることもあります。つまり、どんな人でも、セクハラの被害者にも加害者にもなり得るのです。

 次に、セクハラに関してよくある質問に「セクハラって犯罪なの?」というのがあります。同法11条には違反に対する罰則が定められておらず、セクハラ的言動が直ちに犯罪になるわけではありません。ただし、身体的接触があれば、強制性交等罪や強制わいせつ罪、傷害罪、暴行罪が成立することがあります。身体的接触がない場合でも名誉毀損罪が成立する場合があります。

 企業側がセクハラ防止対策を講じず、是正指導にも応じない場合には、企業名が公表される場合もあります。さらに、セクハラがあった企業が、厚生労働大臣から求められた報告を行わない場合や、虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料の支払いを命じられることもあり得ます。

「される」人が悪いという偏見

 法律の規定をなぞっていくと、「こんな生ぬるい規定では、本気でセクハラをなくそうとしてないよね」と悲観的な気持ちになります。いま、国は働き方改革に動いているそうですが、「セクハラ対策ももっと考えてよ!」って思いますよね。

 セクハラ行為について、「される方が悪い」「スキがあったからでしょ」などと言う方がいます。しかし、これは間違いです。セクハラ行為は100%、「する方」が悪いのです。先述したように、どんな人でもセクハラの被害者になり得ます。

 私は周りの人に「怖い人」(ちゃんとNOを言う人、ということでしょうか)と思われるようになってから、セクハラ被害は徐々に減っていったような気がします。だけどやっぱりこれもおかしいと思うんですよ。世の中には「怖くない人」に対してはセクハラしてもいいって考えている人が多いってことですから。日頃から、自分の周りの人の間違った言動に対して「NO」と言う準備をしておくこと、そして、周りに被害に遭った人がいたら助けてあげること(被害者は孤立しがちですから)が大切だと思います。

 なお、このコラムは私自身に対するセクハラを告発するものではありませんが、いろいろな媒体でセクハラを告発されている方には心から敬意を表します。セクハラに遭ったときも、告発を思い立ったときも、そして実際に告発したときも、そして告発した後も、被害者ばかりが逡巡し、批判にさらされることのないように、と思います。勇気を持って告発された方を応援する気持ちでいっぱいです。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。