不妊治療、事実婚への助成見送り…「法律婚至上主義」は続くのか?

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 厚生労働省が事実婚カップルへの不妊治療の公的助成を見送るというニュースが2018年1月に報じられました。みなさんはこのニュース、どう思いましたか?

 まずは、不妊治療の公的助成について、ざっとご説明します。国の助成制度が始まったのは2004年。健康保険が適用されない体外受精と顕微授精について、初回治療で最大30万円、2回目以降は15万円まで支給する制度です。男性が手術を行った場合にも15万円までの助成があります。助成件数は13年度で14万8659件(延べ件数)。助成対象については議論が重ねられ、所得制限や年齢制限があります。また、これとは別に、独自に助成を実施している自治体もあります。

価値観多様化する社会と相反

 助成について、厚労省の「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」は13年8月、以下のような内容の報告書をまとめています。

 「そもそも、家族形成には、里親、養子縁組等も含めた多様な形態があり、不妊治療を受けるかどうか、結婚や妊娠・出産を経験するかどうかにかかわらず広く支援が行われることが重要である。(中略)支援にあたっては、行政や企業など関係者が連携・協力し、子どもを産み育てやすい社会環境づくりを進めることが不可欠であり、厚生労働省にはそうした取組の先頭に立つことを求めたい」

 報告書には、厚労省に支援の充実を求める熱いメッセージが込められています。この翌年の14年には、日本産科婦人科学会が事実婚カップルへの体外受精を認めました。そして、昨年4月には、塩崎厚労相(当時)が「多様化している家族のあり方を受け止めなければならない」と発言するなど、事実婚カップルへの不妊治療の公的助成実現への機運が高まったように思われました。

理由は「父親があいまい」だから?

  それにもかかわらず、なぜ今回、助成が見送りとなったのでしょうか。理由は、事実婚の場合、「誰が父親かあいまいになりかねない」ということらしいのです。言い換えると、「父親が誰か確定するために認知手続きが必要な子どもを、公的助成をして(つまり税金を投入して)まで誕生させるのはいかがなものか」ということになるでしょうか。

 この理由、率直に言って私には理解困難です。不妊治療を経るか否か、公的助成の有無にかかわらず、誰が父親かあいまいな子どもはたくさん生まれています。しかし、生まれてきた子どもはすべて等しく祝福されるべき存在です。子どもは親を選べません。それに、妊娠・出産時に婚姻していた両親が後に離婚してしまうことだってあります。生まれた後の子どもたちの心配をするならば、子どもたちへの手当をもっと厚くすれば済む話です。

 少子高齢化は「国難」ではなかったのでしょうか。少子高齢化が進み、家族の価値観が多様化するなか、いまだに古くさい「法律婚至上主義」を持ち出して事実婚カップルへの公的助成を見送るなんて……。私は本当にがっかりしました。

家族のあり方に「当たり前」はない

 私は、自分がそうしたい、そうありたい(例えば、結婚して子どもを持ち、夫婦が終生添い遂げるような人生モデル)という「理想」を他人に強制しないように生きていきたいと考えています。このような理想モデルの強制(直接的であれ、間接的であれ)こそが、多くの人たちにとっての生きづらさを生み出しているような気がしてなりません。

 もしも今回、厚労省が「事実婚カップルへの不妊治療の公的助成を開始しますよ」と決定していれば、「お、国レベルで『家族のあり方は自由でいいんだよ』っていうメッセージを出すことにしたんだな。やるじゃん!」って思えたのになー。

 政策にはメッセージが込められていると考えています。今回残念だったのは、多様な社会、多様な家族のあり方に対する消極性がメッセージとなってしまったことです。

 家族のあり方に「当たり前」なんてないはず。多くの人が「家族のあり方は自由だし、子どもを持ちたい人は持てるように応援しよう」と思える社会になれば、救われる人もたくさんいるのになぁ……。そう思わずにいられません。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。