ドラマ「逃げ恥」が教えてくれた専業主婦の家事のお値段

スパイス小町

 2016年秋に放送された大ヒットドラマ「逃げる恥だが役に立つ」がなんとこの年末年始に地上波で再放送! これは見たい人がたくさんいるはずです。

 新垣結衣さん演じる「みくり」と星野源さん演じる「平匡(ひらまさ)」の恋愛模様を描いた「逃げ恥」は、専業主婦の「家事のお値段」をもしっかりと“見える化”したドラマです。2人が結婚を考えた際に、家事の対価としてみくりに支払っていた分を貯蓄に回そうと言う平匡にみくりが言った「それは『好きの搾取』です」というセリフ。「若さが女性のすべて」という年下の女性に、「自分に呪いをかけないで」と諭した独身49歳のキャリアウーマン、百合ちゃんのセリフ。インパクトのあるセリフが、多くの人の心をつかみました。

主婦の家事の対価はひと月19.4万円!?

 ちなみにこのドラマでは、主婦のひと月の家事の対価が19.4万円だと説明されました。これは、みくりが平匡の家で、1日7時間、週5日家事代行として働く対価です。しかし、みくりは住み込みなので、食費と部屋代を差し引けば、みくりのひと月の手取りは9万円ぐらいになる計算です。これって主婦の家事の対価として、高いと思いますか? 安いと思いますか?

 この19.4万円の根拠について、ミクロエコノミストの是枝俊悟さんがドラマの画面に小さく映っていた「数字」を解析し、同じ時間だけ外で働いた場合に得られる賃金で評価する「機会費用法」を使って、次のように試算してくれました(『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』毎日新聞出版より)。

 2011年の女性全体の平均時給1383円(厚労省賃金構造基本統計調査)×140時間(月20日×1日7時間)=19万3620円。四捨五入すると、19.4万円になります。

 「高すぎる?」とか「一日7時間も家事する?」という疑問の声もありますが、待機時間も「労働時間」のうちです。主婦は家族など他の誰かの都合を優先するので、待機時間が多いのです。主婦が家にいると、時間を気にせず宅配便などを頼むことができたり、メリットはたくさんあります。

 是枝さんによれば、「年収600万円未満の夫は、専業主婦の妻に『好きの搾取』をしている」ことになります。この水準の年収では、機会費用法で算出した対価19.4万円を毎月支払うのは難しいからで、年収600万円未満の人と結婚して、家事を一手に引き受けると損になってしまうことになります。

専業主婦はブラック企業に勤めているようなもの!?

 掲示板サイト「発言小町」でも時々、「主婦のお給料はいくらか」が話題になります。先日もこんなトピがありました。「専業主婦の労働対価について」というトピです。

 「専業主婦ってブラック企業に勤めてるようなものよね」という友人の愚痴を聞いたというトピ主さんは週2回、3階建て一軒家に住む家族3人分の掃除、洗濯、食器洗いなどの家事を外部に委託し、月に8万円支払っているそうです。つまり、単純計算すれば年間約100万円で家事の一部を外注していることになります。トピ主さんは「『ブラックだ』と感じるかどうかは、その主婦が御自分の働きをどのように自己評価するかによりますね」とつづっています。

 では、このトピの「ブラックかどうか」を上記の計算法ではじき出してみましょう。今年の流行語大賞にノミネートされた「ワンオペ育児」。6才未満の子どもがいる家庭の専業主婦は週61.7時間、家事・育児をしています。週60時間労働といえば、月に約80時間の残業がある計算になります。労働時間で見れば、これは「ブラック企業認定」です。

 この労働の対価を払おうとすると、夫の年収は1250万円以上必要となります。しかし、これは「年収が1250万円以上あれば、対価を支払って妻に『ワンオペ』をさせてもいい」という意味ではありません。妻がベビーシッターや家事代行を雇って、ワンオペではなく「家族外家族」と一緒に子育てができるということでもあります。

「家でやっていることの見えなかった価値」を知る

  2017年は、何回か「『逃げ恥』をテーマにワークショップを行ったのですが、参加者のある男性は「私は医師で時給は1万円。だから自分が家事をやるのは非合理的では?」と言いました。でも、このワークショップは家事をやらない男性を責めるためのものではなく、じゃあ、どういう形なら夫婦がお互いにハッピーかを考えるもの。ひょっとしたら、その1万円を稼ぐよりも、妻は家族で一緒に過ごす時間を望むかもしれない。または、その1万円のうちのいくらかで、家事をやってくれる人を雇ってもいいし、妻が子供から解放されて一人の時間を持てるように、託児サービスを使ってもいい。まずは、妻が「家でやっていることの見えなかった価値」を夫婦で知ることが大事なのです。

 是枝さんによれば、専業主婦で考えた場合、年収800万円の夫の家事分担率は18%で、週当たり12.4時間、家事育児をやるべきだということになります。年収600万円なら、24.5%で、週16.9時間。週末に計6時間、平日は毎日2時間ぐらいでしょうか。となると、週末に1日ゴルフなどに出掛けたら、もはやアウトになりますね。

 これが共働きになるとどうなるでしょうか? 夫の方が給料が高いからと、家事も育児も仕事も全部、ワンオペでまわしているワーキングマザーは少なくありません。夫の年収が600万円の、妻の年収が400万円の場合、夫の家事分担率は43%にもなるという試算があります。夫婦がほぼ均等に家事を分担していると言ってもいいでしょう。

 ともあれ、年末年始はぜひ、夫婦でドラマ「逃げ恥」を見ながら、来年の「ふたり」について話をしてみては? え、夫婦げんかになりそう?

 結婚は「お金」と「時間」を一緒にすること。ふたりの「お金」と「時間」をどう使ったらお互いハッピーなのか……。「愛」をもって話しあうことをおすすめします。どうぞ良いお年を。

発言小町のトピはこちら↓ 
専業主婦の労働対価について

白河桃子
白河 桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大学客員教授、昭和女子大学女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザーズなどでの勤務を経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「『婚活』時代」(山田昌弘共著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(齊藤英和共著、講談社+α新書)、「女子と就活」(常見陽平共著、中公新書ラクレ)、「産むと働くの教科書」(齊藤英和共著、講談社)、「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ともにポプラ新書)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」(PHP新書)、「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」(是枝俊悟共著、毎日新聞出版)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」を大学等で行っている。

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