クリスマスは恋人同士で過ごす? ドイツ流「愛」の意味

サンドラがみる女の生き方

 ドイツのクリスマスシーズンは、なかなか味があります。クリスマス・イブまでの4週間(Advent、待降節)、各家庭のリビングに、リースと4本のキャンドルで作った飾り「アドベントクランツ(Adventskranz)」を置きます。イブの4週間前の日曜日にロウソク1本に火をともし、それから毎週1本ずつロウソクに火をつけて、ほのぼのとした雰囲気の中でクリスマスの到来を静かに待ちます。

 この時期ににぎわうのは、やはりクリスマスマーケット。ニュルンベルクが有名ですが、ドイツ各地にあるクリスマスマーケットはどこもきれいで、寒い中、外で飲むグリューワイン(赤ワインにシナモンやクローブなどの香辛料、オレンジ、シロップ等を加え温めたものが主流)は格別です。ちなみにアルコール分はとんでいるので、お酒が飲めない人でも大丈夫。「Fest der Liebe(愛の祭り)」とも言われるシーズンは、恋人たちにとってもロマンチックな季節です。

気に入らないプレゼントはレシートで返品

 でも実は、ドイツのクリスマスには決してロマンチックではない側面もあるのでした。というのも、ドイツでは、家族やパートナーにクリスマスプレゼントを贈る際に、レシートもいっしょに渡すのです。理由は相手に値段を知らせるため……では決してなく、サイズが合わなかったり、色やデザインなどが好みでなかったりした場合に、そのレシートを持って、本人がお店で別の商品と取り換えるためです。

 実際に、これもあまりロマンチックな話ではありませんが、クリスマスの連休明けのドイツのデパートは、商品取り換えのためレシートを持参したお客さんであふれかえっています。念のために書くと、レシートをプレゼントに同封したり、同封せずとも「もし取り替えたかったら、レシートがあるから、いつでも言ってね」と言ったりするやりとりは、「大人同士」のプレゼント交換の際にはよく見られる光景です。さすがに相手が子供の場合、レシートは渡しません。ちなみに日本やアメリカでは『サンタさん』がプレゼントを運んでくることになっていますが、ドイツの場合は24日のクリスマス・イブにキリストさま(Christkind)がプレゼントを置いていってくれることになっています。

家族で合唱? 義理が大事なイブの夜

 またまた夢のない話で恐縮ですが、ドイツのクリスマスは日本のお正月のように「義理」の側面も強いのでした。冒頭で書いたように、ドイツのクリスマスは「愛」のイベントですので、恋人同士の愛のみならず「家族愛」がこの時期はうたわれるわけですが、それと同時に「クリスマスは家族や親戚と一緒に過ごさなければいけない」プレッシャーもまた大きいのです。

 そのため、クリスマスはしばしば若者に敬遠される祭りでもあります。特に自立心が芽生え大人に反抗したくなるお年頃の10代にとっては、クリスマスに親戚や家族と一緒に「仲良しごっこ」や「家族ごっこ」をしなければいけないのが耐えられないという愚痴をよく聞きます。家庭によっては、「24日のクリスマス・イブは、家族や親戚全員でクリスマスツリーを囲んで、クリスマスソングを皆で合唱する」という習慣があったりしますが、これが苦痛で「ボイコットしたい」という若者も少なくありません。

 この時期は自分の家族のみならず義理の家族との付き合いも盛んですので、日本のお正月にまつわるトピックで「義理の両親の家に顔を出すのが嫌」と言う人がしばしばいるように、ドイツのクリスマスシーズンにもまた似たような悩みを抱える人がいるのでした。

 ドイツの場合、結婚せず「恋人同士」の状態であっても、クリスマスは恋人の両親と一緒に過ごすことも。クリスマスが「恋人と2人きりで過ごす日」と思われている日本から見ると、ちょっとビックリかもしれません。

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/