家事代行サービス、外国人OKの特区広がる

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 仕事に追われ、疲れて帰宅した後の家事はつらい。そんな人に向けた家事支援(家事代行)サービスの担い手に、今年から外国人の女性がお目見えした。地域を限定して規制を緩和する国家戦略特区を活用した、新たな事業だ。

 「仕事から帰り、台所の排水口までピカピカになったのを見ると、幸せになります」。東京都目黒区の会社員井上優里子さん(37)は人材派遣大手パソナに、室内清掃を依頼している。隔週で1回3時間。同社に家の鍵を預けてあり、仕事をしている間に家事をしてもらえる。寝室のシーツはホテルのようにぴんと張られ、シンクに置き忘れた食器も片付く。

台所を掃除するパソナのロリャーノ・サルセドさん。この日は井上さん立ち会いのもと、取材した(東京都目黒区で)

 同社はフィリピン人25人による家事支援サービスを行う。井上さん宅を担当する同社契約社員、ロリャーノ・サルセドさん(35)は、家族をマニラに残して働く。「子どもに十分な教育を受けさせるため日本に来た。この仕事が気に入っている」

 井上さんは外資系広告代理店の営業担当で忙しい毎日を送る。「家事を巡って夫と言い合うこともあったが、最近は気持ちに余裕が生まれた」と話す。

 女性の家事負担は依然として大きい。大和ハウス工業が5月に発表した調査では、子どもと同居する共働き夫婦の81%が、家庭の家事のうち「妻が7割以上」を担当していると答えた。

 女性の社会進出に伴い、家事支援サービスの市場も拡大。政府は2015年、特区での外国人の受け入れを解禁した。今年から、東京都、神奈川県、大阪市でサービスが始まった。ダスキン、ニチイ学館、パソナ、ピナイ・インターナショナル、ベアーズ、ポピンズの6事業者から、地域により3~6事業者が認定されている。価格は1時間あたり2000円台~3000円台が中心。兵庫県は現在、事業者を募集している。

 内閣府によると、10月下旬時点でフィリピンから約50人が来日。パソナは今後3年で1000人を受け入れ、ベアーズは3年後には300人を受け入れる態勢を整えたいという。

 特区では、外国人を利用者宅に住み込みで働かせてはならず、日本人と同等以上の賃金を支払うことなどが義務付けられている。外国人も「満18歳以上」「1年以上の実務経験」「最低限の日本語能力」といった要件を満たす必要がある。

ベアーズの仕事について新人スタッフに説明するマリアンヌ・クラニバンさん(右)=東京都中央区で

 11月下旬、東京都中央区のベアーズ本社で、6月に来日したマリアンヌ・クラニバンさん(39)が、10月に来た5人に「プロとして礼儀正しく行動しましょう」などと語りかけた。5人は母国での研修を終えたが、来年初めから本格的に働けるよう一流ホテルのサービスや日本語を学ぶ。

 なぜ、フィリピン人なのか。フィリピンは海外で働いて家計を支える人が多い。家政婦として働く女性も目立つ。ベアーズ副社長の高橋ゆきさんは香港で働いていた時に、フィリピン人家政婦のおかげで仕事と育児を両立できた経験から同社を夫と起業した。「フィリピン人はおもてなしの心にあふれている」と話す。

 ただ、この特区事業は、外国人は事業者と最長3年間しか契約できず、その後は帰国しなければならない規定もある。内閣府の担当者は「まだ始まったばかり。今後についてはこれから」としており、事業がどう定着するか、見守っていく必要がありそうだ。

契約も指示も日本語でOK

 一般的に、家事支援サービスは、自宅で事前に打ち合わせをして、サービスを組み立てることが多い。原則、掃除道具や洗剤は利用者の自宅にある物を使う。道具の使い分けなどを指示する必要がある。利用料は1時間2000円台~3000円台が主流。野村総合研究所上級コンサルタントの武田佳奈さんは「家庭によってお願いしたい家事は違うので、要望があれば遠慮せず伝えましょう」と話す。

 特区のサービスの場合もそれは同じで、「契約相手は事業者なので日本語で会社に要望すれば大丈夫です」と武田さん。在宅時のサービスを希望し、英語を話さない家庭には、日本語が堪能なスタッフを選ぶなど各社工夫しており、言葉の心配はなさそうだ。

 最低限の利用時間が設定されていたり、利用頻度や地域によって単価が変わったりするのは一般のサービスも特区も同じで、内容を十分把握してから利用することが大切だ。(遠藤富美子)