有休取得を阻むニッポンの「空気」とは?

サンドラがみる女の生き方

写真はイメージです

 いよいよお正月が近づいてまいりました。年末年始の予定を立てたり、有給休暇を取る算段をしたりして、遊びの計画をたてている人もいるのではないでしょうか。

 さて、有休の話になると、日本とドイツの感覚の違いを感じることがあります。ドイツの有休は、制度化された「義務」。年に少なくても24日を取るよう法律で定めていて、社員が消化できているかをチェックするため、労働安全局(日本の労働基準監督署に相当する)が企業に立ち入り検査を行うこともあります。有休の取得率も高く、病気をした場合の「病欠」は有休から引かれません。

 このような背景から、ドイツ人にとって「有休」とは、病気やそのほかのやむを得ない非常事態の時のために「とりあえずとっておくもの」ではなく、「積極的に使ってレジャーを楽しむもの」です。

 一方、日本のワーク・ライフ・バランスは、「努力しながら目指すもの」。有休は「色々とやらなくてはいけない慣習的なこと」とセットになっていたりするので、なんだか有休の申請がしにくい雰囲気になることもあります。

 たとえば1週間の有給休暇をもらって旅行に行く場合。まずは上司を含めて職場の同僚に「1週間ご迷惑をおかけします」と告げ、帰ってきてからも、また「不在の間、皆さまにご迷惑をおかけしました」と挨拶。有休を満喫しているはずの休暇中にも「皆さんに『あの人は休んでばかり。あの人は海外に行ってばかり』だと思われていないだろうか?」などの心配が頭をよぎったり……。

有休をとって遠出したら必ずお土産が必要?

 そしてお土産。遠出をしたらご当地ものを買って帰るというのは日本の文化ですが、これが職場の慣習となると少し面倒かもしれません。ちなみに私はかつて日本の会社に勤めていた時に、お土産関連で2度失敗をしております。

 一度は、部署10人以上のお土産を買う際に、比較的大きいサイズのお土産を選んでしまったために、トランクが職場の同僚へのお土産で占領されてしまった、という失敗。もう一つの失敗は、旅先から買ってきた土産を自分と席が近い人から順に配ってしまったのですが、役職が上の人から渡すという職場のしきたりを忘れておりました。先輩社員に指摘されて気付きましたが、「有休には、いろんな『儀式』がついてまわる」と実感した次第です。

ドイツで送るのは旅先からの絵はがき

 ドイツには、旅先からご当地もののお菓子などを買って帰る「お土産」の習慣はありません。でもドイツにも「旅」にまつわる慣習的なものはあるのでした。それは、「絵葉書」です。今はSNSの普及でやや少なくなってきてはいるものの、昔からドイツでは、旅行先から友達や家族、親しい人、職場の人に絵葉書を書いて送る習慣がありました。

 旅先の風景が映った絵葉書に「いま、ハワイに来ています。皆さんは、仕事大変ですか? また帰ったら皆に会うのが楽しみです」という他愛ない内容を書いて職場に送ったりもするのですが、もしも日本の職場に送ったら、けげんな顔をされるどころか、職場によっては「何この忙しい時に、嫌味!?」と思われてしまうかもしれません。

 そんなこんなで、有休はドイツの方が取りやすいのは確かなのですが、一方で、お正月やゴールデンウィーク、お盆など、会社が数日間、閉まる休みはあまりありません。会社や職種にもよると思いますが、日本の場合は「みんなが働いているのに自分だけが有休をとって遊んでいる」状態よりも、「みんな一緒に休む」ほうが心理的に楽なのかも。ちなみに祝日の数も日本のほうが多いです。新しい元号とともに更に祝日が増えることを秘かに期待している私です。

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/