がん治療と仕事の両立、職場でどう配慮する?

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チームメンバーと打ち合わせに臨む太田さん(前列)。乳がん治療との両立が続いていることはほとんど感じさせないまでに(川崎市で)

 がんの告知を受けても、働き続けたいと考える人は多い。女性のがんで最も多い乳がんも、治療と仕事を両立させる取り組みが進んでいる。企業には、両立を支える環境作りが求められる。

乳がん治療と仕事の両立

 「家にいたら乳がんのことばかり考えて不安や恐怖で苦しんだと思う。仕事が張り合いになりました」

 電機大手の日立製作所(東京)で事業企画部門の部長を務める太田純子よしこさん(50)は、3回の乳がん手術と抗がん剤治療を受けたこの1年半を振り返る。

 2016年6月に乳がんを告知され、8月に手術。その後、別のがん細胞が見つかり、眠れないほど落ち込んだ。上司に「今までのようには仕事ができなくなる」と申し出たところ、「いきなり休職を考えるのではなく、体調が大丈夫なら来るだけでいい」と言われ、気持ちが少し楽になった。同社は太田さんを部長職のまま、責任範囲を限定的に変更。もう1人部長職を配置するなど、配慮しつつ手薄にならない措置を取った。

 だるさなどの副作用で起きあがれないほどの日は有給休暇を取り、メールや電話で情報共有して乗り切った。現在もホルモン療法が続くが、働き方に制限はない。太田さんは「病気や治療に対する職場の理解がなければ両立は難しかった。社会全体に理解が広まってほしい」と話す。

 国立がん研究センターがん情報サービスの「がん登録・統計」(2013年)によると、日本の女性に最も多いがんは乳がんだ。生涯に乳がんと診断される女性は11人に1人。とはいえ、5年後の生存率も91%と高く、治療と、仕事など社会生活の両立は重要だ。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険(東京)が9月に実施した調査(20~50代の女性約530人が回答)では、乳がんになっても仕事を続けたい人は6割超だった。静岡がんセンターの13年の調査では、全国約1300人の乳がん体験者で診断後に依願退職もしくは解雇された人は35%に上った。

 キャリアコンサルタントの砂川未夏さん(43)は「働き続けたくても、周囲に迷惑をかけると諦めてしまう人は多い」と指摘する。乳がんなど2度の闘病を経て、治療と仕事の両立アドバイスなどを行っている。

 最初のがんが見つかった29歳当時は大手カフェチェーン勤務で、「仕事が面白い時期に休む悔しさや、復帰しても体が元通りにならず期待に沿えない情けなさで苦しかった」という。

 キャリアを考え直す中でコンサルタントの資格を取得し、独立。3年前には乳がんの手術も乗り越えた。「今や必ずしも命を失う病気ではない。働き方や生き方を見直すきっかけと考えてみては」と助言する。

乳がんと仕事の両立で必要なこと
・就業規則を確認。在宅やフレックス勤務 などの有無や利用条件を知る
・周囲は特別扱いせず、さりげない配慮が 望ましい。必要なことは当事者から職場へ伝える
・普段から職場でコミュニケーションを取 り、信頼関係を築く
(砂川さん、菅原さんらの話から)

まず就業規則を確認

 乳がんと告知され、仕事との両立を考えるとき、何から始めたらいいだろうか。

 乳がんを経験した特定社会保険労務士の菅原みゆきさんは、「就業規則を確認し、病気休暇や在宅勤務など制度を確認。制度がないなら、勤務先に相談してみるのも一案です」と話す。

 がん患者の社会生活を支援するNPO法人「キャンサーリボンズ」(東京)は、治療計画や仕事面で必要な配慮などを書き込める冊子「『がんと働く』リワークノート」を作成。職場や医療従事者との情報共有を勧めている。副理事長の岡山慶子さんは「企業は従業員を支え、当事者は、何ができるか、どんな配慮をしてほしいかなどを伝えることも大切です」と話す。(福士由佳子)