女性には「笑顔」が必要? セクハラに潜むセクシズムを考える

サンドラがみる女の生き方

写真はイメージです

ハリウッド発、欧州に広がるセクハラ論争

 米映画製作会社「ミラマックス」の前会長、ハーベイ・ワインスタイン氏のセクハラ問題に大揺れしているハリウッド。要約すると、プロデューサーという立場を利用し「良い役をあげるから、性的に俺の言うことを聞け」とアンジェリーナ・ジョリーを始め複数の女優に迫ったというとんでもない話なのですが、怖いのは、日本においてはこの問題が「アメリカの俳優界のこと」「その業界に特有なもの」と片づけられてしまいがちな点です。

 社会の中ではまだ「かの世界(芸能界)には、役が欲しいために監督と性的な関係を持つ、または持とうとする『枕営業』なるものが存在する」というある種の偏見がありますし、「女優本人がそれでいいと言ったなら、別に問題ないんじゃないの」というような意見も幅を利かせていたりします。

 しかし、権力を盾に「仕事をあげたから性的に僕の言うことを聞け」または「役が欲しけりゃ僕がなんとかしてやるから今晩付き合え」というのは、長い間、社会でそう認識されてこなかっただけで、言うまでもなく立派なセクハラです。

 ツイッターでは「#MeToo」のハッシュタグで公人も含め様々な職業の女性が自らが経験したセクハラについてアップしており論議を巻き起こしていましたが、欧州議会でも女性議員らが「#MeToo」と訴えるなど広がりを見せています。

大手航空会社の対応が話題に

 ドイツにおいてはこの騒動を受け、一般の企業のセクハラ問題が話題になっています。例えばドイツの大手航空会社の役員である女性は、雑誌「シュピーゲル」の誌面で、パイロットには男性が多く客室乗務員には女性が多いことが一つの背景となって発生するセクハラ、そして同社のゲイの男性が男性同僚に対して行ったセクハラ行為など自社の問題をオープンに語っています。

 印象的だったのは、この話です。男性の飛行教官が、パイロット訓練中の女性に対し、試験の合格をチラつかせながらその女性を食事に誘ったけれど、その女性が会社に相談をし、その結果、女性は他の飛行教官に割り当てられたことで、例の教官からのセクハラから逃れることができ、その後、予定通り訓練を経て無事パイロットとして独り立ちできたという話です。セクハラが起きそうな時でも、相談した後に会社側にそれを防ぐ体制さえあれば、最悪の事態は防げる良い例です。

 ただし、社内の「行動規範」で職場でのセクハラを明確な文言で禁止している企業もあれば、「従業員は互いの尊厳を尊重すべき」という表現にとどめているところもあり、企業によって差がみられることもまた事実です。

フランクな雑談での発言にどう対処するか

 セクハラ問題をきっかけにドイツで今スポットが当たっているのは、セクハラの根底にある「セクシズム」(特に女性に対する性差別的な考え方)の問題です。仕事の能力が同僚の男性と同じであるにもかかわらず、女性のみが男性から「君は笑顔を作れば、もっと魅力的になれるよ。これからはもっと笑顔で仕事しなさい」と諭されるような「アドバイス」がようやく性差別的なものだと理解され始めました。

 ドイツでは、お酒が入っていない席や職場でも「男女が気軽に雑談をする文化」が元々あります。そういった中で、男性が女性に対して「微妙」な発言をすることが少なくなく、どう対処したらいいのか、と議論になっています。例えば、既婚の年配の男性社員が「君は性生活には満足しているのか? Tinderという出会いアプリは君におススメだよ!」と独身の女性に言うことに対して、具体的にどのような対処法があるのか?ということです。

 日本の場合だと、職場で独身の女性に対して「結婚は?」「子供は?」という性差別的な発言はあっても、猥談わいだんに発展することは少ないのではないでしょうか。ドイツのような「何でもフランクに男女間で言い合って雑談をする」文化のほうが、こういったセクシズムに基づく猥談や女性差別発言、セクハラは起きやすかったりします。

21世紀の男性の意識変革は?

 セクハラや性差別的な考え方はアメリカのハリウッド限定ではなく、かといって日本限定でもなく、残念ながら「どこの国にも、その国特有の性差別的な考え方やセクハラ」がまだまだ存在するのでした。

 なお、セクハラというと「女性側がどう対処するか」にスポットが当たりがちですが、「男性側の意識をどう変えるか」が課題です。ドイツでは「普段仲の良い男性の同僚や男性の友達から、セクシズム的な発言やそれを肯定するような発言を聞いて、それが女性としてはいかに不愉快であるかをどのようにわかりやすく伝えたらよいのか」「どうしたら男性側の意識を変える事ができるのか」という事に関心が高まりつつあります。フランクな会話の中で解決すれば一番良いのですが、それがうまくいかないこともあります。

 携帯電話やSNSなどコミュニケーション手段は進化しても、人々の根本的な「価値観」というのはどこの国でもそう簡単には変わらないようです。男性が「居心地のよいもの」として今まで感じてきたことを簡単に手放さないであろう、という難しい課題も残ります。ですが、21世紀はまだ5分の1も終わっていないのですから、これからに期待したいと思います。

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/