隠れたセクハラ、性暴力「私も」……SNSで広がる声、日本では?

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  女性に対する性暴力の実態を明らかにする動きがアメリカで相次いでいます。ハリウッドの大物プロデューサーやアート界大物のセクハラが告発され、相次いで役職を辞任する事態に。著名人がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、「私も」を意味する「#MeToo」をつけて、自らの被害経験や思いをつぶやく動きも広がっています。一方、日本では? 性暴力を防ぐ啓発活動を行うNPO法人「しあわせなみだ」代表の中野宏美さんと考えました。

 「MeToo」は、米映画製作会社「ミラマックス」の会長も務めたハーベイ・ワインスタイン氏のセクハラが明らかになり、女優のアリッサ・ミラノさんがツイッターで、性暴力の被害にあったことを「私も」とつぶやくことを呼びかけました。自身が過去に受けた体験をつぶやく女性たちや、賛同する男性たちの輪が広がっています。

 アート界でも、「Not Surprised」と題された書簡が公表されました。権力を持つ人から性的な見返りを求められたり、ハラスメントをされたりすることに「驚かない」、つまり、「日常茶飯事」だと指摘する文書に、有名アーティストやキュレーターらが続々と声を上げています。

 そんな動きに、中野さんは、「影響力の高い人が発信したことで、性暴力の被害を訴えやすくなった。日本でも若者に影響力のある人たちが発信して広がってくれれば」と期待します。

 というのも、日本でも性被害の実態は「隠れている」ことが多いため。特に若い世代では、性暴力で心身が傷つく女性が少なくありません。

 2015年にNPO「BONDプロジェクト」がまとめた「性暴力に殺される……届かない女の子たちのSOS」は、10代、20代の女性369人に聞き取り調査をした結果です。3人に1人が「痴漢」「無理やりからだを触られる」といった性暴力の経験があり、被害を受けた女性の2人に1人は「死にたい」「消えたい」と感じたことが明らかになっています。実際にリストカットなどの自傷行為をしている子の割合も性暴力を受けた経験のある女性の方が高くなっていました。

 この調査にもかかわった中野さんは、「家族にも友人にも被害を打ち明けられないまま命を絶ってしまう。自殺した若い女性で原因不明とされている中にも性暴力の被害が隠れているケースがあるのでは」と話します。

 なぜ被害を打ち明けづらいのか、その理由について、中野さんは「『被害者にも責任がある』『抵抗すればいい』など、被害者への偏見が払拭されていないからです」と指摘。被害を見聞きしたとしても、女性は「よくあること」「自分たちは我慢してきた」と思いがちで、被害を軽く見てしまう傾向があると言います。一方の男性は、男性全体が責められていると感じて「関わりたくない」と思うそう。いずれも「性暴力をなかったことにしてしまいたい」人が多いといいます。

 中野さんは「#MeTooを通じて関心が高まればいいと思う一方で、なぜ被害者が自分の身をさらして被害を告発しなければならないのかとも思う。加害者がきちんと処罰され、被害者のケアが十分にできていれば、こんな動きも必要ないですよね」。

 11月12~25日は、国がすすめる「女性に対する暴力をなくす運動」期間。今年は、漫画家の西原理恵子さんが描き下ろし漫画で、JKビジネスなど、性暴力につながる危険な誘いについて注意を促しています。各地で暴力の撤廃を訴える紫のライトアップも行われており、身近な暴力について考えてみるのもいいかもしれません。(大森亜紀)