妊婦向けゆったり制服採用広がる

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「働き続けて」企業が配慮

 職場の制服や作業服に、妊婦向けのものを取り入れる会社が増えている。おなか回りがゆったりとした締め付けないデザインが特徴だ。人手不足が深刻な中、女性に働き続けてほしいという企業側の考えがある。

パン販売店で、妊婦向けの制服を着て働く山崎さん(名古屋市の「アンデルセン松坂屋名古屋栄店」で)=原田拓未撮影

 「いらっしゃいませ」

 10月下旬、パン販売店「アンデルセン松坂屋名古屋栄店」で、妊娠8か月の店員、山崎えりさん(30)がパンを並べ、客に声をかけていた。制服はどれも同じ色、デザインだが、妊婦向けはズボンのおなか部分が伸縮性のある「リブ編み」になっている。「動きやすくて助かっています」

 グループ本社の「アンデルセン・パン生活文化研究所」(広島)は昨年10月、同店を含む全国約380の店や工場で、妊婦向け制服を導入した。これまでに32人が着用した。

「アンデルセン」の妊婦向け制服は、ズボンのおなか部分に伸縮性がある

 同社によると、以前は結婚、妊娠を機に退職する女性が多かった。育児休業を取得して働き続ける女性が増え、約2年前、女性従業員らから「妊婦用の制服を」という要望があった。広報担当者は「コストはかかるが、会社から女性に対し、働き続けてほしいというアピールにもなる」と語る。

 産業機械メーカー「スギノマシン」(富山)も今年、妊婦用の作業服を新たに作った。上着はおなかが隠れるように少し長めで、ズボンは腹部に伸縮性のある素材を使い、ウエストのサイズ調節ができる。

「スギノマシン」の妊婦向けの作業着は、上着は丈が少し長めで、ズボンはウエストのサイズ調節が可能(同社提供)

 2人目を妊娠中の橋本香織さん(30)は「他の社員と同じデザインで変に目立たないのもうれしい」と話す。約3年前に上の子を妊娠した時は、大きいサイズのズボンのウエストのホックを外してはいていたという。

 背景には人手不足や女性への配慮がある。

 作業服や制服製造の「ミドリ安全」(東京)は、2年ほど前から妊婦向け作業服の注文が増えた。建設や鉄鋼業界など、相談も含めて約20社と交渉したという。

 制服や作業服を使う店舗や作業現場に女性が増えてきた。「企業から『人手不足は深刻で経験を積んだ女性に辞められると困る』という声をよく聞く」と同社。

 妊婦向け制服導入による波及効果もあるようだ。

 全国20か所ある「三井ガーデンホテル」は2015年に導入。女性も働きやすいという印象が広がり、採用活動がしやすくなったという。化粧品メーカー「オルビス」(東京)は、ジャンパースカートの制服を取り入れた。客から「妊娠中や出産後の肌の変化などを相談しやすい」との声が寄せられているという。

 法政大学の武石恵美子教授(女性労働論)は「業務に必要なら、会社は制服などについて妊娠中の体の変化に配慮しなければならない。会社側がそこまで気付いていないこともあるので、まずは上司などに相談してほしい」と助言する。

私服の着用 職場に相談

 妊娠中に働く場合、服装面でも無理は禁物だ。

 産婦人科医の宋美玄ソンミヒョンさんは「おなか回りを締め付けた服は健康上良くない。息苦しくなったり、吐き気などの症状が出たりすることもある」と注意する。

 おなかが大きくなると胃が押し上げられる。「職場のドレスコードもあると思うが、肺や横隔膜が動きやすいように、おなか回りがゆったりとした服が好ましい」と話す。妊婦向けの制服がない場合、私服を認めてもらえるよう相談する。

 また、立ちっぱなしの仕事や特殊なにおいがある職場などでは、働き方に配慮を求めることも大切だ。

 職場への相談は、男女雇用機会均等法に基づく「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用するのも一つの手だ。業務の軽減など、必要な措置を医師に記入してもらい、職場に提出することができる。厚生労働省のホームページや母子健康手帳に様式が掲載されている。(矢子奈穂)