増えるDV・ストーカー被害の相談、行政支援に地域差

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 配偶者や恋人からの暴力(DV)やストーカーの被害相談が増え続けている。被害者の身の安全を守り、生活再建を後押しする取り組みは広がりつつあるが、行政の対応には地域差がある。全国どこでも必要な支援を受けられる体制整備が求められる。

 「経済的に苦しく、将来の見通しが立たない」。元夫からDV被害を受け、西日本の母子生活支援施設で避難生活を送る20代女性はため息をつく。

 結婚直後から性的な暴力が始まり、妊娠すると「ろせ」と迫られた。離婚が成立した昨年、この施設に入所。まもなく長女が誕生したが、食費などは自己負担で貯蓄を取り崩す日々だ。「施設にいると元夫に場所を特定されやすく怖い。子どものことも心配で、早く退所して働きながらアパートなどで暮らしたいが、家賃を払い続けられる自信がない」と漏らす。

 警察庁によると、全国の警察が2016年に把握したDV被害は6万9908件で、13年連続で増加。ストーカー被害は2万2737件で、4年連続で2万件を超えた。

 本来、DV防止法(配偶者暴力防止・被害者保護法)などに基づき被害女性らの緊急保護を担うのは婦人相談所だ。だが、併設の一時保護所などに保護された女性は例年6000人前後。01年の法施行時からほとんど増えていない。

 「相談の増加とともに保護のニーズも増えているはず。でも暴力が激しいケースなどでないと保護されていない」と、民間シェルターでつくるNPO法人「全国女性シェルターネット」理事の近藤恵子さんは訴える。「その程度の暴力ではだめ」「友人や知人を頼って」などと断られる例もあり、保護されなかった数多くの女性たちを民間シェルターが受け入れている。生活を再建するための就労支援なども行っている。

一時保護所の稼働率 4県で10%未満

 全国に47か所ある一時保護所の稼働率の格差も課題だ。厚生労働省によると、15年度の年間稼働率は全国平均で35・2%。4都府県が70%以上だった一方、4県は10%に満たなかった。「緊急性などを判断する具体的な基準がなく、都道府県の裁量に任されていることが背景にある」と近藤さん。厚労省は「今年度中に全国規模の実態調査を行い、見直すべき課題を整理したい」とする。

 一時保護所の入所期間は2週間が目安だ。退所後に住まいを確保するなど、生活再建は容易ではないが、行政の支援にはバラツキがある。

 先駆的取り組みを進める鳥取県は03年から、アパートを借り上げる形で、自立に向けた準備をする家賃無料の「ステップハウス」を開設。1年間入居でき、相談員らによる精神的なケアも受けられる。石川県や札幌市などもステップハウスを設置。大阪府や神奈川県は有償ながら住宅を確保しているが、近隣の東京都や千葉県、埼玉県などでは設けられていない。被害者が借りたアパートの家賃を一時的に補助しているのも鳥取県、大分県などに限られる。

 お茶の水女子大名誉教授(ジェンダー法学)の戒能かいのう民江さんは「被害者支援に向け、自治体には幅広い施策が求められる」と話す一方、婦人相談所については「旧来の『女性を管理する』という発想が残っており、体制も十分でない」と指摘。複雑で困難な事情を抱えた女性を援助する視点で、「民間シェルターも含めて女性支援体制を法的に位置づける新たな法律が必要」と訴えている。(栗原渉)

婦人相談所 1956年制定の売春防止法に基づき、「売春をする恐れのある女子」の保護更生を目的に各都道府県に設置された。現在はDV防止法に基づく被害者の相談業務なども行う。併設された一時保護所で、女性や子どもを緊急保護する機能もある。