【仕事と妊娠(下)】子ども持つ/持たない選択、どう決める?

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 IT企業「ナーブ」(東京)で広報などを担当する田水淑乃よしのさん(51)は多趣味だ。東京マラソンに参加したり起伏のある山道を走る「トレイルランニング」に挑戦したり。フラダンスも踊る。将来、リラクゼーションサロンを開きたいという夢も持っている。

 結婚22年になる夫との間に子どもはいない。親しい友人たちにも「DINKS(子どものいない共働きの夫婦)」や独身が多かったせいか、子どもをほしいと強く思ったことはなかったという。

 パソコンが急速に普及した1990年代、IT業界は好景気で、多忙な営業職などで仕事に打ち込んだ。その後は転職したり、少しペースダウンしようと派遣や時短での働き方を選んだりもしてきた。「仕事は面白いし、趣味も楽しい。夫と過ごす時間も大切」と話す。

 子どもを持たない選択は、決して珍しいことではない。

 東京都文京区が2014年に20~45歳の区民男女を対象に実施した意識調査によると、子どもがいない人のうち、子どもを「ぜひ持ちたい」という人が45・2%、「できれば持ちたい」が27・3%を占めた。一方で、「いてもいなくてもよい」(15・1%)、「持ちたくない」(5・9%)、「考えたことがない」(4・7%)が続いた。子どもを持つことに対する考え方は人によって様々だ。

 ただ、現実には長時間労働や収入が十分でないといった問題などが、子どもを持つことへのハードルとして存在している。このことが、人生の選択を複雑なものにしている面がある。

 「厳しい労働環境の中で、女性ばかりが妊娠・出産・子育てと両立せよと迫られている。これでは、子どもを持ちキャリアも築くという将来像を描きづらい」と少子化ジャーナリストの白河桃子さんは指摘する。

 こうした状況を受け、人材育成会社「スリール」(東京)は、子育て中の共働き家庭で大学生が生活体験をする事業を行っている。

 「ワーク・ライフ・インターン」と名付け、仕事と子育ての両立を肌で感じ自分の将来を考えてもらうのが目的だ。体験のほか、勉強会や様々な分野で働く社会人との交流などを通じ、キャリアを考えるところに重点が置かれている。

大学生 両立の実例学ぶ

 今年2月から6月まで、男子中学生と女子小学生のいる家庭で過ごした明治大2年生の増渕有紀さん(20)は「卒業したら自分の力を生かせる仕事がしたいし、結婚して子どももほしい。待機児童などが問題になっていたので、自分の将来を考える上で関心を持った」という。

 期間中は勉強やアルバイトに「インターン」が加わり多忙を極めたが、「ママさんは、仕事が忙しそうなのに楽しそうでキラキラしていた。もっと視野を広げていきたい」と話す。

 スリール社長の堀江敦子さんは「全部自分でやらなきゃいけないとか、何かを諦めなくてはならないといった思い込みを取り払えば可能性は広がる。大いに知識と情報を得て、若い世代が自由にキャリアを描けるようになってほしい」と期待する。

 言うまでもなく、子どもを「持つ/持たない」は個人が決めること。誰もが納得してその選択ができるようにするには、まず、子どもを「持てない」という現状を社会全体で改善していくことが大切だ。

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