【仕事と妊娠(中)】職場で「妊活宣言」、晩婚・晩産化で広がるニーズ

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 「もうすぐ妊活に入るから」

 IT教育やソフトウェア開発の「スピードリンクジャパン」(東京)で働く太田可奈さん(35)は、職場でこう宣言している。

 妊活とは、妊娠の知識を身につけたり妊娠しやすいように体調を整えたりすること。忙しい職場にあって、太田さんの宣言は先手を打った環境作りだ。

 結婚は7年前。仕事は楽しく、気づけば30代半ばになっていた。「自分が抜けたら迷惑をかけると思うこともあるが、年齢的に少し焦りがある。そろそろ後輩に仕事を任せ、子どもをつくることに集中したい」と明かす。

 厚生労働省の人口動態統計によると、第1子出産の平均年齢は1985年には26・7歳だったが、2016年には30・7歳まで上昇した。晩婚・晩産化の進行は、妊活への意識を高めている。

 同時に、不妊への不安を抱く人も増えているようだ。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2015年)によると、不妊を心配したことのある夫婦の割合は35%を占める。このうち実際に検査や治療を受けた割合は20代の12%、30代、40代のそれぞれ19%。妻が30代で子どものいない夫婦に限ると33%に上る。

 出産医療に詳しいジャーナリストの河合蘭さんは「キャリアの妨げになるのではという懸念から子どもを持つことを先送りして、気付いたら妊娠しづらい年齢になっていたという人は多い」と指摘する。不妊治療をする人も増えている。

「妊活」を宣言した太田さん(左)を社員たちも応援(東京都渋谷区で)

 しかし、社会の理解が進んでいるとはいいがたい。

 不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine」(東京)が今年3~8月、5000人余りの男女を対象としたアンケートでは、96%が「仕事と不妊治療の両立が難しい」と答えた。不妊治療は体調などに合わせて急な通院が必要になることがあるが、上司や同僚には言いづらい。言っても理解されなかったという声もあった。

支援・休職制度の導入企業は少数

 「Fine」理事長の松本亜樹子さんは「不妊治療にどの程度の通院が必要かといった情報は、ほとんど知られていない」と話す。

 こうした中、まだ数は少ないが、出産支援に取り組む企業も出てきた。

 富士ゼロックス(東京)は2012年に不妊治療を想定した「出生支援休職制度」を導入した。会社に申請すれば最長1年間休むことができる。これまでに男女約20人が利用した。

 制度を利用して出産した40代の女性社員は、休職前を振り返って「治療に専念する余裕がなかった」と話す。フレックス勤務を活用して病院へ駆けつけるなどしていたが、仕事の予定を組みにくく、ぎりぎりのやり繰りが続いた。

 制度の利用を決断したのは、「最後の1年間というつもりで、思い残すことがないように治療に専念したい」と考えたから。以前は時間的な問題から通院をあきらめていた病院に転院した。リラックスして過ごしていたところ妊娠し、出産した。職場復帰を果たした今、「仕事を辞めずに治療に集中できたことが非常に大きかった。こうした制度がもっと広がってくれれば」と話す。

 「Fine」の松本さんは、「支援制度と同時に大事なのは職場の理解。制度があっても活用しにくければ意味がない。不妊治療に限らず、がん治療や介護など、様々な事情を抱えている人にとって働きやすい雰囲気作りが大切だ」と話している。

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