【仕事と妊娠(上)】全社員の働き方改革、不公平感なくす両立支援

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 妊娠・出産を巡る職場の対応が少しずつ変化している。当事者への支援を充実させるだけでなく、全社員の働き方を変える例も出てきた。「妊娠か仕事か」という二者択一を女性に強いることのない社会の実現が求められている。

 化粧品の企画販売「ランクアップ」(東京)の定時退社時刻は午後5時半だ。子どもを迎えに急ぐ社員もいれば、健康維持や勉強のために時間を使う社員もいる。社長の岩崎裕美子さん(49)が「産んでも働き続けられる会社」を実現するために出した答えは、長時間労働からの徹底した脱却だった。

 自身が41歳で出産、職場復帰した時のこと。「定時だから帰ろう」と社員に呼びかけても、「お子さんがいるんだから帰ってください。あとはやっておきます」と独身の社員が頑張ってしまっていた。岩崎さんは「早く帰る人は申し訳なく思うし、仕事が増えた人には不公平感が残る。それではダメなんです」と話す。

 このため、業務を徹底的に見直し優先順位の低いものは廃止した。「社内資料は作り込まない」「会議は30分」「社内メールの『お疲れさまです』は不要」といったルールも作った。

 8年前、同社に転職してすぐの時期に妊娠した製品開発担当の向井亜矢子さん(43)は「辞めてほしいと言われるのではないかと少し怖かった」が、取り越し苦労だった。時短勤務や会社のベビーシッター補助制度などを活用しながら仕事を続けることができた。「子連れ出社」したこともある。

「風通しの良さが支え合いにつながる」と話す岩崎さん(中央奥)=東京都内で

 全社員が早く退社できれば、後ろめたさも不公平感も生まれない。「皆で働き方を変えていけば両立は可能」と岩崎さんは訴える。

長時間労働を一掃/カバーする同僚も評価

 厚生労働省の人口動態統計によると、2016年に生まれた日本人の子どもは初めて100万人を切った。1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は1・44で、前年を0・01ポイント下回った。

 日本女子大教授の大沢真知子さん(労働経済学)は「子育てか仕事かという二者択一を女性にさせてきたことが、少子化を招いた要因の一つ」と指摘する。子どもを持ちながら社会で活躍したいという女性の増加に、企業はまだまだ追いついていない。女性の就業率を年齢ごとのグラフにすると、妊娠・出産や育児の時期に落ち込む「M字カーブ」形になる傾向も完全には解消されていない=グラフ=。

 

 こうした中、「徹底した成果主義」と「納得できる評価制度」の導入で、妊娠・出産する女性の不安や同僚社員の不満を解消しているのは機器専門商社「日本レーザー」(東京)だ。

 例えば、取引先1社に対し担当者2人を配置し、1人が産休などで離脱しても仕事が回るようにしている。人事評価には、「自分のためだけでなく、まわりのためにも働いている」などといった項目が組み込まれている。つまり、同僚をカバーすることが評価される。社長の近藤宣之さん(73)は「結果については社員が納得できるまで役員が丁寧に説明する」と話す。

 女性社員の比率も年々上がっており、管理職の約3割を女性が占める。ハローワークを通して応募してきた女性も多く、「優秀なのに、妊娠や出産を機に働き続けられなくなったり、子育てが一段落しても復職が決まらなかったりしていた」と近藤さんは話す。

 日本女子大の大沢さんは「これからの企業には多様な働き方で成果を上げていく力が求められる。管理職への研修などを通じ早急に意識改革を図るべきだ」と指摘している。

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