結婚後も旧姓使用可、企業や自治体で広がる

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 結婚後も旧姓を使える場が、企業を中心に広がっている。政府が6月に決定した女性活躍推進の重点方針にも盛り込まれ、従業員1000人以上の企業では容認が7割を超える。ただ、社会生活の中で、通称で使っている旧姓と運転免許証の戸籍名などとの違いを説明しなければならない場面もある。それらの対応は当事者に委ねられているのが現状だ。

名義の相違 対応は当事者任せ

 子どもの英語教育や海外交流事業を行う「ラボ教育センター」(東京)の広報担当、竹内美貴子さん(53)は、「就職した約30年前に比べ旧姓を使い続ける人が増え、職場でも自然に受け止められている」と感じる。社内では旧姓を使うことに煩雑な手続きもなく、旧姓の名刺のほか、旧姓と戸籍の姓をローマ字で併記した名刺を作って海外出張で活用している。

 ただ、慎重を期して、旧姓の「竹内」が記された結婚前の古い運転免許証も持ち歩いている。「チェックが厳しい外国大使館などに仕事で行く際、身分証の名前と仕事上の名前が違っても同一人物だと手早く説明できるようにするため」と話す。

運転免許証は、結婚前の「竹内」姓(上)と、結婚後の「鈴木」姓(中)の2枚を持ち歩く。二つの姓を併記した名刺(下)も作った ※写真を一部修整しています

 企業を中心に旧姓を使える場は広がっている。 内閣府が昨年10月、全国の企業約4700社を対象に実施した調査によると、「旧姓使用を認めている(条件付きを含む)」とする企業は49%。常用労働者1000人以上の企業では75%に上る。項目別では「呼称、座席(内線番号)表」「名刺」「名札、社員証」が多かった。

 同じ調査で、旧姓の使用者に不便や不快さを感じたことがあるか聞いたところ、「ない」は40%で最多だったが、「二つの印鑑が必要」(32%)、「書類の使い分けが面倒」(27%)などの不満を訴える人もいた。  コンサルティング会社「ジール」(東京)で働く佐藤涼子さん(35)は、会社の集まりの幹事を務めた際に不便を経験した。クレジットカードで支払う都合上、結婚後の「ともえ」姓で店を予約してしまったため、入店時に混乱した同僚もいた。「姓の使い分けには注意が必要でした。一方で、クレジットカードが旧姓で使えたらよかったのにという思いは残ります」と明かす。

 政府も女性活躍推進施策の一環として、旧姓使用の範囲拡大を進めている。今月1日、国家公務員が公文書に名前を記載する際、旧姓使用を全面的に認めると発表した。内部文書については2001年から認められていたが、対外的な文書は各府省庁が個別に判断していた

 さらに、6月に決定した「女性活躍加速のための重点方針2017」では、〈1〉マイナンバーカードに旧姓を併記〈2〉パスポートに旧姓を併記する際の手続き簡略化〈3〉銀行口座などの旧姓使用――が推進目標として盛り込まれた。  これらが実現すれば、旧姓使用に伴う煩わしさは、かなり軽減されることが期待される。

 ニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内どてうち昭雄さんは、「男女問わず働き続ける人が増えた時代に、社会生活を営む上で支障となることは一つずつ変えていくべきだ。銀行口座の旧姓使用など安全上の課題が残るものは一気には変えづらい面もあるが、社会全体に理解を広めることが大切だ」と話す。(福士由佳子)