身近に潜むスズメバチ「カチカチ」音に注意

 行楽シーズンの秋は、スズメバチが攻撃的になる時期と重なり、刺される被害が相次ぐ。今年もすでに、公園に居合わせた人が襲われるといった被害が出ている。時には命に関わる危険もあり、注意が必要だ。

強いアレルギー反応、命に関わる恐れ

 9月30日には、岩手県一関市で、運動会に向かう途中の園児とその家族14人、9月23日は東京都港区の都立芝公園で、子ども5人を含む男女10人が、24日には秋田県北秋田市でマラソン大会に出場していたランナー13人が、ハチに刺された。いずれもスズメバチとみられる。

 ハチの生態に詳しい玉川大農学部長の小野正人さんによると、スズメバチに刺される被害は例年、8~10月に集中する。この時期は翌年に女王バチとなるハチの養育が始まり、働きバチは神経質になっている。巣の防衛範囲は半径5~10メートル。この範囲に人が立ち入ると、攻撃を受ける危険がある。

キイロスズメバチは軒先や橋の下などに巣を作る(小野さん提供)

 スズメバチに刺されると、激しい痛みに襲われる。気を付けたいのは、かつて刺された経験のある人。再び刺されると、強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起きることがある。急な血圧低下や呼吸困難に見舞われ、30分程度で死に至るケースもあり、疑わしければ速やかに受診する必要がある。

 厚生労働省の人口動態調査によると、ハチによる死亡者数は2016年に19人。大半がアナフィラキシーショックによるものとみられる。

いきなり刺されるのはマレ、監視役が「警告」

 スズメバチの巣に近づいただけで刺されてしまうのか。小野さんは「いきなり刺されることはまれです」と話す。「まず『監視役』のハチ2~3匹がまとわりつくように飛び回り、『カチカチ』と歯ぎしりのような音や羽音を出してくる。これ以上、巣に近づくなとの警告です」

 警告を無視してとどまったり、あわててハチを手で振り払ったりするのは避ける。監視役のハチは巣を攻撃してきたと判断し、「警報フェロモン」をばらまく。すると、巣にいるハチがフェロモンを感知し、一斉に襲いかかってくる。警告に気付いたら、あわてず静かにその場を離れることが肝心だ。

 小野さんによると、スズメバチの被害が目立ち始めたのは1980年代。「里山の宅地化が進み、スズメバチが住宅の軒先や屋根裏、橋の下などに巣を作るようになった。人との距離が近くなり、被害が相次ぐようになったのです」と説明する。

オオスズメバチ(左)とキイロスズメバチ(右)。ミツバチ(中央2匹)とは大きさが全く異なる(小野さん提供)

黒っぽい服避けよう

 スズメバチに刺されないためにはどうするか。

 日本自然保護協会(東京)参事の横山隆一さんは、被害に遭わない心がけとして〈1〉黒いものを襲う習性があるため、黒っぽい服は避ける〈2〉頭も刺されやすいので、帽子をかぶったり、タオルで覆ったりする〈3〉ハチの針が肌まで届きにくい厚手の長袖、長ズボンを着用する〈4〉香水や制汗剤の香りや成分は、ハチを刺激する恐れがあるため使わない――ことを挙げる。

 遠足の経路やマラソン大会のコース付近にスズメバチの巣がないか下見をするのも有効だが、例えば7月と9月とでは、巣の大きさや働きバチの数などは大きく異なる。巣が小さいと見逃してしまうことも。下見をするならなるべく直前にしたい。橋の下など、目に付きにくい場所に巣が作られていることもあり、下見は十分注意しながら、入念に。(宮沢輝夫)