PR動画炎上「女が男を世話する」神話は いつまで続く?

スパイス小町

 「お蜜の使命、それは家臣の末裔として、殿方に涼しいおもてなしをすること」。そんなナレーションが流れる宮城県の観光PR動画が炎上しました。

  タレントの壇蜜さんが、妖艶なしぐさと言い回しで宮城の観光名物などを紹介する動画は、炎上したことにより、アクセス数はうなぎ登り。その一方で、「性的な表現が不快」「女性が殿に仕える設定で、固定的な性別役割分担を反映している」といった批判も沸き上がり、同県議会の野党会派や女性団体などが、村井知事に配信中止を申し入れるといった事態に発展しました。

  村井知事は当初、この動画を削除する予定はないとしていましたが、今月21日の定例記者会見で、この動画が「一定の役割を果たした」として、動画サイトから削除する方針を発表しました。

  AV監督で恋愛本などを手掛ける作家の二村ヒトシさんに聞いたところ、動画に登場するセリフの中で「『ぷっくり膨らんだ』『肉汁トロトロ』『ほしがり』あたりが、定番というか、ポルノ特有の言い回し」とのこと。「言いかた(演技)自体もポルノ」と指摘しています。

  もちろん壇蜜さんは、台本通りのパフォーマンスを演じただけなので罪はありません。でも、プロが見ても性的な妄想をかきたてるテクニックが使われているわけですから、これはさすがに「復興予算を使って作るもの」ではないでしょう。

 「性のステレオタイプ」助長するCMを禁止に

  一方、英国ではこんな動きがありました。英国政府と連携して広告基準を定めている「英広告基準協議会(ASA)」が、「性のステレオタイプ(固定概念)」を助長する表現の広告を禁止すると発表したのです。

  ASAが設けたガイドラインでNGとしているのは、男性、女性の固定化した役割を助長するようなもの、すべてです。例えば、男の子は泥だらけで外で走り回り、女の子は家で掃除する……なんていうのもNG。もしも、このガイドラインに照らし合わせたら、冒頭のナレーションなんかは一発でNGではないでしょうか。

  特に「女性と女児を性的対象として不適切に扱う」ことは「犯罪を誘発する」としてガイドラインに抵触します。となれば、宮城県の動画で、壇蜜さんのなまめかしい唇が何度も大写しになったり、竜宮城ならぬ「涼宮城(りょうぐうじょう)を案内するカメの頭を壇蜜さんがなでたりするシーンも、きっとアウトでしょう。

  英国でなぜ、こうしたガイドラインができたのでしょうか。それは、広告表現とは子どもたちが社会を知り、知識を深めるための「教育」の一つであり、広告はテレビや動画サイトなどで繰り返し流されることから、一種の「刷り込み」だと判断したからです。日々大量の情報を受け取りながら成長している子どもたちに「性のステレオタイプ」を刷り込ませないようにしようというのです。

 母親がこぐ自転車に平然と乗る男子中学生

  掲示板「発言小町」にも、「ステレオタイプな男女観」に対してモヤモヤした気持ちを抱く人たちのトピがたくさんあります。ちょっと気になるものを見つけたので、拾ってみました。

  「女性が強い時代の育児だから?」という投稿を寄せたのは、ハンドルネーム「中学生の母」さん。中学1年の娘さんが通う学校での行事の後、娘さんと親子一緒に帰宅する機会があったそうです。お母さんたちの多くは自転車で学校を訪れており、帰り道では、お母さんがゆっくり自転車をこいで、子どもは歩いたり走ったりして自転車についていく姿が目につきました。

  ところが、トピ主さんを驚かせたのは、息子を自転車の後ろに乗せて帰る母親が数人いたこと。女子たちは恥ずかしがって誰も乗っていないのに、男子たちは平然と母親のこぐ自転車の後ろに乗っていたそうです。

  「私を含め何人かは『ちょっと逆じゃないの!? お母さんを後ろに乗せて、僕がこいであげたら?』とか『運動だと思って、横を走ってかえりなよ』と冗談めかして指摘したところ、母親はちょっと照れくさそうにしていましたが、息子さんのほうは『僕、今日ちょっと風邪気味なんで(キッパリ)』と堂々と乗っていました」とトピ主さんは振り返っています。

  みなさんは、これを読んでどう思われるでしょうか。男の子だって体の弱い子もいるでしょう。疲れちゃうからお母さんのこいでくれる自転車に乗りたいのかもしれません。そもそも自転車の二人乗りはルール違反。それよりも私が気になるのは、こうした男子たちが将来どうなるのか、ということです。彼らの見てきたアニメはクレヨンしんちゃんから妖怪ウォッチまで、エプロンをつけていつも世話をしてくれるお母さんが出てきます。

 「女性は男性の世話をする」というステレオタイプが植え付けられ、力仕事(男子中学生を後ろに乗せて自転車をこぐのって、結構重労働ですよね)さえも女性に任せて当たり前、という男性にならないだろうかと心配になります。

 「好きの搾取」男女で受け取り方に違い

  昨年大ヒットしたテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の中で、「それは好きの搾取です」というセリフが有名になりました。独身のサラリーマン・平匡(ヒラマサ)が、“契約結婚”によって家事を代行してくれている「みくり」にプロポーズした際、「家事は無償」と考えている平匡に反発したみくりが言い放ったセリフです。

  明治大学教授・藤田結子さんの著書「ワンオペ育児~わかってほしい休めない日常」(毎日新聞出版)によると、藤田さんが学生たちに「逃げ恥」を見せて意見を聞いたところ、男子学生からは「好きなら家事をやってくれるはずだし、(みくりは)そんなに金がほしいのか?」「『搾取』という言葉に違和感。言われたらショック」と、かなりの衝撃を受けていたそうです。一方、女子学生たちは「愛があれば何でも乗り越えられるなんて、いつまでも続かないし、お金は必要」と冷静な反応だったとか。

  女性が何でも面倒を見てくれると無邪気に信じている男子たちは、自転車の後ろに乗ってお母さんにペダルをこいでもらっている男子中学生の将来の姿に思えます。

  女性がお金を稼ぐのが当たり前になり、共働き家庭がスタンダードになった今も、「妻が自分の面倒をみてくれる。育児や家事をやってくれるのは当たり前」という“神話”は残り続けています。あまたある幼児向け絵本にも、「お母さんが出勤する」という姿はほとんどないそうです。これらもまさに、子どもたちに固定観念を植え付ける「教育」になっているのです。

  特に、今のCMはYouTubeなどの動画サイトにアップされ、繰り返し繰り返し、好きなだけ見ることができます。今の子どもたちは「テレビよりも動画サイト」の世代です。テレビCMではなく、動画サイトだからOKといういいわけは通りません。

  くだんのPR動画は、本当に宮城県のためになったのか? そして、次世代への「教育」という意味ではどうなのか。ちょっと立ち止まって考えてほしいと思うのです。

発言小町のトピはこちら↓
女性が強い時代の育児だから?

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大学客員教授、昭和女子大学女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザーズなどでの勤務を経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「『婚活』時代」(山田昌弘共著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(齊藤英和共著、講談社)、「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ともにポプラ新書)など。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」(PHP新書)。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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