女性議員の妊娠に批判、「図々しい」という声に思うこと 

スパイス小町

 「妊娠で公務を果たせないなら、議員辞職すべきだ」――7月に鈴木貴子衆院議員(31)が、第1子の妊娠を自身のブログで公表したところ、ネット上でこんな批判を浴びました。過去にも女性議員が出産・育児で休暇を取り、厳しい批判にさらされたことがありました。

 「子育てしやすい国」誰が作るのか

  私の友人で、国会議員の秘書をしていた女性も「産休・育休が取れない」と退職したばかり。スタッフが少なく、休めなかったようです。政策を作る立場である国会議員や、政治に関わる女性たちが、「出産・子育てと仕事を両立できない」ようだと、一体誰が「子育てしやすい国」にしてくれるのでしょうか? 

  確かに今までにたくさんの人たちが「仕事か子育てか」の二者択一を迫られてきたことも事実。「自分を犠牲にしてきた」という思いが強い人ほど、仕事と子育ての両立を促す社会の風潮に対し、その自己犠牲を否定されるようで腹立たしく感じたり、ずるいと思ったりしがちです。そうしたやるせない気持ちの積み重ねは、分厚い地層のようになって、日本の社会に暗い影を落としています。

度目の産休・育休に職場からの批判

  だからこそ、子育てと、それを取り巻く環境についての論議が今、熱くなっているのでしょう。掲示板「発言小町」に、こんなトピックがありました。

  第2子出産を控えた20代後半の女性からの投稿で、育休を取ろうとして「同僚に『図々しい』と陰口をたたかれた」という内容です。

  第1子を産んで2年間休職し、復職して間もなく、再び2年間の産休・育休に入るという彼女。そんな彼女に、職場の同僚から「休んだ後、上司にしかお詫びやお礼の言葉がない」「ただでさえ時短なのに子供理由でしょっちゅう休む」「育休は基本1年で保育園に入れないなどの事情があった場合、延長するもの。最初から2年申請する人はいない」といった批判の声が上がったといいます。

  こんな声に、トピ主の彼女は「会社の規定で2年休めます」と応戦。復職後のお詫びやお礼は「直接、業務に関わりない方なので毎回言っていませんでした」、復職後の休みは、「子供が病気をもらってくるので仕方なくです」と説明し、「子供との時間を大切にしたいから、制度は精一杯利用させてもらいます」と書いています。こんな言い分を列挙する彼女が同僚だったら、皆さんはどう思うでしょうか?

  案の定、この投稿には批判的なレスが多数寄せられています。例えば、こんなレスがありました。「私は4月から育休明けて復帰しました。(中略)その権利を取得できて利用できるのは、会社にいる他の人の負担増のおかげなんですよ? そこを何か勘違いしていませんか?」

  最も多いのが、「助けてくれる周りの人への感謝が足りない」という指摘です。 私も、業務負担を分け合ってくれる同僚に対しての気遣いがトピ主さんに足りない点はすごく気になりました。

  しかし、会社が設けた産休・育休制度なのですから、職場の雰囲気が「制度はありますが、わかっていますよねー? 丸々育休2年とか取らないでねー」というものだとしたら、それはそれでどうなのだろうと思っています。

会社の制度設計、上司のマネジメントに問題も

  会社の経営者の集まりで、「時短勤務の女性社員が(全体の)15%になると、会社経営に支障が出る!」という話をよく聞きます。しかしそんなことは、制度を導入する時点で予測できなかったのでしょうか。「育児と両立したい女性なんて、どうせそんなにいないよね?」という甘い考えに基づく制度設計だったのではと思わざるを得ません。

  トピ主さんのように、産休・育休などを巡って職場にあつれきが生じたケースは、会社の要員配置など制度設計上のミスや、職場の上司のマネジメントのミスに起因することが多いと言えます。制度設計やマネジメントに問題があると、制度を利用して同僚ともうまくやれる人、制度を使わずに退職する人、制度を使ったものの周りとあつれきを起こす人と、社員間の個人差が大きくなってしまいます。会社や上司に問題があるのに、同じ職場の人間同士がいがみ合うとしたら、悲しい話ではないでしょうか?

  そんなモヤモヤをはらしてくれるレスがあります。それはこういった内容でした。

  「トピ主さんのように、ツラの皮が厚い人が増えないと日本はダメなんです。図々しいと言われても、気にしないでください。

  ある社員が産休・育休を取り、別の社員にそのしわ寄せが来るとしたら、権利を行使した社員が悪いのではなく、会社側の管理に問題があるせいなのです。しっかりした会社は、子育て世代社員の戦力を正しく見積もり、欠員が出てもちゃんと業務が回るように管理しています。

  とはいえ、会社がきちんと対処したところで、産休・育休を取得した社員に対する『図々しい』といった陰口はなくならないかもしれません。たとえ自分に迷惑がかからなくても、権利を行使する人間に『ムカつく』というタイプは存在します。でも、気にしないで我が道を進んでください。そして、会社の後輩たちが権利行使をしやすい道を敷いてほしいと思います」

  子育て家庭に学生を派遣する事業などを手掛けるスリール(東京・港区)は先頃、20~30代の働く女性の仕事や子育てに関する意識などをまとめた「両立不安白書」を発表しました。「両立不安」とは、仕事と子育ての両立に直面する前から不安を抱えてしまうこと。

 白書によれば、アンケート調査に答えた出産経験のない働く女性のうち、約93%が「両立不安」を感じています。具体的には「経営者が、女性が出産後も働くことを良く思っていない」「時短勤務になることによって、まわりに迷惑をかけないか」と言った不安の声が上がっています。また、「仕事と子育ての両立」への不安が原因で転職・退職を考えたことがある人は50.4%、 妊娠・出産の時期を遅らせることを考えたことが ある人は46.6%に上っています。

  こうした現状はそのまま、さらなる少子化につながります。女性も男性も、そして周りの同僚たちも「両立不安」のない世の中になるにはどうすればいいのか、一緒に考えていきましょう。

 発言小町のトピはこちら↓
「【育休】同僚に『図々しい』と言われました」

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大学客員教授、昭和女子大学女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザーズなどでの勤務を経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「『婚活』時代」(山田昌弘共著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(齊藤英和共著、講談社)、「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ともにポプラ新書)など。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」(PHP新書)。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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