女性杜氏が語る キャリアの軌跡と日本酒の魅力

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 ひと味違った個性的な日本酒が次々に誕生しています。その原動力の一つとなっているのが女性杜氏とうじたち。杜氏といえば、蔵人を率いて酒を醸す責任者で、男性の仕事の印象がありますが、最近では女性杜氏も少数ながら増えてきました。そんな女性杜氏のキャリアを聞き、彼女たちが手がけた酒を飲みながら交流する女性限定のイベント「MYSH × Sake Brewery as Women’s Career」が東京・大手町で開催されました。

  参加したのは、「吉村秀雄商店」(和歌山県)の藤田晶子さん(36)、「結城酒造」(茨城県)の浦里美智子さん(39)、「川鶴酒造」(香川県)の藤岡美樹さん(42)と、「森喜酒造場」(三重県)の森喜るみ子さん(57)の4人。集まった約50人の女性たちの前で、杜氏になった経緯や思いを語りました。

「子供を背負いながら」「夜中に一人で」……それぞれの酒造り

 浦里さんは結婚相手がたまたま蔵元の息子だったといいます。「日本酒に縁がなかったのですが、うちの蔵で搾りたての日本酒を飲んだらとてもおいしかった。家族経営の蔵を手伝ううちに、うちらしいお酒をと考えるようになりました」。地元の工業技術センターなどで酒造りの研修を受けて、「子供を背負いながら」酒造りに携わり、2016年度の全国新酒鑑評会では金賞を受賞するまでに。「お酒造りは体力勝負の面があるけれど、蔵に住んでいるので、親が身近で働いている姿を子供に見せられるという利点があります」

子育てと酒造りの両立について話す浦里美智子さん

 藤田さんと藤岡さんは二人とも大学で酒造りを学び、蔵で修業をして杜氏になりました。藤田さんは石川県で名杜氏の農口尚彦さんに弟子入り。仕込みのピーク時は休みも取れず、真夜中でも蔵に入って出来具合を確かめるといいます。「忙しいけれど、酒と向き合う凝縮した時間にやりがいを感じる。技術を継承する責任も感じています」。藤岡さんも神奈川の蔵などで修業を積み、現在の蔵で日本酒を飲み慣れない女性たちにも飲んで欲しいと考えたのが「川鶴 讃岐くらうでぃ」。アルコール度数6%の甘酸っぱい濁り酒で飲みやすく、地元の鳥料理に合うものをと造ったそうです。

 日本酒造杜氏組合連合会の統計によると、2016年度は、加盟18団体所属の杜氏694人のうち、女性は16人。14年度は14人で、この年度から男女別に統計を取り始めたのだそうです。「そもそも女性の統計が必要だという認識が業界になかった」と事務局。杜氏全体では、1965年度の3683人がピークで年々、減っている現状にありますが、日本酒に携わる女性たちはじわじわと増えているようです。

 このイベントを企画した「MYSH(マイッシュ)合同会社」のディレクター、野村美佳さんもその一人。ファッション関係の仕事をしながら日本酒の魅力にはまり、仲間と一緒に会社を設立。社名には「MY酒」という意味が込めてあります。「今回は『仕事』という切り口で日本酒の魅力を伝えましたが、今後もさまざまな角度から日本酒を紹介していきたい」と話していました。

 いずれの杜氏の酒も、話を聞いてから味わうと、そこに込められた思いまで伝わってきて、しみじみとおいしい。骨太のしっかりとした味から軽やかですっと喉を通るものまでさまざまで、蔵と杜氏の個性を感じさせます。参加者からは「これまであまり日本酒を飲まなかったけれど、今度からは銘柄を選んで飲んでみようと思います」という声が聞かれました。真夏にきりりと冷えた日本酒を飲みながら、女性杜氏たちの奮闘ぶりに思いをはせてみるのもいいかもしれません。(大森亜紀)