金魚柄の柿渋うちわ 伝統に現代の技 

日野明子さんのごほうび

  四季がある日本に住んでいるためか、夏ならではのアイテムを目にすると、条件反射で涼しさを感じることがある。例えば、うちわがその一つだ。

 熊本県山鹿市鹿本町来民くたみでは江戸期に四国・丸亀の旅の僧が製法を伝えた「来民うちわ」が作られるようになった。「民が来る」という言葉になぞらえ、地元では商売繁盛の縁起物として喜ばれてきた。

 ここで紹介するのは栗川商店の「来民しぶ団扇うちわ」。地元産の竹と国産の和紙を材料に使い、扇部の紙に、青い豆柿を水に漬けた液を発酵させた「柿渋」を塗っている。この柿渋が来民うちわの特長で、和紙が長持ちし、防虫効果もあるという。自前で柿渋を作っている栗川商店は、毎年、社員総出で柿を採り、5年寝かせてから使っている。

 私は10年以上前から柿渋だけを塗った無地の伝統的な商品を愛用しているが、この店が若者向けに柄の商品に挑戦したと聞き、見せてもらった。

 柿渋をひいた紙にベーシックな着物柄をアレンジしたものや、夏らしい金魚の絵柄もある。青墨せいぼくを全面に、さらに柿渋を塗ったものもある。うちわの紙を貼る骨は、職人が伝統的な方法で作っている。柄は職人が描いた原画を紙に印刷して、手軽に買えるようにした。

 後継者不足など厳しい環境の中で伝統工芸を絶やさぬためには、時代に合った商品が欠かせない。伝統の技に現代の技術を少しだけ加える。無理のないバランスが大切なのかもしれない。

★栗川商店((電)0968・46・2051、ファクス0968・46・5175)

日野明子
日野明子(ひの・あきこ)
クラフトバイヤー

 6月は新潟県内の美術大学で講義があり、毎週、長岡に通いました。最終講義では、ものづくりについて話し、「土産」に触れたところ、予想外に反響があり、驚きました。学生たちが卒業後に「自分でも欲しい」と思える土産物を作ってくれることを期待します。