「管理職になる」自信はありますか? 企業研修で女性を後押し

写真はイメージです

 「自分はリーダーに向いてない」「昇進しなくてもいい」。管理職に育てようとしても、そんな謙虚で控えめな態度を見せる女性社員が少なくないという。研修で自信をつけさせるなど、女性の挑戦を後押しする企業も出てきている。

女性管理職の比率は10%未満

 「管理職はみんなをぐいぐい引っ張っていくタイプでなければ務まらない。以前はそう思っていました」  
 明治安田生命保険(東京)契約管理グループで、4月からユニットリーダーを務める山本奈桜子さん(40)は振り返る。
 昨年、管理職候補に選抜されて研修を受けることになった時も、「そんな器ではないのに」と自信がなかったという。  
 ところが、その研修で強調されたのは「管理職にも様々なタイプがいてよい」ということ。「俺について来い、というリーダーばかりじゃない」という講師の言葉に山本さんは驚き、「調整型のリーダーなら、自分もできるのでは」と意欲がわいてきた。  
 山本さんの部下は20代から60代まで13人。年長者もいるため、話をしっかり聞き、調整型らしい細やかな気配りでチームをまとめるよう心掛けている。  
 政府は「2020年までに女性管理職比率30%」の目標を掲げているが、読売新聞が4月に主要企業を対象に行ったアンケートでは、管理職比率は10%に達していなかった。

「部下にはこまめに話し掛けるよう気配りしている」と明治安田生命保険のユニットリーダー・山本奈桜子さん(左)

経験積ませるための抜てきも

 女性管理職を増やすため企業に求められることは「現在の管理職世代に、女性登用の必要性を認識させる」「性別を問わず子育てや介護をしながらでも働きやすい制度・環境を社内につくる」などがあげられる。明治安田生命保険ダイバーシティ推進室長・長谷川誓子さんはその上で「女性に経験を積ませ、意識を変えていくことも必要」と話す。
  西武ホールディングス(埼玉)が2015年に実施した社員の意識調査で、「将来、経営者や管理職になりたい」と答えた割合は男性30%、女性は12%。「女性には、大事な仕事を任されていない、期待されていないといった意識があり、昇進意欲の低下を招いている」といった見方が社内で出たという。  
 女性の昇進意欲を高めるため、同社は16年から、管理職候補の女性を育成する研修を導入した。直属の上司とペアで参加し、組織運営法などの指導を受けながら、職場が抱える課題の解決策を企画立案し、社長の前で発表する。狙いは、いかに「管理職」の視点を持たせるか。  
 西武グループのグランドプリンスホテル高輪(東京)で、宿泊担当の「マネージャー補佐」を務める佐藤亜紀さん(38)は、研修1期生だ。研修に選抜され、経営陣に企画を提案したことで「管理職として取り組みたい」という欲が出てきた。
 研修後、管理職に昇進した佐藤さんは、ホテル内に新設された和風旅館エリアの責任者になった。部下の意見を取りまとめながら、茶道や折り紙体験など、外国人向けの企画を次々に立案している。
 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員、矢島洋子さんは、「自信を持って働けるようになれば、管理職昇進などキャリアアップを目指そうとする女性がもっと増えるだろう」と話す。(福士由佳子)

新たなスタイルを 坂東真理子さん

 内閣府男女共同参画局長などを務め、働く女性の問題に詳しい昭和女子大学理事長の坂東真理子さんは、「女性の意識改革も必要」と指摘する。幼い頃から、女性は自分の意見を主張するより「みんなと仲良く」と控えめさや謙虚さを教えられる。「若手のうちは控えめな態度がかわいがられるかもしれないが、『いい子』のままでは軽んじられるだけ」
 ただ、従来の男性管理職と同じような「ぐいぐい引っ張っていく」「長時間会社にいる」といったスタイルを目指す必要はない。「新しい管理職の在り方を生み出して」と坂東さん。

 とは言え、まだまだ女性管理職は少なく、偏見を持つ人もいるので振る舞い方には注意が必要だ。坂東さんは、誰に対しても丁寧な言葉遣いをするようアドバイスする。「性別を問わず大切なことですが、特に女性は厳しくみられてしまうので意識しましょう」

■管理職に昇進した女性の心得

・「素直で明るく指示に従ういい子」は卒業する。自分は組織のリーダーだという自信を持つ。自信がなくても、「リーダーを演じる」ことから始めよう
・感情をあらわにしない。女性は気持ちの不安定さを指摘されてしまいがち
・自分の成長と、組織全体の成果をバランス良く求める。部下を育てる意識も必要
・年長の部下など難しい相手には丁寧に接する。しかし女性だからといって軽んじてくるような相手に卑下する必要はない。毅然とした態度で
(坂東真理子さんの話をもとに作成)