家庭用浄水器のラインアップが広がっている。外出先で使いやすいタイプや料理向けなど用途も様々だ。目的に合った浄水器を選んで水道水を上手に使いたい。
ポット型と蛇口直結型、普及率は40%
浄水器は、主にカートリッジの「活性炭」で水を濾過し、味を損なうとされる残留塩素やかび臭、発がん性の疑いがあるとされるトリハロメタンなどを取り除く。活性炭は、イオン交換体やセラミックなどを組み合わせてフィルターの性能を高めたものが多い。国内の大手メーカーは、細長いストロー状の樹脂でできた繊維「中空糸膜」も使って、赤さびや濁り、雑菌なども取り除けるようにしている。
家庭用浄水器は、1980年代に活性炭と中空糸膜を使った本格的な「蛇口直結型」の商品が登場した。90年代後半頃からは活性炭でゆっくり浄化する「ポット型」も人気となった。
「当初は水を買う習慣がなく、売れ行きが伸びなかった」(メーカー)。しかし、ミネラルウォーターの普及とともに市場が拡大。水道水のカルキ臭や貯水槽の汚れ、給水管の劣化などを気にする人も増え、浄水器協会の2015年の調査では普及率は40・5%に達している。
用途別にミネラル調整/時短料理や外出向けも
最近では利用する場面を増やそうと、メーカーが特徴ある商品を投入している。
三菱ケミカル・クリンスイは昨年、食材に適したミネラル分に調整できるポット型商品「和食のためのクリンスイ」(本体とカートリッジ・税込み希望小売価格4320円)を発売した。お米用、お茶用、 出汁用の3種類で、「お米用は甘さや柔らかさを引き出し、ふくよかなごはんが炊ける」(木下博之社長)など、目的に合った水が作れるという。
ブリタジャパンが2月に発売した「fill&go(フィルアンドゴー)」(同・想定価格2160円)は、浄水機能付きのボトルで、活性炭の厚みを6ミリ、全体の重さを170グラムに抑えた。「持ち運びしやすく、いつでもどこでもきれいな水が飲める」と外出先での利用を想定している。
東レが昨年発売した蛇口直結型の「トレビーノ カセッティ206SMX」(同7980円)は濾過されて出てくる水の量を従来の約2倍となる毎分3リットルに改良。浄水器内部での水の流れ方を工夫した結果で、「鍋の水もすぐにたまり、家事の『時短』になる」(佐々木直美・トレビーノ販売部長)。
浄水器は水を買うよりもコスト面で有利といえる。2~3か月程度で交換するカートリッジの価格は1リットルあたり5~10円前後。ペットボトルの水よりも割安で、容器の処分も必要ない。
人口減少などで水道水の利用量はピークの2000年度から1割ほど減っている。水道事業の収支改善や設備の維持更新のため、水道料金を値上げする地方自治体も多い。日本政策投資銀行の試算では、約30年後には14年度比で6割以上の料金値上げが必要になる。
日本水道協会は「飲み水や料理に積極的に使ってほしい」と呼びかける。浄水器を取り入れながら日本の安全な水道水を上手に活用したい。(佐俣勝敏)