アカデミー授賞式ボイコットで話題 イラン女優が初来日

9日、都内で記者会見に臨んだタラネ・アリドゥスティさん

 今年の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「セールスマン」。主演したイランの女優タラネ・アリドゥスティさんが初来日しました。トランプ米大統領に抗議して2月の授賞式をボイコットした時のこと、映画のテーマである女性への性的暴行について思いを語りました。
 この作品は、イランの名匠アスガー・ファルハディ監督にとって2度目のアカデミー賞受賞作品。しかし、ノミネートの発表とほぼ同じ頃に、トランプ大統領がイランを含むイスラム圏7か国からの入国を制限する方針を明らかにし、アリドゥスティさんは自身のツイッターで「イラン人の入国禁止は人種差別だ。どんな文化行事だとしても抗議のため出席しない」と授賞式のボイコットを表明しました。
 東京都内で9日に行われた記者会見で、アリドゥスティさんは「ファルハディ監督は以前、アカデミー賞を受賞したこともあるし、この作品自体、カンヌで賞も取っていたため、(アカデミー賞を受賞できる)確率は高いとは思っていました」と語り、「女優として授賞式に参加したい気持ちもあった」と明かしました。「けれど、授賞式会場に集まった世界各国の映画人が声を合わせて抗議してくれたことは、自分が授賞式に参加するよりもうれしかった」

 映画は、テヘランに住むごく普通の夫婦が予期せぬ侵入者による暴行事件に直面し、生活が狂い始めていく様をきめ細やかに描写しています。アリドゥスティさん演じる妻は警察への通報をかたくなに拒否しますが、夫(シャハブ・ホセイニ)は復讐心ふくしゅうしんに燃え、たった一人で犯人を絞り込んでいきます。
 映画で描かれている女性への性的暴行について、アリドゥスティさんは「グローバルな問題」だと指摘しました。
 「法律を変えたり厳しく罰したりするだけでなく、文化的な面から人々の考え方を変えるべきだと思います。暴行を受けるのは女性のせいではないということを、世間はまだ理解していないように思えます。被害に遭った女性はその事実を口にできない。だから法律や警察に助けを求めることができないのではないのでしょうか」と自ら演じた役を通じて分析。
 「伝統的な社会では“恥”と感じられ、暴行を受けた女性または男性であっても、まず文化的に“恥”になるという考えを変える必要があります」と自らの思いを語りました。
 今回が初来日で、「日本のおもてなしは本当に心地が良い」と話したアリドゥスティさん。イランと日本が「映画を通じてお互いのことを知る機会になれば」と話していました。(杉山智代乃)

 映画「セールスマン」は、6月、東京・渋谷Bunkamura ル・シネマほか全国で順次公開。
 公式サイトはこちら