清々しいイグサのカゴ 機織りの風合い

日野明子さんのごほうび

 20年ほど前、東京・銀座の百貨店で須浪亨すなみとおる商店のイグサのカゴに出会った。手頃な値段で清々すがすがしいこのカゴに興味を持ち、岡山県倉敷市の製造元を早速、訪問した。

 当時は、イグサに色をつけて模様編みにしたゴザの花筵かえん作りが本業で、その傍ら、早世した4代目当主の母親、須浪栄さん(81)が短いイグサを縄にした「い縄」を専用のはたで織り、カゴに仕上げていた。

須浪亨商店のいかご 大 1万1880円(税込み)。中 1万800円 小 9072円(同)のサイズもあり。

 「いかご」と呼ぶこのカゴは、目が粗くざっくりとした風合いで、風が通る清々しさがある。栄さんは「地元ではありふれすぎて売れないのよ」と言うが、自然の素材を生かしたおしゃれなアイテムにほれて、愛用していた。

 その後、岡山のイグサ産業が廃れ、店は花筵作りをやめ、栄さんが細々とカゴを作り続けていた。「このカゴを作る人がいなくなるのではないか」と心配していたが、孫の隆貴さん(24)が5代目としてカゴ作りを継いだと聞き、先日久々に会いに行った。

 子どもの頃から祖母を手伝っていた隆貴さんは「20歳の時にいかご作りを生業なりわいにしようと決意した」という。栄さんが使っていた機を直し、さらに縫製の仕方や、持ち手を改良した。20年前よりは値段は上がったが、丈夫でハリのある仕上がりになった。

 カゴは、年月がつと緑色が次第に色抜けして白くなり、気持ちのいい茶色に変わる。使い込むことによる素材の変化も楽しみたい。

 

日野明子
日野明子(ひの・あきこ)
クラフトバイヤー

 ウェブマガジンの連載で自分の仕事や暮らしぶりなどを書くことになりました。初回にモノであふれた自宅の写真を載せたところ、友人から「我慢していたモノを買いたくなった」と連絡がきました。昨今の断捨離とは無縁の生活が好評だったのが面白かったです。