男性カルテットが仕掛ける定番 「THE」の挑戦

 東京駅前の「KITTE」にある「THE SHOP」。タオルからTシャツ、洗剤まで、シンプルな中にセンスを感じさせる品々が並ぶ。このブランドを仕掛けたのは、「くまモン」の企画デザインを手掛け、数々の広告賞を受賞歴を誇るクリエィティブディレクターの水野学さんら、男性4人のカルテット。ブランド名「THE」に込めた思いを4人に聞いた。

「男子ノリ」で始めた商品作り

THE GLASSとコースター

 物があふれる時代の定番って何だろう。THEを始めたのは、水野さんと仕事で接点があったプロダクトデザイナー、鈴木啓太さんとの雑談がきっかけだった。

 「コーヒーショップでSMLの三つのサイズから飲み物を選ぶ時に、人はあらかじめそのサイズの量を思い浮かべて注文する。それってすごいねと盛り上がって」と鈴木さん。

 つまり、人が思い浮かべる「普通」があり、それを形として示すことができたら面白い、というコンセプトを思いついた。デザインありきではなく、定番を探してみるというビジネスモデル。そこに、仕事で接点があった、全国で雑貨店「中川政七商店」を展開する中川政七さん、文具メーカーで物作りを担当していた米津雄介さんが加わって、2012年にTHEがスタートする。水野さんは「『それって面白いじゃん!』と仲間内で盛り上がる。女子に冷ややかな目線で見られる男子のノリで始めた」と笑う。

男子ノリで進む「THE」の会議。左から水野さん、中川さん、米津さん、鈴木さん

  でも、ノリの底にはそれぞれの物作りへの思いがある。米津さんは「メーカーは毎年新たな商品を次々に開発して、大きなお金をかけて売り出す。そんなに早いサイクルで商品を消費していいのかと思っていた」。中川さんは「差別化した商品を店に置かなければ売れないというジレンマがある。個々の商品を並べるより、THEというコンセプト自体を世に出したいと思ったんです」

暮らしのスタイルを見直す「新デザイン主義」

 THEの商品は、機能、歴史、素材、形状、価格の五つの観点で定番と呼べるかを考えたうえで作られている。例えば、第1弾のグラス。有名コーヒーショップを参考にグラスの容量を決めたものの、耐熱性があり、割れにくく、手が届きやすい価格で作ってくれるメーカーはなかなか見つからなかった。「シンプルな形だから簡単にできるというわけではなくて、世の中にないのには理由がある。価格も含めてどう折り合いをつけるか、試行錯誤でした」と水野さん。男性用と女性用で手触りが違うタオル、シンプルで小粋な弁当箱、吸水性があって丈夫なキッチンペーパーなど、身近で新しい商品は40品を超えた。

 THEが提案するのは「新デザイン主義」というコンセプト。「『買いたい物が少ないから買わない』というのが今の日本。差別化を追い求めて、真ん中がなくなったドーナツ現象が起こっている」と水野さん。商品を通して、日本の今を考える。THEの商品にはそんな男子カルテットの思いが詰まっている。