LGBT 身近にいますか?ダイバーシティーって女性活躍だけじゃない

知っていますか?LGBTの意味

 「ダイバーシティー」と聞いて、なにを思い浮かべますか?

 女性活躍のことでしょ、とまっさきに思う人が多いかもしれません。実際、多くの日本の会社では、ダイバーシティ推進をかかげて、女性が子育てをしながらでも働きやすい制度や環境を整えたり、女性管理職のパーセンテージの目標を決めたりといった、「女性の働きやすさ」にフォーカスしています。

 ですが、ダイバーシティーの本来の目的は、男性・女性、日本人・外国人、障害のあり・なしなど、属性にわけて考えるのではなく、「一人ひとりが違う存在なんだ」という、あたりまえの前提にたって、それぞれの違いを受けいれあって、組織の強みにしていこう、という成長戦略としてのダイバーシティーです。

 ダイバーシティーを考える上で、ここ1〜2年で企業の対応が急速に進んできているのが、働くLGBTへの対応です。LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった言葉で、性的マイノリティーの総称としてポジティブに使われている言葉です。

LGBTは佐藤・鈴木・高橋・田中さんを合わせた数より多い!

 LGBTは人口の7.6%(電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」)という調査結果があります。これは、13人に1人の割合です。

 私はレズビアンで、女性のパートナーと一緒に暮らし、東京・渋谷区の同性パートナーシップ証明書交付の第1号となりました。もちろんいまこのコラムを読んでいる人の中にも、LGBTの方がいると思います。

 7.6%というのは、日本の四大名字「佐藤・鈴木・高橋・田中」さんを全部あわせて足した数よりも多い数字。これまでの人生の中で実際に会ったことがある、これらの名字の人たちと、身近なLGBTの人たちの数を比べてみてください。たぶん、身近なLGBTの人数のほうが圧倒的に少ないと思います。「えー! びっくり。ほんとにそんなにいるの?」とよく聞かれます。

 「LGBTって、テレビに出ている『オネエタレント』のことでしょ?」という方。

 「最近アメリカでは同性婚ができるようになったってニュースでも見たけど、日本にもいるの?」という方。

 まずは、じつは身近な存在なのに「言い出せない」空気の中で、存在が見えづらくなっている人たちのことだ、ということを知ってください。

カミングアウトできない重圧から解放される幸せ

 私も今では全方向的にカミングアウトできていますが、20代の頃は、自分が同性愛者であることは「絶対に言ってはいけない」と会社でひた隠しにしていました。もしバレたらなにか不利益があるんじゃないか、と漠然と大きな不安を抱えながら働いていたのです。

 「彼氏いないの?」とか「結婚は?」といった日常的な会話がいちいち面倒でした。適当に答えをはぐらかしたり、「彼女」のことを「彼氏」に置きかえてストーリーを作って対応したりしているうちに、次第にうそを重ねる後ろめたさが重圧になってきます。本来の自分を出さないよう、つねに緊張を強いられていました。

 30代前半で転職した会社では、こういう状態にもういい加減耐えられなくなってしまい、カミングアウトをしたら、運よく温かく受けいれてもらえました。重たいよろいをようやく脱ぎ捨てられたような、体が軽くなったような感覚を体験しました。安心して働けるようになると、仕事のパフォーマンスも上がります。

 でも、もし運が悪ければ、上司や同僚から拒絶されて、会社にいられなくなってしまったかもしれません。実際に、そういうひどい目にあってしまった悲しい話もよく聞きます。

 心と体の性別が一致しないトランスジェンダーの場合は、カミングアウトにまつわる困りごとだけでなく、自認する心の性別で働きたいのに、理解が得られず、つらい思いをしている人がたくさんいます。働く服装やトイレ・更衣室、健康診断など、自認する性とは違う性でいることを強いられる場面があります。

「らしさ」からの自由を考えるきっかけに

 LGBTが働きやすい職場というのは、一人ひとりが尊重されて大切にされる職場です。それはどんな人にとっても、働きやすく、かつ、能力をフルに発揮できる環境ですよね。好きになる人の性別の違いや自分の性別にかかわらず、いろんな人がいる。そんな職場のカラフルな雰囲気こそがダイバーシティーの意味なのです。

 ダイバーシティーの中でLGBTについて考えることが、「女らしさ」をはじめとする、社会の中にある枠組みに自分を無理にあてはめようとする息苦しさを見つめなおして、そこから自由になるきっかけになったらうれしいです。

増原裕子
増原裕子(ますはら・ひろこ)
LGBTコンサルタント/株式会社トロワ・クルール代表取締役

  慶應大学大学院修士課程、慶應大学文学部卒業。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。2015年渋谷区同性パートナーシップ証明書交付第1号。ダイバーシティ経営におけるLGBT施策の推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修の実績多数。著書に『同性婚のリアル』等4冊がある。

トロワ・クルールHP