ソムリエという仕事の魅力 女性がコンクールで世界一になるには

ワインのテイスティングをする森本美雪さん 撮影・福山楡青

 ワインや日本酒を提供する「ソムリエ」の世界で、女性の活躍が目ざましい。4月に東京で開かれた「第8回全日本最優秀ソムリエコンクール」では、ホテル「コンラッド東京」に勤務する森本美雪さん(30)が決勝に進み、4位に入賞した。女性の世界最優秀ソムリエが誕生する日は、そう遠くないかもしれない。

 森本さんは、高校時代にファミリーレストランでアルバイトをした時に接客の面白さを知り、専門学校に進んだ。ソムリエ希望ではなかったが、最初に入社したレストランで、客とのコミュニケーションを深めるためにはワインの知識が不可欠だと感じて、23歳でソムリエの資格を取得した。

決勝戦でも笑顔を忘れない 撮影・福山楡青

 ソムリエを極めるため、2008年に第5回の全日本最優秀ソムリエになった森覚さんのいるコンラッド東京へ。15年に日本ソムリエ協会が27歳以下の次世代を担う若手ソムリエの育成を目的に設けた「第4回ソムリエスカラシップ」で優秀賞を受賞、いま注目の若手女性ソムリエである。

 日本ソムリエ協会によると、国内のソムリエ資格を持つ2万3096人中、女性は約45%、上位資格のシニアソムリエは2036人中、女性は約25%。年々女性比率が伸びている。ただ、この数字には客室乗務員や輸入・販売に携わる人も含まれるので、レストランなど飲食サービスの現場で働く女性ソムリエに限ると、まだ少数派だ。

 「一つには、力仕事が多いこと。60本のワインが入った段ボールを何往復も運ぶのは、日常茶飯事。ぎっくり腰を何度かやりました。ソムリエ資格が取得できるのが20代半ばですから、結婚を考える年ごろでしょう。昼間だけ働く仕事ではないので、家庭との両立を考えて悩む人も多いのでは」と、森本さんは説明する。

 長時間労働が当たり前という慣習が続いてきた飲食業界。だが、森本さんの勤務先は外資系ホテルということもあり、労働時間が明確に定められていた。「しかも、入社の時に、上司の森ソムリエから、ここにはワインスクールがあるから、将来子育てで夜の勤務が難しくなったとしても働き続けられると、言われました」

 森本さんは、森さんの厳しいトレーニングを受け、今回のコンクールに勝負をかけた。 全国から集まった24人(うち女性は2人)によるワインのテイスティングやサービスの実技などが行われ、決勝戦に進んだのは5人。森本さんは、決勝戦の前半、カクテルの課題で、マルガリータを作るのに、テキーラの瓶を取り間違えたのが大きな減点になった。「自分のできることは最大限出し切れた。でも、最後のあのミスだけは悔やまれます。何よりも育ててくれた上司に恩返しができなかったのが、申し訳なくて……」

森本さんは4位入賞(写真右)撮影・福山楡青

 田崎真也・日本ソムリエ協会会長からは、「3年後の次のコンクール、よろしくね。どの世代もコンクールで好成績を出す女性が1人はいるのに、続かない。頑張って」と、声をかけられた。

 海外には、結婚し、出産後もソムリエとして活躍し、コンクールでも好成績を残している女性が少なくない。昨年アルゼンチンで開かれた世界のトップを決める大会でも、58か国61人が競う中、出場した女性選手4人は、3位、4位、5位、8位と、好成績を残している。

森本さんが現在目標とするのは、昨年のアルゼンチンの世界コンクールで、3位になったフランス出身でアイルランド代表のジュリー・デュプイさん(34)。「コメントに説得力があり、サービスの組み立て方も丁寧できれい。物腰が柔らかく、お客として彼女のサービスを受けたいと思いました」と、森本さん。

昨年のアルゼンチン大会決勝戦で、ジュリー・デュピュイさんの実技

 今回の全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝した岩田渉さん(27)や準優勝の井黒卓さん(29)とは、LINEでグループを作って情報を共有し、切磋琢磨して学んでいるという。

 ソムリエという仕事にかける情熱に加えて、働き続けやすい環境があれば、女性の中から、日本一、いや世界一のソムリエが誕生することも、夢ではなくなってきている。(読売新聞編集委員・永峰好美)