就活シーズン、好きなことや向いた仕事が見つからないときどうする?

スパイス小町

写真はイメージです

 リクルートスーツの女性たちが目立つようになりました。長い髪を後ろで束ね、前髪をピンで留めて、黒いスーツに身を包む。社会に出るため、学生から社会人へと移行するために、どこかの組織に身を置くために、一団となって進んでいきます。

 カフェで次の面接の予定をスマホで確かめる姿、電車の中で就活向けの新書を読む姿(残念ながら私の書いた「女子と就活」ではなかったのですが……)、その横顔を見ながら「がんばって」と小さくエールを送っています。

 今の学生たちの「就活に失敗したくない」というプレッシャーはかなりのもので、彼女たちの母親世代には想像もつかないと思います。

「結局自分には何が一番向いているのかわからない」

 さて、当の大学生が何に悩んでいるかというと、「好きな仕事がわからない」ということです。または「向いている仕事がわからない」ということ。

 掲示板サイト「発言小町」にもこんな悩みが寄せられていました。投稿はコチラ⇒「就活に対する不安」

 「現在大学3年生です。大学では本格的に就活に向けてのガイダンスなどが始まり、近々進路登録票を提出することになっています。
しかし、情けないことに私はいまだに確実な進路を決めていないのです。性格検査や職業適性検査を何度も何度も行って考えてみても結局自分には何が一番向いているのかわからないのです」

 そう、こんな悩みはあなただけではないと言ってあげたい。みんな、わからないのです。自分が向いている職業とか、好きな仕事なんて。大学生の20年ちょっとの経験でそんなことがわかるわけがない。

 もし、やりたいことが決まっている人がいたら、それは素晴らしい。ぜひまっすぐ進んでください。でもだいたいの人は「好きな仕事」や「適正な仕事」なんてわからないのですよ。まずはいろいろな社会人に会ってみることをおすすめしますが、今からでは間に合わないなら、違う視点で仕事を考えてみて。

 まずは「お金と時間」です。一人暮らしをするなら、奨学金を返すなら、まずは「お金」が必要。お金という視点で考えてみる。

 または「時間とお金」というバランスで考えてみる。いくら稼いで、どのぐらいの時間を使うのか?

 また「電通」の過労自殺の問題があってから、男女ともに「ハードワーク」や「パワハラ・セクハラ」のある企業には警戒感が強い。労働条件や環境に目を向けるのも良いことです。

 「出産したらどうしますか?」と企業が面接で聞くのはセクハラです。しかし、こちらが「両立しながら活躍している人がいるのか?」「男性も育休をとっている人がいるのか?」など、聞くのはかまいません。

 「有給休暇の消化率はどれぐらいか?」(これは調べればわかるので、聞かなくてもいいかも)は、その会社のワーク・ライフ・バランスを示す指標の一つです。休みが取りづらくみんなガシガシ働く会社は、「育休」や「時短」のワーキングマザーにもしんどい環境です。

 しかし「ガシガシ働いて成長したい」という人には、ちょっと厳しめの会社もよい修業の場です。結婚・出産などのライフイベントがきたら、転職を考えてもいいわけですから。

女子こそ、そして親世代こそ「自分で稼いだお金で生活する」イメージを!

 これから働く皆さんに、いちばん考えてみてほしいのは「ママになっても働く」ということ。

 働くことをすごく短いスパンで考えていませんか? 女性たちが考える「働く」は「子どもができるまで」ということが多いのです。

 「その会社でずっと……」という意味ではありません。「働く」「自分で働いてお金を得る」「それで生活をする」のは【当たり前】というリアルなイメージを持ってほしいのです。「やりがいのある仕事って何だろう」「好きなことを仕事にしたい」――そんなことを考える前に、もっと当たり前に「働いて、自分のお給料で生活する」イメージを持ってほしい。

 就活生の親向けの講演依頼も多いのですが、その理由は、親世代が「女性はいずれ子育てがあるから」などと、女性の仕事を軽視している傾向が強いからだそうです。

 「大黒柱はあくまで男性」「女性が働くのは特別なこと」「女性はお金じゃなく、やりがいや社会貢献のために働く」「いずれ結婚すれば、仕事を辞めるか・辞めないかの選択肢も自由にできる」と思っている親御さんがいかに多いことか……。

 さすがに今の女子学生は「働くのは避けられないこと」と割り切っていますが、それでも「親が反対して、いきたかったベンチャー企業に就職できなかった」「親が営業ではなく事務職を強く勧めた」という人も多いのです。

 やはり、女性の仕事は「安全で安泰な大企業で事務職」というのが、最善の選択と考えてしまう親御さんも多い。親世代こそ働くことを甘くみてはいけません。またお金を甘くみてはいけない。

 前田正子さん(甲南大学教授)の著書「大卒無業女性の憂鬱―彼女たちの働かない・働けない理由」(新泉社)によると、今、専業主婦になっている女性への調査で、「今後もお金の面では心配がないので、働く必要はない」と答えた人はわずか2.7%だそうです。

 女性には低収入の問題も付きまといます。生涯未婚率、離婚率を考えると「50歳の時点で4人にひとりの女性が一人で生きて行く」ことを考えなければいけないのです。

幸せを自分でデザインするために働いて!

 では「好きなことを仕事にしてはいけないのか?」――そう疑問に思う人も多いでしょう。その問いには、いつもこう答えています。

 「『好きなこと×できること×お金が稼げること』を仕事にしている人は長続きしています」と。好きでもお金にならないことは仕事にならない。好きでもできないことは仕事にならない。そして、実はそれは『働いているうちに見つかる』場合が多いのです。

 先ほどの「発言小町」の投稿にも、こんな回答(レス)がありました。

 「『向いてること』なんて、そうそう見つかるわけない。『向いてないこと』『出来ないこと』を排除して、『できそうなこと』をやればいいだけ」

 そんな観点で、まずは「できること」「できそうなこと」から始めたらどうでしょうか?

 それから「好きなことは“横入り”」です。知り合いはボーイズラブ(BL)が大好きでBLの仕事がしたくて、まずはまったく違う分野の会社で編集の仕事をし、途中で転職して念願のBLの本を出版している会社で編集者になりました。転職して、次第に好きな方向に近づいて行く作戦です。新卒で入る会社、仕事がすべてではないのですよ。

 そして、今は副業や兼業の時代でもあります。ネットで作品を発表して、それが副収入になっている人もたくさんいます。でも、まずは「働いてお金を得ること」を経験しないと、よほど才能のあるYouTuberでない限り、生活できるようなお金にはなりません。

 多様な働き方がある時代だからこそ、まずは「働いてお金を得て、自分の生活をまわすこと」を卒業後しばらくは目標としてもいいのでは? それから「好きなこと」や「向いていること」を考えてもいいのです。

 あなたは、あなたの幸せを自分でデザインするために、今リクルートスーツで汗を流しているのです。自分の幸せのデザイン、そのために持つ“武器”のひとつが「仕事」なのです。

 すべての就活生に心からのエールを!!! がんばってね。

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 相模女子大学客員教授、昭和女子大女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザーズなどを経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「婚活時代」(山田昌弘共著)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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