転勤で結婚や出産のハードルが上がる日本ってどうなの?

スパイス小町

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 働く女性が仕事を辞める原因は「出産」と「転勤」です。どんな調査でも、だいたいこれが1位と2位。

 結婚している人なら、転勤となれば「家族と一緒に行くかどうか?」の選択を迫られます。しかし、結婚していない人だって、「彼氏が、彼女が転勤」と突然知らされると“状況”は一変します。

 いやいや彼氏彼女ならいいけれど、それ未満の微妙なところかもしれない。ひょっとしたら、次の夏のバケーションまで時間があったら、結婚とかあるかもしれないのに。そんなふうに日本人の恋愛、結婚、出産を左右するのは、実は運命ではなく「会社の命令」だったりするのです。

転勤は「結婚」「子育て」「介護」を困難にする

 労働政策研究・研修機構は今年1月、転勤の実態についての調査結果を報告しました。それによると、「転勤で困ったこと」として「結婚しづらい」を挙げた人が男性でおよそ3割、女性でおよそ4割。また、「子供を持ちづらい」と感じている人は男性でおよそ3割、女性でおよそ5割。「育児がしづらい」と答えた人が男女とも半数以上、「介護がしづらい」という人は同じく男女とも7割以上でした。

 つまり、転勤は少子化にも影響があると言えます。2人とも全国への転勤がある夫婦の場合、結婚してもすぐ別居という可能性もあります。「いつ子どもを持てば良いのか?」「子どもを持っても、このまま仕事を続ける限り、いつ一緒に住めるのか?」など、多くの人から悩みを聞きます。

 転勤族の妻として仕事をあきらめ、非正規の仕事をつなぎながらやっていく……しかし、心は決して穏やかではない。

 または単身赴任で、家族が離ればなれ。そして共働きが増えた今、必ずしも転勤に「妻がついていく」とは限りません。男性も少数ですが、「妻の転勤」という理由で仕事を辞めたり、転職したりする人もいる。

 しかし、妻が夫についていくことが多いので、「転勤がきっかけで仕事を辞めたら、地方都市で仕事がなく、非正規になって、それからずっと非正規」という人も多い。それは一家にとって、最高で「2億2700万円」(大卒総合職の場合)の損失という試算もあります。

 「子育て」「介護」「仕事」「結婚」、そのすべてに影響がある転勤。しかもそのルールが未整備で、あいまいなことがわかりました。先ほどの調査によれば、転居を必要とする人事異動がある企業の割合は約3割で、大企業ほど多かった。転勤に関するルール(転勤の期間や年齢などの時期を定めていること)の有無を尋ねると、「定めていない」が76.4%。ただ、家庭の事情をふまえ、転勤について「配慮を申し出る制度や機会」があるかどうかでは、「ある」が83.7%という結果でした。

 就活をみていても、女性は「転勤がない企業や職種」を選びがちで、「地域限定職」希望が多くなります。一方、男性はなかなかそうはいかず、結果的に「彼が転勤の多い会社に決まった。私のことを何も考えてくれていない」という女子大生の嘆きはよく聞きます。

女の一大事 「仕事と彼と、どちらを取るか」

 小町でも転勤に悩む人は多く、転勤で検索するとさまざまなお悩みが。

 「アラサー女性 彼の転勤転職
 「海外転勤。単身赴任か家族帯同か。
 「夫の転勤希望
 「転勤。年中。普通ですか?」――などなど。

 子連れだと、転勤地の子育て環境が気になる。また転勤したら、子どもが幼稚園になじめなくてかわいそう……ついていくべきか、それとも……さまざまな転勤についての悩みがトピになっています。

 今回は「結婚前の転勤の悩み」であるアラサー女性さんのトピをみてみます。「中距離で付き合って1年未満、一人暮らしのアラサー彼がいますが、近いうちに転勤になる可能性が高いです。彼からたまに結婚の話が出ますが、いざそうなった時どうするか悩んでいます」

 彼が転勤したら今よりさらに遠距離に。もし結婚した場合、トピ主さんが「仕事を辞めなければ」と考えているようです。転勤は家族の運命も劇的に変えますが、結婚前の微妙な時期のカップルには、まさに運命の分かれ道。女性にとっては「仕事と彼と、どちらを取るか」という、まさに一大事となります。

 この二人の場合、彼女は自分の仕事と彼の仕事のこと、両方を考えているけれど、彼は自分の仕事のことしか考えていない。つまり「彼女との将来」について、まだまだ考えていない。その温度差に彼女はいらだっています。

 彼は転勤先がイヤで、転勤せずに地元に帰ることも考えているとか。「私も彼との結婚も考えていますが、年齢的にも転職が難しくなる中で今の安定した会社での仕事を辞めることに抵抗があり、未来の話を楽しそうにする彼に内心ついていけません」「その前に結婚して退職し彼の地元についていった方、別れる選択をした方の意見や実体験をお聞きしたいです」

 この二人の場合、まずは安定した仕事がある方に一方が寄っていくという選択もあると考えてみてはどうでしょう?

 彼女は今の仕事には満足しています。「私はアラサー地元暮らしで激務だった前の会社から数年前に転職し、今は結婚出産後も働ける転勤のない会社で事務をしています」と書いています。女性にはやはり「安定した両立可能な仕事」が必要。そうでないと、結婚や出産に希望が持てません。

 その「希望が持てる仕事」は、なかなか見つけるのが難しい。この場合、彼の転勤先や地元ではなく、まずは結婚して子育てする時期のことを考える。そうなると、彼女の両親の助けがある地元、安定した仕事で共働きができる彼女の仕事のほうを優先して考えるのが、賢い夫婦戦略という感じがします。

 レスにも「ベースは2人とも平等ですから、『女性が仕事を辞めて男性に付いて行く』のみならず『男性が仕事を辞めて女性に付いて行く』も選択肢として当然考えなければなりません」「彼は就職口が少ない地元に何故なぜUターンを考えてるの? 今の会社を退社したとして、トピ主の会社の近くで再就職先を見付けたらイイと思うんだけど?」などといった意見がありました。

 「女性がついていくもの」と考えないで、どちらが二人にとって「安定しているか? チャンスがあるか? 仕事はどうか?」という点で考えると、時期によっていろいろな選択肢があってもいいと思うのです。

 そして、そんなふうに「通告から2週間程度」で家族の運命が急に変わる転勤って、どこまで本当に必要なんでしょうか?

転勤も“昭和”のままでは続かない

 学生には「頻繁に転勤のある企業」は人気がなくなっています。企業も人が来ないと困るので、「転勤を断っても良い権利」(キリンビール)、「配偶者の転勤でテレワーク可」(ニコン)など、いろいろと工夫が出てきています。

 頻繁な転勤は本当に必要なのだろうか? 学生は「転勤のない会社」を選んで就職するのも当たり前となっているし、社員に「転勤を断る権利」を与えている会社もあり、また「社員全員を地域限定職」とした会社もあります。

 働き方改革の中、転勤もまた昭和のままでは許されない時代となっているのは確かです。

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 相模女子大学客員教授、昭和女子大女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザースなどを経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「婚活時代」(山田昌弘共著)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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