輝かないといけないの? 女性が「きちんと働く」の意味

スパイス小町

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 東京都の「働く女性の応援プログラム」の講師をしてきました。この連続セミナーの対象は、独身、子どものいない女性、ワーキングマザー、管理職志望など毎回さまざまで、私は昨年に続き、2度目の登壇です。

 昨年はあるワーママから「パパは死んだものと思っている」という名言が生まれたこのセミナー。夫は長時間労働で、まったく子育ての戦力にならない。「いると思うと期待するので、いっそ死んだものと思ったほうが自分が楽」――そんなママたちのつらい心情から出た言葉です。

 この言葉は「パパはゾンビ問題」として安倍総理にも伝えました。日本の夫婦の危機をすごくよく表していますよね。

 さて、今年はというと……。「平日母子家庭状態」「上司が昭和。もう30年近くたっているのに」などなど、今年もたくさんの名言が生まれ、盛り上がりましたよ。

女性は「活躍」しないと働き続けられないの?

 今回のセミナーのタイトルは「将来、ママになってもきちんと働いていたい!」。これは女性からよく聞くセリフです。

 世の中“女性活躍”と言われるけれど、実は女性で「活躍したいです」という人はあまりいません。「きちんと働きたい」という人が多い。

 この「きちんと」とはどういう意味なのでしょうか? きっと、「普通に」ということですよね。男性は「活躍する人」も「活躍しない人」も会社にいることが許される。しかし女性は違う。子どもを持ったとたん選択を迫られる。「子育てっていう大事なことを人に任せてまで働くんだから、それは、よほど覚悟があるんだよね。活躍したいんだよね」と言わんばかりに。

 そして女性たち自身も「子育てをしながら働く自分」をどこか後ろめたく思っています。仕事を辞めた女性たちから「子どもを預けてまで、する仕事かなと思って……」というセリフを何度聞いたことか。

 なぜ女性だけ「輝いたり」「活躍したり」と特別なことをしないと働くことが許されないのでしょうか?

 また「やりがい」のわなというものもあります。女性は「やりがいのある仕事」「輝く仕事」「活躍する仕事」でないと続けてはいけないのか?

もう徹夜では身体がもたない…

 発言小町にも「仕事の環境とやりがい」についてのトピがたくさんあります。例えばやりがいあるけど激務。転職すべきか。という28歳技術職で働く女性からのトピ。

 入社以来、「繁忙期になると連日終電、徹夜になることも」あったという忙しい仕事です。今は「比較的暇な部署」にいるけれど、1年後には元の部署に戻る予定。「私がやってみたかったジャンルの仕事をしてるチームから、うちに来ないかと声がかかっています。その仕事は業界の中でも先進性があり、この先のキャリアのためにもやってみたい、という気持ちもあります。でも、もう徹夜は身体からだがもたない……」

 将来は結婚や子育てもしたいというトピ主さま。「激務だけど、やってみたかった仕事に一度飛び込んでみるか、転職するか」とお悩みです。

 ここにはひとつの問題があります。「やりがいと激務」がセットになっている環境です。そもそも「連日終電」って、どう考えても月に80時間以上の残業? きちんと残業代が出ていなければ、労働基準法違反になります。

 いろいろな方が回答を寄せていましたが、とても参考になるレスがあったので、紹介しますね。この方は「社内異動」を進めています。転職よりリスクが少ないから。そして「徹夜は無理」「今後結婚、妊娠の可能性もあり」ということは、しっかり異動する前に伝えること。それは「チームのリスクになる」からです。

 「参考までに、私は、やりがいを仕事に求めて身体を壊してきた人間です。仕事は、所詮しょせんはお金稼ぎの手段だと、割り切ることも必要です。女性は真面目で優しいので、つい心身ともに頑張りすぎてしまいますが、ほどほどにしてくださいね」

 優しくて現実的なレス、ありがとうございます。同じような境遇で悩む人には参考になるのではと思いました。

家庭を大事にする人は「きちんと働いていない」とみなされる…

 そして思います。やっぱりおかしい。将来結婚や子どもを持つのは男性も可能性があるのに、男性だけが「会社に時間をささげられる」ことが評価され、できる人も、できない人も、活躍したい人も、生活費稼ぎの人も、後ろめたくなく会社にいることが許される。

 一方まじめな女性たちは「きちんと働けない」ことに苦しむ。きちんとって「時間だけのこと」なのに。

 本当に女性活躍をうたうなら「時間での評価」、特に「時短での差別」がある限り無理だと思います。冒頭で紹介した東京都のイベントでは、多くのワーママが言っていました。

 「時短だと昇進はできないとはっきり言われた」

 「同じ成果を出しているのに、評価もお給料も低いし、チャンスもない」

 「仕事と家庭のどちらが大事と聞かれ、家庭と答えたら、『その間は昇進のコースにはのせられない』と言われた」

 「時短中の私ではなく、未来の私に期待していると言われた」

 家庭を大事にする人は「きちんと働いていない」とみなされるのか?

 それなら「女性活躍」なんて、絶対に無理だと思います。

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 相模女子大学客員教授、昭和女子大女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザースなどを経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「婚活時代」(山田昌弘共著)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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