「保育士さん、さすがプロ!」…でもそろそろ業務を見直すときかも

スパイス小町

写真と本文は関係ありません

 発言小町に女社会で働く大変さをつくづく感じています。というトピがありました。

「女社会の難しさ」より問題なのは…

 トピ主さまは保育園勤務1年目の女性。「委託保育士」ということなので、正社員(または正規職員)ではないのですね。しかし保育園も忙しい職場、行事や備品の管理などいろいろと係があって、委託のトピ主さまにも仕事が割り振られています。その係は6人で担当しているそうです。

 「先日の台風の日のことです。登園した園児が少なく、これはまった係の仕事ができる!と思い、係の先生に声をかけ、参加できる先生だけ集まり3人で溜まった仕事をすることにしました。仕事をしている内に、退勤時間が過ぎましたが、こんな時しかやれないし、ということで満場一致で全て終わらせてしまうことにしました」

 仕事が終わってスッキリ。しかし後日、その話を別の先生にしたところ、思いも寄らない言葉が返ってきました。「退勤時間が来たら帰らなきゃ。もしかしたら一緒に残った主婦先生は家のことや、用事をしたくて早く帰りたいけど、言えなかったかもしれないよ? そうなったらまた陰でグチグチ言われて、先生が損する」

 「女社会って笑顔の裏は難しい」と嘆くトピ主さまでした。

 しかし、これって「女社会って難しい」で片付けていい話なんでしょうか? そもそも「長時間労働」をしなければいけないほど仕事があって、人も足りない現場が問題だと思うんですね。

 最近、社会起業家で病児保育などを手がけるNPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さんが、ブログの記事「保育業界最大手の労働基準法違反について」で書いていました。

 ある大手の保育園運営会社が「労働基準法違反」で是正勧告されました。違反は「休憩が取れない」「残業代が支払われない」などの内容で、「直接子どもに接する保育以外はサービス残業にされることが多かった」といった声が、労働組合に寄せられていたそうです。

 さらに持ち帰り残業もあったといい、持ち帰り残業になっていたのは、盆踊りや節分の豆まきなど毎月保育園で催される行事の準備で、例えば衣装やパネル作成などです。

「働き方改革」は「業務改革」

 残業代が支払われないというのは完全にアウト。しかし、長時間労働、休みが取りにくい、持ち帰り残業が多い……。こんな悩みは保育士の皆さんからよく聞きます。業界全体が「長時間労働で休めない」状態なんです。

 保育士不足の問題が指摘されていますが、実際の現場がこういう環境だから、せっかく「保育士になりたい」と思って仕事に就いたのに辞めてしまうという悪循環。賃金が低いことも原因ですが、長時間労働も保育士不足の大きな理由になっています。

 今、政府も進めようとしている「働き方改革」で「長時間労働是正」が言われていますが、ただ労働時間に“上限”をつけただけでは「サービス残業が増える」という心配があります。この保育士さんの問題をみても、「残業をなくしましょう」というだけでなく「どうやったら仕事が減らせるか?」考えて、業務改善をしなければいけないんですね。

 その方法も、駒崎さんはブログに書いていました。駒崎さんの会社が運営する「おうち保育園」では長時間労働はありません。

 「ものすごく地味で当たり前のことをしたのです。例えば残業の原因になる行事やイベント、制作物に関しても、『そもそも何でやるの?』ということを考え直しました。本当にやる意味があるのか。あるとしたら、その形がベストなの?ということを考え、大人のためだったり、本人達のこだわりのためだけだったりするものは、やらないようにしました」

 実は、これヨーロッパの保育園では当たり前のことのようで、日本人からみると「素っ気ない」と感じるほど「子どもの世話をすること」に最適化された環境だそうです。

 「フランスはどう少子化を克服したか」(高崎順子さん著、新潮新書、10月発売予定)に詳しいのですが、例えばフランスの保育園(3歳からは義務教育なので、その前の段階)では、行事は年に2回ぐらいしかないとか。(労基署から是正勧告を受けた保育園では、「毎月ある」と書いてありましたよね?)

 連絡帳もなく、親と保育士は口頭で報告し合うぐらい。子どもたちの1日は記録されていますが、それは園の業務記録で親のためではありません。保育士の勤務時間は子どもの世話をすることに使われます。

 保育園に子どもを預けるママたちからは、「保育園でこんなものを作ってきた」と、かわいいこいのぼりやらクリスマスリースやら、いろんな季節の飾りものを見せてもらうことがあります。また、「手書きの連絡帳に、本当に細かく書いてくれて頭が下がる」という話もよく聞きます。

 「保育士さん、すごい」「えらい」「頭が下がる」「ありがとう」――“プロの手腕”にただ感謝したくなりますが、ひょっとしたら、それらは保育士さんの涙ぐましい「長時間労働」の賜物たまものなのかもしれません。

 毎月の季節の行事……なくしたら保護者から苦情がくるでしょうか?

 連絡帳……スマホ入力になれた親と保育士世代なのですから、手書きじゃなくてもいいのでは? 違う情報交換の方法があるかも?

 そろそろ「保育士さん、えらい」だけじゃなく、保育士さんが疲れず、子どもと向き合うことに集中できて、事故がない環境を作れるように、「やめること」を決めるときじゃないか?

 保育士さんのトピから、そんなことを考えました。さて、保護者のみなさまは保育士さんの長時間労働がなくなるために、何をやめればいいと思いますか?

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト・作家

 相模女子大学客員教授、昭和女子大女性文化研究所客員研究員。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。東京生まれ、慶応義塾大学卒。住友商事、リーマンブラザースなどを経てジャーナリストに。女性のキャリア、働き方改革などをテーマに発信している。「婚活時代」(山田昌弘共著)で「婚活ブーム」の火付け役となった。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

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