朝市を訪ねて、夏野菜と人に出会う旅

  大量生産ではなく、その土地だけで食べられている野菜があります。旅に出て朝市を訪ねると、そんな野菜に出会えるはず。昔から続くのどかな朝市から、若手農家が集まるファーマーズマーケットまで、ユニークな朝市が各地にあります。作り手に直接、食べ方を尋ねて、会話を交わすのも朝市の楽しみの一つ。きっと旅の思い出になります。

 名古屋の朝市のどでかいナス

 名古屋市の中心部、栄で毎週土曜日の朝に行われているのが「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」。愛知や岐阜、三重などで、環境に配慮した農業を行っている生産者たちが出店する朝市です。野菜やコメ、果物などの農産物や、ピクルスなどの加工品まで多彩なものが販売され、出店者は農業の世界に飛び込んだ新規就農者が多いのも特徴。午前8時半から同11時半まで開催されていますが、売り切れ次第終了となるので、朝早くからにぎわっています。

 7月に朝市を訪ねた時に見つけたのが、伝統野菜の「天狗てんぐナス」。1本400グラムほどもあるずっしりと重い大きなナスで、「分厚く切って焼くと、トロトロになってすごくおいしい」。店番をしていたのは、名古屋大学の農業サークル「F&M」の関谷千星さん(21)と有生茜さん(19)で、時々、朝市の出店を手伝っています。

 そのほか、海外原産の珍しいナスやカラフルなトマトなど、眺めているだけで楽しくなります。ノーレジ袋が原則なので、マイバッグ持参で買い物をする常連さんもちらほらいて、「この前の大雨は大丈夫だった?」「おかげさまでトマトは無事でした」といった会話がきこえました。

 朝市の村長は、オーガニックファーマーズ名古屋代表のよしのたかこさん。生産者と消費者のかけ橋になる場所を作りたいとスタートし、毎週30ほどの農園が出店しているそうです。「作り手の姿を知れば、野菜がもっとおいしく食べられるはず。いろんな味を食べ比べてみて」とよしのさん。名古屋観光のついでに、散歩してみると、元気がもらえそうな気がします。

 始まりは江戸時代、増田の朝市の夏キノコ

 一方、秋田県横手市にある「増田の朝市」は、1643年、江戸時代の初期に開設されたとされる朝市。毎月2、5、9のつく日に開かれ、野菜のほか、山菜や魚、苗、服などを売る店が細い通りにぽつぽつと並んでいます。

 「丹正商店」で見つけたのは、「トビタケ(トンビマイタケ)」という大きなキノコ。店主の丹正利さんは「夏のキノコで、いためても煮てもうまいよ」。自家製のナスの漬物もほんのり甘い味付けで、お茶受けにもごはんにも合いそうです。

増田の朝市に並ぶキノコ

 そのほか、かすづけにするという大きなカタウリや、地元名産の小ぶりの枝豆も新鮮でおいしそう。フキのような山菜の「ミズ」は、塩クジラ(クジラの脂身の塩漬け)とナスと一緒に汁物にするそうです。

 常連さんと、自家製の漬物でお茶を飲んだり、話に花を咲かせたり。そんなのどかな時間が流れる朝市を歩けば、せわしい気持ちがリセットされるよう。

 朝市のある旧増田町は、蔵を備えた家が多い「蔵の町」で、近くには秋田一の売り上げを誇る道の駅「まめでらが 道の駅十文字」も。朝市とあわせて訪ねてみるのもおすすめです。

かすづけにするカタウリ(左)、お茶とおしゃべりが地元の人たちの楽しみ(右上)、自家製の漬物も美味(右下)

 全国的にみて農産物直売所の数は増えています。農林水産省の6次産業化総合調査によると、農産物直売所を運営する事業体の数は、平成22年度の2万2980から、26年度は2万3590に増加。農家レストランなど、地場の野菜を味わえる場所を併設しているところも登場。まだまだ知らない地場野菜の味に出合うチャンスが増えているようです。