夏のベイエリアで「メイド・イン・東京」の野菜を楽しむ

 東京都青梅市で野菜や果物の栽培を手掛けている「TYファーム」。同社のコンセプト「SEED TO TABLE (種から食事まで)」を実践する直営レストラン「NOZ BY T.Y.FARM」が今春、オープンしました。青梅の農場から直送の新鮮な夏野菜を使った料理を味わうため、東京・天王洲にあるNOZを訪ねました。

農場直送の夏野菜を使ったイタリアン

 東京モノレール、りんかい線の「天王洲アイル駅」から5分ほど歩いたベイエリアの一角に、NOZは瀟洒しょうしゃな店を構えています。落ち着いた木調の店内は26席。潮風が吹き抜けるオープンテラス(20席)もあります。

東京・天王洲の「NOZ BY T.Y.FARM」

 この店で、腕によりをかけた料理を提供しているのは西田浩隆さん(34)。イタリアの星付きレストランで副料理長などを務めた経歴を持ち、20年来の友人であるTYファームの代表取締役・太田太さん(34)に請われて、NOZのエグゼクティブ・シェフに就任しました。

 NOZで使っている野菜や果物は、ほぼすべてTYファームの農場で栽培したもの。太田さんは「この店でどんなものを提供するのかを考えたうえで、それに合った作物を農場で育てているんです」と話します。さっそく農場から届いたばかりの夏野菜を使ったオススメのメニューを3点、紹介してくれました。

自家製のロースハムとグリルしたズッキーニ、ナスのマリネ、モッツァレラチーズなどを載せたクロストーネ

 まず一つ目は、薄切りパンの上に様々な食材を載せて食べるイタリア料理「クロストーネ」(価格800円=税込み)。西田さんは、自家製のロースハムとグリルしたズッキーニ、ナスのマリネ、モッツァレラチーズなどを載せたクロストーネを供してくれました。口にしてみると、パンのしっかりとした食感と、塩気の利いたロースハムやズッキーニの柔らかな食感が絶妙にマッチしており、バジルの香味がその味をさらに引き立てています。

バターナッツとトマトのサラダ

 二つ目は、「バターナッツとトマトのサラダ」(価格1000円=税込み)。これに柿酢ドレッシングをかけて食べてみます。バターナッツは、南米が原産とされるカボチャの一種で、近年は日本でも人気が高まっています。その名が示す通り、ナッツに似た風味とネットリした食感が特徴。しかし、「今の時期はまだ完熟していないので、薄切りにして食べると、ポリポリした食感が楽しめます」と西田さん。トマトも弾けるような食感があり、柿酢ドレッシングのすっきりとした酸味によって、野菜の本来の味が生かされているようです。

ズッキーニと新たまねぎのトマト煮込みのオーブン焼き

 三つ目は「ズッキーニと新たまねぎのトマト煮込みのオーブン焼き」(価格900円=税込み)。大きめのズッキーニをトマトベースでじっくり煮込むのがポイントといい、自然栽培でたくましく育ったズッキーニが、ほのかに甘い本来の風味を保っています。オーブンで焼く前に落とした鶏卵が煮込みにコクをもたらし、ハーブの香味がいっそう食欲をそそります。

その時の野菜の状態に合った料理を

 西田さんは、イタリアで6年ほど暮らした後、東京に戻ってレストランのシェフをしていました。「日本では、お金さえ払えば何でも手に入る。イタリアはもっと不便で、特に僕が住んでいたのは田舎町だったから、欲しい食材が手に入らず、地元で採れたもので料理をするのが当たり前でした」と振り返ります。ところが、東京では「何でも手に入る」からこそ、料理人として何を作ったらいいのか、逆によく分からなくなってしまい、イタリア時代のことを「あれはあれで良かったな」と考えるようになっていたそうです。

西田浩隆さん

 西田さんがそんな悩みを太田さんに打ち明けると、かつてイタリアの西田さんの店を訪ねたこともある太田さんは、あるアイデアを思い付きました。それは、目の前の畑で採れたものを、その日のうちに料理して、お客さんに提供する。そんなイタリアの片田舎のレストランのイメージでした。それが、NOZという店を開くヒントになったそうです。

 西田さん自身、NOZを開店する前、青梅の農場で汗を流し、農業を学びました、店を切り盛りする今も、農場との連絡のやり取りは毎日欠かしません。自然栽培で育った野菜は、同じ品種でも、その時々によって形や状態が違います。「だから、その時の野菜の状態に合った料理を作らなくてはいけません。僕には野菜を作っている人の顔が分かっているので、少しもムダにはできない。大変ではありますが、今の仕事がとても楽しいんです」。

 イタリアの片田舎のレストランから着想し、「メイド・イン・東京」の野菜を提供するNOZ。お客のほぼ4人に1人が外国人だというのもうなずけます。太田さんたちは、天王洲のほかにも店舗を広げたい考え。東京で地産地消に取り組む彼らの挑戦は、まだ始まったばかりです。(取材:田中昌義)

NOZ BY T.Y.FARM