はあちゅうさん「昔はお守り、今は新しい門出の象徴に」

ジュエリーを楽しむ

 自らジュエリーのプロデュースを手掛けたこともあるブロガーで作家のはあちゅうさんに、ジュエリーへの思いをつづってもらいました。

服や靴より小物選びが好き

 一口にオシャレ好きと言っても方向性は人それぞれで、私の場合、服よりも靴よりも小物選びが好きだ。仕事で衣装が必要になって服を買いに行っても、気づけばバッグとジュエリーばかり見てしまっている。服を変えたほうが見た目のイメージは変わるとわかってはいても、つい視線は小物のほうへ。そのせいで服はいつも足りなくなるけれど、ジュエリーケースの中身は充実している。

はあちゅうさんのジュエリーケース

 良いジュエリーはちゃんと自分の目に飛び込んでくるからいい。どんなにいい服を身に着けていても、自分では悲しいかな、全体像が見られないのだ。けれど、ジュエリーならふとした時に目に飛び込んでくる。「爪が可愛かわいいと気分が上がる」と女子はよく言うけれど、ネイルをしない私の場合、ジュエリーがその役割を担ってくれる。

自分に意識を向けられた朝のジュエリー選び

 学生時代は試験のたびにご褒美ジュエリーを買っていた。制服登校が義務付けられていて、個性を出せるのは胸元だけだったのだ。ピアスをあけていない私は、ネックレスとリングを毎日変えて学校へ行った。クラスにうまく馴染なじめず、休み時間になるたびに孤独を味わっていたあの頃、ジュエリーは私のお守りだったのだ。

 私が通った高校は学費が日本一高く、同級生は皆、特別な人たちだった。楽器で日本一になったり、スポーツで世界ランキングに入るような子がうじゃうじゃいる中で、私は才能のなさと容姿や家柄の平凡さに悩んだ。同い年なのに人生経験が豊富に見える周りの子たちと何をしゃべっていいかわからず、もともとの人見知りもさらに加速した。休み時間は、誰かと喋らなくていいように図書館に逃げていた。クラスの中で惨めに見えないために本好きの人のフリをしていつも本を読んでいたけれど、耳は近くのお喋りをどうしても拾ってしまう。私も本当は仲間に入って、お喋りの中心になってみたかった。

 あの頃はいつも誰かが羨ましかったし、誰かになりたかった。人のことばかり見つめていた自分が唯一意識を自分に向けられたのが、毎朝のジュエリー選びのひと時だ。

私は私のために買う

 朝、家を出る前に「昨日よりはいい一日でありますように」という願いをこめて首の後ろのチェーンを留める。それはただの習慣というよりは、私にとって意味を持った儀式だった。そのせいかジュエリーを忘れた日は、自分の周りにいつもある結界がとけたようで不安だった。

 周りの人気者女子たちが、彼氏にもらったネックレスをつけたり、友達とおそろいにしたりしているのを内心羨ましく思いながらも、私は私のためにジュエリーを買っていた。期末試験が終わる度に自由が丘にジュエリーを買いに行くことが、気づけば私の習慣になっていた。

 好きな雑貨屋で購入候補をいくつか見つけておいて、試験が終わると目当ての店に行く。そしてあらかじめリストアップしておいた雑貨屋さんを一つずつまわって、実際に身に着けてみたり、値段とお財布の中身を比較して半日かけて、買うものを一つだけ選ぶのだ。買う時はいつもその場でタグを切ってもらって身に着けて帰った。「今日からこの子が私のお守りなのだ」と自分で自分に信じ込ませた。

ジュエリーの数は決意の数

 そうやって選び抜いたジュエリーをつけて、私は学校に戦いに行っていたのだ。「あと1学期、頑張ろう」――学期を越すごとに、ジュエリーは増えていった。ジュエリーケースの中のジュエリーの数はそのまま、私の人生の決意の数だった。

 今はもうあの頃のように、孤独が怖くはなくなった。むしろあの頃のようにたった一人で自分と過ごす時間が恋しいくらいだ。

純文学小説刊行のお祝いに

 私にとってのジュエリーは何かを達成した証しだから、しばらく新しいものは買わなかったのだけれど、最近久々に、ブレスレットとリングを買った。子供の頃からの夢だった純文学小説を、31歳にしてやっと刊行できたことへのささやかなお祝いだ。高いものではないけれど、記念品が欲しかった。用事があって出かけた渋谷のヒカリエで、ふと目に飛び込んできたものがいくつかあり、運命のジュエリーのように思えた。

 色違いがいくつかあって、どれにしようかと選んでいる時、期末試験ごとにジュエリーを買っていたことを思い出した。あの頃のお財布事情だったらどれか一つしか選べなかったけれど、少し成長した今は、二ついっぺんに買っても全然お財布は痛まない。うれしいような切ないような気持ちで、選び抜いた二つをレジに持って行って、昔と同じようにその場でタグを切ってもらった。新しい門出の象徴のようなその二つのジュエリーを、最近はよく身に着けている。

はあちゅう
ブロガー・作家

 「半径5メートルの野望」(講談社)、「自分の強みをつくる」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、最新刊「通りすがりのあなた」(講談社)など著作多数。