柴崎友香さん「恋愛は書いていて面白い」スペシャルナイトでトーク

世界らん展日本大賞2018

 芥川賞作家の柴崎友香さんが21日夜、東京ドームで開催中の「世界らん展日本大賞2018」でトークショーを行い、最新小説「千の扉」(中央公論新社刊)への思いや、自身の恋愛観、結婚観について語りました。

 今回、初めて「世界らん展」を訪れた柴崎さん。文学賞を受賞した時の祝いの花としてコチョウランなどをもらうことが多いそうで、「らんにはすごく特別なイメージがある」と語りました。

 柴崎さんは、1973年に大阪で生まれ。99年に作家デビュー。2007年に「その街の今は」で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。10年には「寝ても覚めても」で野間文芸新人賞、14年には「春の庭」で芥川賞を受賞しました。

いろんな結婚、いろんな夫婦がある

 昨年秋に出版された「千の扉」は、結婚して東京の公営団地で暮らし始めた主人公の女性・千歳ちとせと、団地の住人たちの人生模様を描きます。自身も幼い頃は団地に住んでいたといい、「同じ団地に住んでいる友達が多かったので、よく遊びに行ったのですが、間取りはみんな同じなのに違って見えた。団地のそれぞれの家に、違った家族がいて、違った人生があり、その一つ一つにいろんな記憶が詰まっている。そんな思いが子供の頃から染みついていたので、一度、団地の物語を書きたいと思っていた」と、執筆の経緯を明かしました。

 数回会っただけの男性にプロポーズされ、結婚式も挙げずに一緒に暮らし始めた千歳は、戸惑いを感じながらも、夫とゆっくりつながりを深めていきます。「私ぐらいの世代だと、若い頃に、男女が道端でけんかしたり、雨の中で抱き合ったり、そんな激しい恋愛を描いたドラマがたくさんあって、『きっといつか自分にもああいうことが…』と思っていた人が多かった。でも、周囲で結婚する人が増え、自分自身も年齢を重ねると、もっといろんな恋愛、いろんな結婚、いろんな夫婦があるんだなあと思うようになった」と振り返った柴崎さん。「結婚すれば、基本的に何十年も毎日一緒に生活していくことになる。そこで夫婦がどんな関係を作っていくのか。子供が生まれたりして、だんだん関係が変わっていくなかで、どう相手とうまくやっていくのかが重要」と、結婚観を語りました。

 何げない日常の風景を丁寧に描く柴崎さんの小説では、道ばたに映えている草の名前までがきちんと書かれています。それは、生まれ故郷の大阪から東京に引っ越した時に、公園や街で見かける草木のことを知りたいと思って、植物図鑑を買って名前を覚えたことが役立っているとか。

「寝ても覚めても」が映画化

 代表作の一つ「寝ても覚めても」は、東出昌大さんらが出演して映画化され、今夏にも公開の予定。目の前から消えた恋人と、その恋人にそっくりな男性との間で揺れ動く女性の姿を描いた物語で、試写を見た柴崎さんは「自分が(原作を)書いたことを忘れて、3人の関係はどうなるかと、ドキドキしながら見ていました」と笑顔。「普段は大胆なことをしない人が、思い切った行動に出たり、普段はハキハキとしている人が、相手の前で全然話せなくなったり。それが恋愛の力なのかなと。普段とは違う一面、自分でも知らない一面が出てきたりするので、恋愛は、小説家として書いていて面白いテーマなんです」と、今後の作品執筆に意欲を見せていました。

 この日は「スペシャルナイトwith OTEKOMACHI」と題して、開園時間が21時まで延長され、明星学園大吹奏楽団のコンサートや「男劇団 青山表参道X」のトークショーなども行われました。