遺伝子で体形が決まるってホント? 専門家に聞く

今年こそボディメイク

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 たくさん食べるのにスリムなあの子は、太らない遺伝子の持ち主だから? 最近、遺伝子を調べてダイエットに活用するサービスが増えています。遺伝子で体形や太りやすさは決まってしまうのでしょうか。遺伝子診断に詳しい、理化学研究所プログラムディレクターの林崎良英さんに聞きました。

脂肪について知ろう


 はじめに、脂肪についておさらいしましょう。脂肪細胞(fat cell)には、いわゆる皮下脂肪や内臓脂肪と呼ばれる白色脂肪細胞組織(WAT)と、褐色脂肪細胞組織(BAT)の2種類があります。白色脂肪細胞組織は、取りすぎたエネルギーを蓄える役割を果たします。女性にとってはあまりうれしくない存在の脂肪ですよね。 
 一方で、褐色脂肪細胞組織は脂肪細胞のほんの数%しかありませんが、「燃える脂肪」とも言われ、白色脂肪細胞を燃焼させる働きを持っています。

遺伝子ダイエットは何を調べるの?

 いま、世間にあふれているダイエットに関する遺伝子テストは、脂肪の代謝に関わる三つの遺伝子「β3アドレナリン受容体遺伝子」「UCP1遺伝子」「β2アドレナリン受容体遺伝子」について調べるものが一般的です。それぞれ白色脂肪細胞の分解や、褐色脂肪細胞の働き具合、さらにエネルギーの消費などに関係している遺伝子で、その型で体形や太りやすさを分類しています。


 お腹が出ている「リンゴ型」、下半身に脂肪がつきやすい「洋なし型」、全体的に細いけれど一度脂肪がつくとなかなか落ちにくい「バナナ型」と果物になぞらえたり、太りやすさを数字で表したり。遺伝子テストといっても、口の中の粘膜などをこすって郵送するだけの手軽さで、急速に広がっています。中には、サプリメントを販売するのが目的でテストを薦める業者もあります。

遺伝子テストで太りやすさはわかる?

 では、太りやすい遺伝子型を持つ人は、ダイエットしても効果は出ないのでしょうか。その答えは「ノー」。そもそも、こうした遺伝子はあくまでもその人の脂肪細胞一つひとつの代謝能力を示しているもの。やせる、太るというのは、個人の基礎代謝量や食欲の程度と摂取量、食べたものを吸収・分解・消化する能力など、様々な要因全体で決まります。遺伝子型はそれらに影響を与える要因の一つでしかありません。
 以前、テレビ番組の企画で出演者の女性の遺伝子を調べたところ、とても太りやすい遺伝子型の持ち主でした。しかし、ご本人はとてもスリムでスタイルがいい。遺伝子がどうであれ、人は食べた以上には太れません。適切な食事と運動が重要です。

体形は遺伝子で決まる?

 では、体形はこれら3つの遺伝子で決まるのでしょうか。体形、つまり体のどこに脂肪細胞がつきやすいかは、どのくらいの量の脂肪細胞がどこに分布しているのかによって決まります。体形は数多くの遺伝子と環境要因によって決まると考えられていますが、現在の研究では、これら3つの遺伝子だから、脂肪細胞が体のこの部分に多くあり、この体形になる、ということは明らかになってはいません。
 そして、遺伝子ダイエットの検査対象である「β3アドレナリン受容体遺伝子」「UCP1遺伝子」「β2アドレナリン受容体遺伝子」のたった3つの遺伝子によって、体形が決まるという研究結果は今のところありません。テストで自分の遺伝子を調べ、脂肪細胞の代謝能力を知ることはできますが、そこから体形には結びつけることはできないのです。

ダイエットに関する遺伝子テストは占いと同じ?!

 体形や肥満は個人の絶対的な摂食量・消化・吸収能力や代謝など様々な要因によって決まります。ダイエットに関する遺伝子テストは血液型による性格診断や占いくらい(これも科学的根拠はありません)にとらえておくのが一番。健康的にやせるなら、科学的根拠のないサプリメントに惑わされたりせずに、食べ物や運動でのダイエットを頑張るのがよさそうです。

遺伝子についてちゃんと知ろう

アンジェリーナ・ジョリーさん(ロイター)

 ダイエットに関する「遺伝子テスト」とは違い、病院などで医師が行う「遺伝子検査」で、将来の病気にかかるリスクを減らすこともできます。米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは遺伝子検査で、乳がん・卵巣がんにかかるリスクを知り、乳腺および卵巣の予防的切除を受けました。
 彼女の主治医に会ったことがありますが、繰り返し面談を行って、疾患、手術のリスクなどを説明し、アンジェリーナさんもよく理解して納得したうえで決断されたそうです。

 遺伝子検査でリスクを調べ、しっかりとカウンセリングを受けて適切な治療を行うことは、人間が幸せに生きる上でとても大切なことです。
 遺伝子について、何が正しくて、間違っているのか。きちんとした知識を持って向き合うことが大切なのではないでしょうか。

林崎良英(はやしざき・よしひで)

 1957年大阪府生まれ。82年大阪大学医学部卒、86年同大学院博士課程修了、医学博士。92年理化学研究所研究員。同ゲノム科学総合研究センタープロジェクトリーダー、2008年オミックス基盤研究領域領域長。2013年理化学研究所予防医療・診断技術開発プログラムプログラムディレクター。紫綬褒章,日本遺伝学会木原賞,持田記念学術賞,カロリンスカ研究所名誉医学博士賞など受賞。

 

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