産婦人科医・高尾美穂「生理痛もPMSも、もう我慢しなくていいよ」

産婦人科医として診療を行うかたわら、テレビや雑誌などのメディアや講演活動を通じて、女性の健康やメンタルヘルスに関する情報を発信している高尾美穂先生。今年刊行された最新の著書「大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111」(講談社、1760円税込み)は、女性ホルモンと女性の人生の密接な関係を解説しながら、20~50代の女性がより楽に、より幸せに生きていくためのヒントを伝える一冊です。とくに若い女性に知ってほしい、生理や妊娠・出産にまつわるあれこれについて聞きました。

心と体のケアを必要とする人がいる

産婦人科医は、初潮を迎える10代から閉経後の50代まで、さまざまな年代の患者さんの体を診ています。一人の患者さんの人生に長く寄り添えることに、他の科にはない魅力を感じ、私は産婦人科医になりました。

けれど大学病院に勤めていた若い頃は、体調を崩して受診する患者さんを待っていることしかできませんでした。また、限られた診療時間では、患者さんの悩みを聞くことにも限界がある。自分から皆さんの悩みを聞きに出ていきたい、そんな思いから39歳で大学病院を辞め、現在は「イーク表参道」というクリニックに勤めながら、さまざまなメディアを通じて情報発信する活動を続けています。

2020年、コロナ禍による自粛生活のなかで、音声配信アプリを利用して発信を始めました。リスナーの方々から寄せられたお悩みにも答えています。そうした活動を通して感じるのは、仕事や恋愛、家族、人間関係など、実にさまざまな悩みがありますし、女性の生き方はいく通りもあるということです。

専業主婦、既婚でパート勤め、独身のキャリアウーマン、独身で無職、シングルマザーなどなど、選択肢が広がる一方で悩みも複雑になっている。彼女たちのなかには、病院での治療ばかりでなく、心や体のケアを必要としている人が大勢いることに気がつきました。そんな女性たちに、私ができることはなんだろうと考えた時、思い至ったのは女性ホルモンの変動と心のあり方を結びつけてアドバイスすることでした。

女性ホルモンの分泌量の変動に大きく揺さぶられる女性の人生において、うつ病を発症しやすい三つのタイミングがあります。まず生理前。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンにはメンタルを安定させる作用がありますが、生理前はどちらも減少するため、メンタルが不安定に。いわゆるPMS(月経前症候群)です。二つめのタイミングは、産後。妊娠中は胎盤から大量のエストロゲンが分泌されますが、産後はほぼゼロになるため、うつ状態になりやすい。授乳などによる睡眠時間の不足も追い打ちをかける時期です。そして三つめの時期が更年期です。エストロゲンの分泌量が不安定になり、そして徐々に減り、閉経へと向かう過程でイライラや落ち込みなどの心の不調が起きやすくなります。しかし、こうしたメンタルの揺らぎに自分自身で気づいて病院を受診することは、意外と難しいものなのです。

このような女性ホルモンとメンタルの関わりを知っている私が、「あなたに当てはまるのは、こういうことなのでは?」と問いかけることが、その人自身の生活を振り返るきっかけになればいいなと思っています。

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30代で産婦人科医をかかりつけ医に

「大手小町」読者の年代では、職場での経験を積み、ようやく自分で方針を決められる立場になったり、責任の重いプロジェクトを任せてもらったり、仕事が楽しくてしかたがないという人が多いのでは。体力的にも無理が利くし、自分は健康だと思っているから、生活習慣を省みることもあまりなく、会社の健康診断以外で産婦人科を受診する人も少ない。

けれど、ひどい生理痛やPMSを抱えているのに我慢しているという人が、実に多いのです。以前行った30~40代前半の女性500人へのアンケート調査では、生理の悩みを抱える人は80%に上り、「生理が憂鬱ゆううつに感じるか」という問いには約60%の人が「そう感じる」と答えています。また、子宮けいがんは20代から、乳がんは30代から発症が増え始め、命に関わる場合もあります。

今、皆さんには「かかりつけ医」がいますか? 調子が悪い時にはここで診てもらうというかかりつけ医を持っておくといいと思います。不調のたびにあちこちの病院にかかると、その都度初診料やさまざまな検査代がかかりますが、1人の医師に診てもらえば無駄がないうえ、自分の体のことや性格、仕事や家庭などの背景をよくわかってもらえているので安心です。

女性のかかりつけ医には、産婦人科医がおすすめ。30代くらいまでに出会えるのが理想的です。生理痛やPMSの治療はもちろん、妊娠・出産、産後の悩みにも対応できますし、その後の更年期もサポートできます。更年期になった時に初めて受診すると、医師は患者さんの膨大な情報や訴えを一から聞く必要があり、診療に時間がかかってしまいます。

大学病院のほうが安心だと思われがちですが、街のクリニックのほうが細かいホルモン治療にけている場合も多いです。相性の良い医師と出会えるように主体的に動くことも大切ですね。

産婦人科医の高尾美穂先生
高尾先生が副院長を務める「イーク表参道」の、明るい日差しが降り注ぐ待合室で

妊娠・出産にはタイムリミットがある

30代後半の女性の悩みとしてよく上がるのが、子どもがほしいかどうかわからない、あるいは、将来的には妊娠を望んでいるけれど今はそのタイミングではないというような、妊娠・出産に関することです。現代では、40代で出産する人も少なくないため、自分もいずれ妊娠することが可能だろうと漠然と考えている方もいるかもしれません。ただ、現実的には35~36歳ごろから卵子が老化し、妊娠する力は急激に衰えます。

私が産婦人科医を目指していた時代は、体外授精が行われるようになった頃で、「試験管ベビー」という言葉も聞かれました。何歳でも子どもを産めるかもしれないという仮説に基づいて研究が行われていて、その一方で女性たちは、男女雇用機会均等法に後押しされて社会に出て活躍し始めていた。しかし結局、妊娠・出産にはタイムリミットがあることが明らかとなり、気づいた時にはもう遅いという状況に。それがまさに私たちの世代です。

次の世代に、そういう思いをさせなくていい社会にしていきたい。そして、子どもを持っても持たなくても、自分が納得できる、幸せだと思える人生を歩むお手伝いをしたい。そう願っています。

次回からは、生理痛、PMSの治療法や、妊娠・出産、産後ケアなどにまつわるさまざまな疑問に答えていきたいと思います。意外に知られていない“女性にとって大切なこと”を一緒に勉強しましょう。

(聞き手・読売新聞メディア局 深井恵)

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高尾美穂(たかお みほ)
産婦人科医

医学博士・産婦人科専門医。イーク表参道副院長。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者。テレビ、雑誌、SNSなどを通じて女性の健康に関する情報を発信している。音声配信アプリstand.fmで毎日配信している番組「高尾美穂からのリアルボイス」では、リスナーのさまざまな悩みに回答。著書に「心が揺れがちな時代に『私は私』で生きるには」(日経BP)、「生理周期に合わせてやせる!超効率的フェムテックダイエット」(池田書店)などがある。

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