山田ルイ53世、2人の娘の親になって思う「輝いて生きなくてもいい」

お笑いコンビ「 髭 ひげ男爵」の山田ルイ53世さん(47)は、妻とともに、小学4年の長女(9)と次女(2)を育てている。自分を反面教師に、他人を気にして頑張らなくてもいいと願う。

20歳までひきこもり

「上の娘は『鬼滅の刃』が好きで、下の娘は『アンパンマン』に夢中。子どもが好きなアニメを一緒に楽しんでいます」

子どもの頃、親や学校の先生の顔色をいつもうかがい、「大人に褒められることが『ガソリン』だった」と振り返る。「でも空虚だと気付いた。だから、娘たちが好きだと思うものや興味を持ったことは、大切にしてあげたいです」と語る。

「娘たちが、何者にもなってもらわなくて結構」と言い切る。子どもたちには「自分のような経験をさせたくない」という信念がある。

小学校の成績は優秀で「神童」と呼ばれた。有名私立中学に合格し、サッカーも勉強も得意だったが、中学2年の時、登校中に大便を漏らした。恥ずかしさで不登校になり、20歳まで自宅にひきこもった。自分を支えていた周りの評価を失った。罪悪感や孤独感を抱えながらも、家から出られなかった。

同じ年頃の若者が出席する成人式の様子をテレビで見て、大きな不安が襲った。必死に勉強して国立大学に進学。友人に誘われ、学園祭で漫才をやってウケたのを機に、お笑い芸人を目指した。

「ひきこもりの時間は無駄だった」と断言する。「10代と大人の6年間は価値が違う。修学旅行にも行きたかった。もったいないことをしたなと後悔しています」

隠してきた職業を告白

和田康司撮影

夢がなくてもいい、キラキラ輝いて生きなくてもいい――。親になり、強くそう思う。

長女は、絵を描くのが好きで、2~3時間も熱中する時がある。「その姿を見て、俺とは違うと 安堵あんど します。娘の中の種火を消さないようにしたいです」

長女には登校前、「うんこしたか?」と確認し、帰宅すると「今日は学校楽しかった?」「友だちとどんな遊びをしたの?」と質問する。長女の話に耳を傾けて会話を楽しみながら、宿題を教える。「不登校になると人生が格段に面倒になるので、色々と聞いてしまいます」と苦笑する。

次女とは、よく近所の公園に出かける。汗だくになりながら、一緒に遊具や砂場で遊ぶ。仕事のない平日の昼間、次女と歩いていると、白い目で見られるように感じる。「俺がお笑い芸人だとばれたわけではなく、まだまだ日本の社会に男性の育児が当たり前だと浸透していないからでしょう」と指摘する。

ワイングラスを片手に「ルネッサーンス」と叫ぶネタで人気になったが、まもなく仕事が減った。それが原因で子どもがいじめられるのではと危惧し、子どもたちに職業を隠してきた。「うそはダメ」と言いつつ、テレビに出演した自分を指摘する長女に「似てるね」とごまかしてきた。

しかし4月、ついに長女に告白した。男爵の衣装で自宅の居間に登場すると、長女はうすうす気が付いていたようで「やっぱり~」と笑顔になった。

「照れましたが、娘の表情にうれしい気持ちになりました」と打ち明ける。「今後は、自宅で堂々とユーチューブ配信などの仕事ができる。娘たちが自立するまでは稼がないといけませんしね」と笑う。(読売新聞生活部 矢子奈穂)

山田ルイ53世(やまだ・るい53せい)

1975年、兵庫県生まれ。「髭男爵」のツッコミ担当。著書に「ヒキコモリ漂流記 完全版」(角川文庫)や「パパが貴族」(双葉社)などがある。学校などで、自身のひきこもり経験を語る講演なども行っている。

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