箱根を代表する美術館の一つ、ポーラ美術館が開館20周年の節目を迎えました。初めて全館を使った大規模な企画展を開催しています。2002年9月に開館したポーラ美術館は、ポーラ創業家二代目の鈴木常司(1930~2000年)が戦後約40年をかけて収集したコレクションを基盤にさまざまな企画展を開催してきました。近年では、20世紀から現代についても重要な作品の収集を行っています。本展は、鈴木常司が収集したコレクションと、そのほとんどが初公開となる近年、新収蔵した作品を合わせて紹介する初の機会となります。
メインテーマは「光」
本展の主要なテーマは「光」。光の表現を追究したモネら印象派と合わせて、光への強い関心がうかがえるゲルハルト・リヒターら現代作家の作品にも焦点を当てていきます。同館を象徴するクロード・モネの「睡蓮」をはじめ、ヴィルヘルム・ハマスホイなど独自の光のとらえ方が楽しめます。
近年、注目の女性作家のベルト・モリゾ作「ベランダにて」。一人娘のジュリー・マネを優しい筆致で描きます。おなじみ、同館の“看板娘”であるルノワール「レースの帽子の少女」などとあわせて、画面の柔らかい光の美しさにうっとり。美術館も春の光に包まれています。

近代、現代アートへの力の入れ方には目を見張りました。松本竣介、白髪一雄、三島喜美代、杉本博司など、戦後日本を代表する抽象画家の作品がずらり。木島俊介館長はプレスへの挨拶の中で、コンテンポラリーアートを収蔵する施設を新たに作ることも計画している、と述べていました。ますます充実しそうですね。

人気の遊歩道にも様々な彫刻が展示され、目を楽しませてくれます。この森の中で展開されるスーザン・フィリップスの音のインスタレーションは必聴です。
館内の五つの展示室、現代美術を展示するアトリウム ギャラリー、ロビー空間、森の遊歩道にいたるまで作品を展示します。質量ともに文句なしの充実度。同美術館の節目にふさわしく、内外の名作コレクションをたっぷり楽しむことができます。施設全体を使う重量級の展示なので、できれば時間に余裕をもって、ご来館ください。
(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)
ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ―新収蔵作品を中心に
会場 ポーラ美術館(神奈川県・箱根)
会期 2022年9月6日(火)まで
開場 午前10時~午後6時※入館は閉館の30分前まで
休館日 会期中無休
詳しくは公式サイトへ
あわせて読みたい