立川志の輔さんの新作落語「大河への道-伊能忠敬物語-」を原作とする映画「大河への道」が5月20日、全国で公開されます。伊能忠敬の元妻エイと千葉県香取市役所職員の2役を演じる北川景子さんに、映画の見どころ、俳優としての今後の抱負について聞きました。
映画は、郷土の偉人・伊能忠敬を大河ドラマの主人公にしようと香取市役所で繰り広げられる現代喜劇と、日本地図完成に隠された江戸時代の感動秘話の二つのストーリーで構成。中井貴一さん、松山ケンイチさん、北川景子さんら出演している俳優陣は1人2役で、現代と江戸時代それぞれに登場します。

伊能忠敬の遺志継いだ4番目の妻
――伊能忠敬の元妻エイという役にどのような気持ちで臨みましたか。
エイさんは伊能忠敬の4番目の妻ということ以外、調べてもあまり詳しい記録が残されていません。伊能忠敬を愛し、彼が成し遂げられなかった日本地図を完成させたいという思いが強くあったのでしょう。そのため、周囲をだますような作戦を考え、人を巻き込んで実現へ向かって動かす、とても頭のいい人だと思いました。
「ああしなさい」「こうしなさいと」と言うのではなく、みんなを温かく見守りながら伊能隊を一つにまとめていました。エイさんのまるで聖母のような包容力、我慢強さ、知恵が回る賢さが表現できればいいなと思いました。
――伊能忠敬の死後、エイの思いをどのようにとらえていましたか。
エイさんは、地図を完成させようと夢中になっている伊能忠敬を尊敬していたのでしょう。脇目もふらず、まっすぐに打ち込む姿に心ひかれているのかなと考えました。エイさんにとって、伊能忠敬は忘れたくても忘れられない存在。日本地図が完成するまで、そばに一緒にいるような気持ちだったと思います。
――時代劇の役に挑戦するのはいかがでしたか。
幼い頃は家に帰ると、テレビで時代劇がついていることが当たり前でした。祖父母と一緒に水戸黄門を見ていた私にとって、時代劇は身近な存在で大好きです。日本の古い文化や暮らしを映画やドラマで残していけたら素敵なことだと思います。

「まあ、いいか」力を抜けるようになった
――2020年に第1子出産を発表して以来、ドラマや映画に相次いで出演されています。
産後がどれだけ大変かということや、自分の年齢や体力のことも考えず、元気にやれるだろうと過信していました。産後半年ほどで撮影に入り、今思えば、結構つらかったですね。ただ、いただいた仕事を責任をもってやりたいという気持ちが強くありました。
これまでは仕事のことだけ考えて、明日に備えて早く寝たり、スキンケアを怠らないようにしたり、ジムへ行ったり・・・、という感じでしたが、今は自分に構っている時間なんてなく、遅くなったからもう寝なきゃと毎日が綱渡りです。
――仕事と家庭を両立するために工夫していることは?
自分の弱いところやできないことを見せるのは、良くないと思っていました。でも、仕事と育児を自分一人ですべて抱えようとしても無理だし、正直に人に頼ることが社会においても家庭においても大事だと感じています。
どうしてもできない事情があるときは、上手に周囲へ言うようにしています。今日はちょっとしんどくて早く寝たい、というときは夫に家事を変わってもらうこともあります。夫婦共働きですから、翌日朝早いほうが早く寝られるように協力してやっています。
――結婚や出産を経験し、仕事との向き合い方に変化はありましたか。
「まあ、いいか」と思って、力を抜くことができるようになりました。以前は、30分以上走ってからじゃないと雑誌の表紙は出られないとか、ちゃんと準備をしないと人前に出られないという強迫観念めいた思い込みがありました。今では翌日に撮影があってもランニングに行けないこともあります。それも、しょうがないと自分に多少甘くなりました。年齢を重ねて、子供が生まれ、気持ちを前向きに切り替えるのがうまくなった気がします。演じられる役柄が、これから広がっていくかなと思っています。
――俳優は時間が不規則な仕事かと思います。キャリアを続ける上で望むことはありますか。
星空を見上げるシーンなどは夜遅くに撮影があります。早朝4時に家を出なければいけない仕事もあります。そういうとき、子供の寝かしつけや朝の支度は、夫婦どちらがやれるだろうかと考えます。午後9時以降はみんな働いてはいけない、というようなルールができたらいいですね(笑)。
(聞き手・読売新聞メディア局 鈴木幸大)
映画『大河への道』
公開日:2022年5月20日
原作:立川志の輔「大河への道-伊能忠敬物語-」/漫画版:小学館
監督:中西健二
脚本:森下佳子
音楽:安川午朗
出演:中井貴一、松山ケンイチ、北川景子、岸井ゆきの、和田正人、田中美央、溝口琢矢、立川志の輔、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功
配給:松竹
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
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