「夫に仕事を辞めてもらいたい」は自分勝手か、夫婦問題カウンセラーに聞いてみた

「なぜ私ばかりが仕事をセーブしなくてはいけないの?」。共働き家庭では、家事や育児の負担が偏ることでストレスを感じている女性が多いのかもしれません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、小学生の子どものいる女性から「夫が仕事を辞めて子どもの習い事の送り迎えをしてくれればいいのに」という投稿が寄せられて、1000個以上の「エール」ボタンが押されました。こうした悩みを、どう解消したらいいのでしょうか。夫婦問題カウンセラーの高草木陽光はるみさんに聞いてみました。

「夫に仕事を辞めてもらいたい」と題して投稿してきたのは、40代の「ささ」さん。夫は50代で小学生の子がいて、週4回も送迎が必要な習い事をさせています。子ども自身はその習い事に熱中していて、週5回でも6回でも行きたがっている状態。夫は送迎を手伝ってはくれていますが、できるのは仕事のない固定した曜日だけ。結局、トピ主さんが「仕事量をかなりセーブしている」と言います。

夫の3~4倍くらいの年収「勝手、わがままでしょうか?」

「(私は)やや特殊な職業のため夫の3~4倍くらいの年収があります。夫が仕事を辞めても私がフルで仕事をすれば、現在の世帯年収よりも確実に世帯年収は上がります」「夫は定年のない職ですので、極端に言えばあと20年今と同じ収入があるかもしれませんが、保障はないので、来年にも収入が途絶えるかもしれません。それに引き換え、私の方はフルで働けば今のさらに倍稼ぐことも可能、仕事ができる期間も夫よりも10年長い……」と続きます。そして、「夫が仕事を辞めて子どもの習い事の送り迎えをしてくれれば私がフルで働けるなぁ、仕事辞めてくれないかなぁと思っています」「男性の皆様、上記のような事情で妻に仕事を辞めてほしいと言われたらどう感じますか? 私の希望についてどう思いますか? 勝手、わがままでしょうか?」と夫に言い出す前に、発言小町に問いかけました。

発言小町の画面イメージ
発言小町から

この投稿には、約60件のレス(反響)が寄せられ、読んだ人から1000個以上も「エール」ボタンが押されています。習い事の送迎にベビーシッターを頼むなど、外注化を解決法としてあげる人、また、妻の方が経済的に恵まれているからといって、ストレートに夫に打ち明けるのはやめた方がいいという人が目立ちます。

「ご主人のプライド、ズタズタになりますよ。お金も大事ですが、ご主人の気持ちはあなたから離れるでしょうね。『安月給なんだから、送り迎えしといて。私は何倍もあなたより稼げるからあなたの給料なんていらないわ』と受け取るでしょう」と心配するのは、「はは」さん。

「仕事を辞めてもいいよ、と言われたら大喜びで辞める人もいるでしょうが、辞めたくない人もたくさんいます。仕事は給料をもらうため、というだけの理由ではなく、やりがい、さらに将来への保証などたくさんの意味を持ちますから」と「パル子」さん。夫の性格を見極めてから自分の気持ちを話したほうがいいとアドバイスします。「匿名」さんからも、「子どものために収入少ない方が辞めたらいいと言われたら、夫からしたら『あなたの仕事は価値なし』と言われた気になるでしょう」とコメントが付きました。

男だから女だからは関係なく…

「男だから女だからは関係なく、子どもの習い事の送迎のためだけに、仕事を完全に辞める決断をする人は、あまりいないと思います。仕事をセーブするか、働き方を変えるくらいならまだしも、仕事自体を手放すのはちょっと普通には考えられません」と「むいむい」さん。

時間に追われる女性
写真はイメージです

子どもの習い事の送迎が週4回もあって、思いきり仕事できないというトピ主さんのモヤモヤした気持ち。どう整理すればいいのでしょうか。「HaRuカウンセリングオフィス」代表で、数多くのカップルの相談にのっている夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんに聞いてみました。高草木さんは、オンラインで「妻・夫の ぶっちゃけトーク会」を開くなど、一人で悶々と悩む人たちに向けて、夫婦関係の再構築の仕方などをアドバイスしています。

「経済力のある夫と自立を求める妻の悩みはよく聞きますが、投稿された方の場合は、立場が逆転していて、妻のほうが経済力があるんですね。ついに、こういうパターンの悩みも出てきたか、という気はしますね」と高草木さん。「この方の場合、自分が仕事をセーブせざるを得ないという状況だから、どうしたら改善できるのか。効率的にも家計的にも夫が仕事を辞めてくれたほうが……という考え方にたどりついたようですが、私は、相手に『仕事を辞めろ』と軽々しく言うのは、避けるべきだと思います」と話します。

「状況よりも、相手の心にフォーカスしていくこと」。夫婦やカップルの相談にのるとき、高草木さんは、どんな判断でも、そのときの状況だけを見てしまうか、それとも長期的に関係性が続く相手の心にまで焦点をあてているかを考えてほしいとアドバイスしています。

「状況というのは一時的なことが多いです。例えば、お子さんの習い事なら、中学生や高校生になれば送迎という悩みは変化していくわけで、期間限定です。それに比べて、夫や妻という人生のパートナーの心はずっと続くもの。壊してしまうとなかなか取り戻せません。相手のいいなりになればいい、ということではないんですよ。まず相手に言う前に、どこまで言うべきかを自問自答してほしいと思います」と高草木さん。

その次に伝え方も大切だそうです。ポイントとしては、「私が困っているのは~で」「できれば~してみるのもいいかなと思う」「あなたの意見も聞かせて」など、自分の気持ちを押し付けるのではなく、相手を尊重して、一緒に考える姿勢を持つこと。「仕事に関しては、単にお金を稼ぐというだけではなく、人としての存在価値にまでつながる話です。夫に仕事を制限したり辞めたりしてほしいなあと思った時でも、伝え方は慎重にしてほしいですね」と高草木さんはアドバイスします。

その後、トピ主さんからは「皆様のご意見、すべて拝読いたしました。私の希望が夫の職や社会的立場を軽んじていると認識できたので、夫に退職を求めることはしません。妻からの退職の求めを受け入れる・喜ぶというレスがあったように、私の夫もそのタイプである可能性もありますが、夫本人が退職を希望しない限り私からは求めないことにしました。私がフルで働く準備を進めています」と追加の書き込みがありました。

せっかく大きな経済力を得たのに、家庭生活と両立させるために仕事を制限せざるを得ない女性の本音。あなたなら、どんなふうに受け止めますか。共働きのパワーカップルが増えている今、それぞれのカップルが“自分たち流”で答えを出していくしかないのかもしれませんね。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】
▽夫に仕事を辞めてもらいたい

高草木陽光
高草木 陽光(たかくさぎ・はるみ)
夫婦問題カウンセラー

「HaRuカウンセリングオフィス」代表。美容師、育毛カウンセラーを経て、その後結婚し、専業主婦となる。2009年に「NPO法人日本家族問題相談連盟」の認定資格を取得し、夫婦問題カウンセラーとなる。著書に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(ともに左右社)

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