「義務教育は無償」だけど…年10万円超「隠れ教育費」の実態

「義務教育は、これを無償とする」。憲法26条に明記されているように、公立の小中学校は無償のイメージが強いが、ドリルや資料集、算数セットや書道セットなどを買いそろえる必要があり、保護者の出費が結構かさむ。その実態を探ってみた。

教員ら選定、前例踏襲も

「オンラインや量販店で探せば、もう少し安くていいものがありそうなのに」

今春、長女が宮崎県内の公立小学校に入学する会社員女性(31)は入学前にそろえた学校指定の学用品を前につぶやいた。指定された体操服や算数セット、粘土などは結構高く、総額2万円超。入学後も 鍵盤けんばんハーモニカや絵の具セットが必要で、「子どもが使うので費用負担は仕方ないけれど……」と声を落とした。

学校が指定するものは多岐にわたり、入学前に準備する体操服や上履き、入学後のドリルやテストのほか、アサガオの栽培セットなどが対象になることも。補助教材の選定は教職員らが行うが、価格のばらつきも大きい。

小学校に入学した子を持つ親が、入学前後に買いそろえた学用品
小学校に入学した子を持つ親が、入学前後に買いそろえた学用品

文部科学省の2018年度の調査によると、学校教育費として、公立小に通う子どもを持つ保護者が1年間で負担したのは6万3102円だった。内訳は、図書や文房具など学習に使うものへの支出が1万9673円と3割超を占め、ランドセルなどの通学関係費が1万8032円、学級費などの学校納付金が1万2235円。修学旅行や遠足などは6951円だった。給食も年間4万3728円かかり、学校教育費とあわせて年間10万円強の負担だ。公立中の学校教育費は制服がある学校が多く、年間13万8961円と倍増する。給食費とあわせて年間18万円強だ。

「制服やカバンなど入学準備で1人10万円程度かかった」。中学2年の双子の男子を育てる東京都江東区の会社員女性(47)は振り返る。授業も難しくなり、教材費などで年間15万円程度かかったという。「高いと感じたが、学校から言われると、よく考えずに支払ってしまう」

保護者負担を減らす取り組みも

こうした学校運営に使う金額は公費措置のものと保護者負担のものに仕分けされているが、すべて細かく決められているわけではないという。保護者負担を減らそうと取り組む動きもある。

埼玉県川口市立青木中学校に事務職員として勤める柳沢靖明さんは、昨年度末まで勤務した同県内の学校で、保護者負担を年間約1万円減らしたことがある。副教材などの効果を教員と話し、必要かどうかを検討し合い、無駄を省いてきた。「前例踏襲で保護者負担が続いているものも少なくない」と指摘する。

柳沢さんは、同校で保護者向けに購入予定の備品の説明や、生徒1人当たりに使われたおおよその金額を紹介する「事務室だより」も発行してきた。「保護者が関心を寄せて学校に声を上げることも大事です」という。

千葉工業大の准教授で、教育行政学が専門の福嶋尚子さんは保護者として学校と関わった際、教員が一般の金銭感覚とずれていると思ったことがあったという。「授業がうまいだけではいい教員とはいえない。教員は教材選定などの際に保護者負担も意識すべきだ」と話していた。

制服再利用、市費で彫刻刀…各自治体が見直し

自治体の中には学用品などのリサイクルや共同利用に取り組んでいるところもある。

福岡県古賀市は「保護者費用負担軽減事業」として、2007年から公立中学校の制服などの再利用を始めた。10年からは、小学1年生が算数の勉強で使うおはじきなどの「数のおけいこセット」を市費で購入し、児童が使えるようにした。担当者は「費用負担を軽くすると同時に子どもがモノを大切にする心を養いたい」と話す。

神奈川県海老名市でも、使用頻度が低い柔道着や彫刻刀は市費で購入し、学校管理とした。ポロシャツや運動用のTシャツや短パンは基本的な仕様に沿っていれば自由とし、値段も含め保護者が選択できるようにしている。「使い道が透明化されれば負担も納得できる」という意見も多く、入学時などに保護者に必要な経費について説明している。

また、17年度の文部科学省の調査によると、小中学校給食費の無償化を実施する自治体は76自治体(全体の4.4%)あった。(読売新聞生活部 林理恵)

公立小学校で保護者が負担して購入する学用品の例、表

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