引っ越しの挨拶は一人暮らしでも必要?相場、範囲、常識マナーとは

新年度が始まり、引っ越しをして心機一転、新生活に臨む人もいるのでは。住む場所を変えたら、まず行うのはこれからお世話になる近所へのあいさつです。しかし近年では「一人暮らしを知られたくない」「引っ越しのあいさつのマナーがわからない」などの声も聞かれます。防犯やマナーに詳しい専門家に引っ越しあいさつの方法を聞きました。

リクルート住まいカンパニー(東京都港区)が運営する、引っ越し見積もり比較サイト「SUUMO(スーモ)引越し見積もり」が2019年に行った調査によると、引っ越しをした人で近所へあいさつをしたのは全体(有効回答数517)のうち71.8%でした。さらに細かく見ると、「一人暮らしの人のうち、あいさつをした」のは64.6%、「家族など複数人で暮らす人のうち、あいさつをした」のは75.5%と、一人暮らしのほうがあいさつをする人が少ない結果となっています。

マナーにも詳しい防犯アドバイザーの京師美佳さんは、「人間関係においては、あいさつの有無によって親しみやすさは大きく変わってきます」と説明します。防犯上でも、近所と親しくしていたり、あいさつがきちんと行われていたりする環境は、泥棒や強盗だけでなく全ての犯罪が起きにくくなるそうです。

一人暮らしでもあいさつは必要?

2021年9月、引っ越し前の隣人調査などを行う「トナリスク」(東京・豊島区)が行った、トラブルや引っ越しに関する実態調査(調査人数1034人)では、「近隣との人間関係を良好にしておくことで、近隣トラブルを避けることができたと思いますか?」の質問に対し、「思う(15.9%)」「どちらかというと思う(25.7%)」と4割以上が人間関係とトラブルには関係性があると回答しました。

引っ越し後に、隣人関係を良好にするために効果的だった行動としては、「引っ越し後のあいさつのときの対応でその人となりを判断して付き合いを対処する(30代/男性/東京都)」、「引っ越し前と後のあいさつ、日々のあいさつ、マンションの規則を守る、など常識的な事(60代/女性/千葉県)」など、引っ越し直後のあいさつまわりの重要性がうかがえます。

とはいえ、新生活を始める人の中には、一人暮らしを知られたくない人もいます。とくに女性だとストーカーやわいせつ犯のターゲットになる危険性も。そんな時は、京師さんは、「家族で引っ越してきた、と言ってもいいし、異性の家族と一緒に行くなど、あいさつの仕方を工夫してほしい」とアドバイス。京師さんに、良好な人間関係を築く、引っ越しにまつわるマナーを教えてもらいました。

引っ越しのあいさつで品物を渡すときのマナーや相場を京師美佳さんに聞きました
写真はイメージです
〈 いつ行く? 〉

引っ越し当日は忙しいので、次の日から1週間以内に。時間がたてばたつほど、「あいさつに来ないな」と年配の方などは思うかもしれないので、できれば2~3日中に。相手が忙しいと思われる、ご飯時の時間帯などは避け、午後2~3時くらいがお薦めです。複数回行ってもあいさつができないときは、手土産とお手紙をドアノブや玄関外に残しておきましょう。

〈 手土産は何を持参? 予算は? 〉

相手がもらっても困らない物で、たとえば日用品のタオル、洗剤などが好まれます。ハンカチなども「手切れ」を連想させますが、近年では“ハンドタオル”として気にする人は少ないのではないでしょうか。入浴剤などもいいです。食べ物なら、日持ちがする焼き菓子やクッキーなど、自分では食べなくても人にあげられるものがいいでしょう。金額の目安は、最低でも500円から。

〈 隣近所とはどこまで? 〉

上下と両隣の家にあいさつにいくのが一般的でしょう。ただ最近はセキュリティーの強いマンションだと、自分の住んでいるフロア以外には立ち入ることができなくなっています。あいさつは絶対ではありませんので、無理のない範囲で行いましょう。

〈 引っ越し屋さんへお礼は? 〉

実際に荷物を運んでくれる業者の人へ個別にお礼を渡す慣習もあります。丁寧に作業をしてもらえるよう、引っ越し前に渡すのがいいでしょう。作業前のあいさつのときにリーダーにまとめて渡すのもいいし、それぞれに渡してもいいと思います。金額は1000~2000円くらいがいいでしょう。私は、「お昼代にどうぞ」と伝えています。

人間だから……

京師さんによると、コロナ禍でおうち時間が増え、これまで気にならなかった音などが原因とみられる近隣トラブルが増えているそうです。「あいさつして品物も渡したほうが、人間だからある程度、心の中で損得が働き、多少の不満があっても我慢してもらえる」と言います。「うるさいな」と思っても、やわらかく注意してくれるなど、トラブルになりにくくなります。「やはり全く顔を見たことがないと、嫌がらせなどの隣人トラブルに発展する可能性が高くなるので、いざというときのワンクッションになるあいさつはしておいたほうがいいでしょう」と話しています。(読売新聞メディア局 渡辺友理)

京師さん
京師 美佳(きょうし・みか)
防犯アドバイザー

1971年大阪府出身。百貨店のエレベーターガールなどを経て、2001年3月錠前の資格取得。トータル防犯アドバイザーを目指し、セキュリティー企業へ就職。2002年10月防犯設備士取得。2005年5月、京師美佳セキュア・アーキテクトを設立。現在、講演、テレビ、新聞、雑誌など多方面で防犯の啓発活動を展開中。

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