国際政治学者・三浦瑠麗、仕事場でもずっと一緒 「猫語」で会話

我が家には、ベンガルの「レオ」(オス、3歳)とラグドールの「ジーナ」(メス、1歳)という2匹の猫がいます。毎日、自宅から一緒に通勤し、仕事場で自由に過ごさせています。

レオが初めてうちにやってきたのは、3年前の6月。私から夫への誕生日プレゼントでした。しまと点模様の交じった柔らかい毛皮で、まだ顔の形は子猫のまま。人気アニメ「ジャングル大帝」のライオンにあやかって「レオ」と名付けました。その後、ジーナを飼い始めました。

レオの朝は、執拗しつようにごはんをおねだりするのがお決まり。その後、ジーナとカゴに入って出勤します。日々、ボールを追いかけ、おもちゃに食らいつき、オフィスの中を自在に駆け回っています。仕事が終わると一緒に帰宅しています。これが私たちの日課です。

三浦瑠麗さん
「レオ(左)は筋肉質で運動神経抜群。ジーナは逆に、抱っこが大好きな甘えん坊です」(東京都内で) 今利幸撮影

週末は、軽井沢の別宅に2時間半かけて車に揺られて行きます。「猫は家につく」と言いますが、うちにきてすぐ毎日の移動に慣れてしまったレオにこだわりはありません。音楽を聴きながらじっと車窓から外を眺めています。まるで人間のような顔をして。

長いこと犬を飼ってきた夫や私は、すぐに猫は勝手が違うことに気づきました。「おいで」といっても無意味だし、こちらも言うことを聞いてもらおうとは思いません。承認と注目を何より喜んだ犬たちとは違って、猫との関係は独特です。つんとしているようで甘えん坊なのは、実は犬たちと変わらない。というより、猫の方が気まぐれな分だけ甘えん坊なのでしょう。

べったりと時間を過ごす結果として、私はレオの表情と声がわかるようになってきました。彼は「いい子ね」とか「かわいい」という言葉が大好き。そして私が仕事でオフィスを離れていて帰ってくると、必ず「いったいどこにいってたんだよー」という顔をしてやってきて小さめに「にゃぁん」と鳴いて首元をすりすりする。軽めの「みゃっ」はごあいさつ。「みゃーお」は蛇口から水を飲みたいか、遊んでほしいか、いずれにせよ人間を呼ぶとき。ときどき「わうわうー」というのも、何かを訴えている気持ちを表しています。具体的な理由が特になく甘えたいとき、さみしいときによく使うようです。

私のオフィスには吹き抜けがあり、天井はとても高いのですが、カウンターを伝って天井に飛び乗ってしまうと、人間は誰も彼をつかまえられません。おやつを置いても下りてこず、レオと会話して下ろすのは私にしかできません。私は「猫語」をそんなふうにして使っています。

さっぱり女子と甘え男子

ジーナは、白くてふわふわした毛、グレーの耳が特徴です。光が当たると、薄い青色の目にきれいな虹彩が見えます。ラグドールという猫種ですが、名前の由来は、抱っこが好きで、人形のようにじっとしているからだそう。

「ぬいぐるみのようなジーナ。きれいな毛並みです」(東京都内で) 今利幸撮影

犬や猫を飼い始めると、飼う数は増えていくという人が多いようです。我が家は昔、チワワを3匹飼っていた時期があり、レオを飼い始めた頃は、猫1匹だけだと寂しいなと思っていました。

レオは、1歳ぐらいまでは「乱暴者」で、手に負えませんでした。オフィスで仕事をしていると、私の背中にジャンプし、爪を立ててよじ登ろうとしたり、私の髪の毛にかみついたり――。私たち夫婦では相手に不足だろうと、ある日、お仲間の猫を探しに、20年来お世話になっているペットショップに行ったのです。

お店でジーナを選んだのは夫でした。スタジオジブリの名作アニメ「紅の豚」に出てくるマダム・ジーナの名前を付けたのも彼です。彼は欲しくてたまらなかったのか、いったん帰宅した後、「あの子にしよう」と、再びお店にお迎えしに行くことに。その間にも、「いなくなっちゃったらどうしよう」と気にしていました。

ジーナを連れてオフィスに到着すると、レオは異変を嗅ぎつけてやってきました。そして、なんと牙をむいてうなり、威嚇したのです。ジーナは本棚の下に隠れ、30分ほど出てこなくなりました。

しばらくすると、レオは新しい現実に順応し始めます。「ねえ、遊ぼうよ」とでも言うように、ジーナに誘いをかけます。しかし、ジーナは「こんな粗野な男など信用できるか」と、かたくなに本棚の下で気配を消しています。

2日後。2匹が仲良く寝そべり、レオがジーナの毛づくろいをしていました。「先住猫」は新しく来た猫に敵意を持ったり、疎外感を抱えて粗相したりすることも多いと聞きましたが、どうやら2匹の関係性が落ち着いたようです。

今では、レオはジーナにうるさがられてもアプローチを試みては、撃沈させられています。日の当たる居心地の良い1人がけのソファはジーナのものですが、彼女のお気に召した時だけ、ソファに上がって毛づくろいをさせてもらえるのです。

ジーナが家族になり、レオの生活はぐっと楽しくなったようです。でも相変わらず甘えんぼさんであることには変わりはありません。ジーナがさっぱりしている性格で、レオはとことん愛情を要求するタイプ。パソコンと私の間に割り込むのも、ゲラの上に座ってしまうのも、すべてわかったうえでのこと。レオは注目を要求する「お邪魔猫」なのです。

日常に彩り 家族一つに

忙しい日々の暮らしの中、からだや心の調子を整えるために大切なことは、朝の目覚めから、ひとつひとつルーティーンをこなすことなのではないかと思います。

朝、ジーナやレオに起こされて、カーテンを開けて光を入れる。ジーナやレオにご飯をあげて、植物に水をやって、ポットでお湯を沸かす――。最近、引っ越したのを機に、朝のそうした時間をゆっくりと過ごすようになりました。

子どもが「遅刻しそう!」と言いながら、ランドセルを背負って学校へ駆けていく。「気を付けてね!」と、その背中に向かって声をかけた後、続きの紅茶を飲む。

猫たちはそうした日常の風景のすべてに寄り添っていて、お茶請けのクッキーを盗もうとしたり、かわいい顔をして椅子にちょこんと座ったりして、私たちに彩りを与えてくれます。

赤ちゃんが家の中にいる感じ、とでも言えばよいのでしょうか。すべてが生き生きとして、ジーナやレオの表情も、ティータイムの話題になる。退屈するということがない。みんながジーナやレオの方を向いて、かわいがる。結果として、私たち家族をまとめてくれているのでしょう。

猫の気持ちがなんとなく分かるようになって、いっそう「家族」になりました。レオやジーナがいない暮らしは想像できない。

仕事のことで落ち込んでいると、レオが机の上にぴょんと飛び乗って、卓上の小引き出しの上に前脚をそろえて座る。私のことをじっと見たと思うと、今度は寄ってきて、おでこや頭をこすりつけ合うあいさつをする。これはレオの最大限の愛情表現なのです。

仕事上のストレスや、寸分の隙間もなく詰まった予定、次から次へと判断を下さねばならないなど、緊張感が続くと、頭の血流が滞るような感覚があります。そこへ、レオが私に頭をすりつけてくると、ふわっと緊張がほぐれるのです。レオが何を考えているかをくみ取ろうとすることで、からだの緊張が解けるのだなと思わされます。

活発なレオは、自分から気まぐれにやって来ては、注目を要求します。一方、ジーナは少しだけ離れたところにスタンバイしているのが好き。ある時、スタッフの一人が何かごそごそとしているなと思っていたら、誰も座っていないはずの椅子の上にジーナが寝ていました。スタッフは、ジーナをなでながら会議を聞いていたのです。

ジーナは、会議の最中にも、来客中にも、ふらっとオフィスに訪れては、空いた椅子に座って寝ています。お気に入りは、窓際にある夫のソファの上と、日当たりの良い来客用の「スタジオ」。明るい光をさんさんと浴びながら、日がな一日寝ています。

「レオ(左)とジーナにとってオフィスは遊び場。来客があると2匹が出迎え、あいさつしてくれることもあります」(東京都内で) 今利幸撮影

「注目の的」好みのレオ

レオには、布団で寝ている時、私のおなかを前脚でふみふみする癖があります。

「これはいったいどういうことだろう」と調べてみると、猫は赤ちゃんの頃、母乳がよく出るように、お母さんのお乳を前脚で押しながら飲んでいるそう。その名残なのか、赤ちゃん返りをするような気分の時に同じしぐさをするのだとか。

レオは目を少しつむるようにして黙々とふみふみをしたのち、うずくまって寝る。おなかの上にいられると少し重いのだけれども、こちらはじっとして、レオが寝るのを待ちます。

一方、ジーナは、私のおなかをふみふみもしないし、ベッドにも入ろうともしません。少し離れたところに安定した寝場所を見つけます。自足的な性格なのでしょうか。

レオは、見るからに複雑な表情をしたり、「猫語」で訴えてきたりと、感情が豊かです。レオと接していると、昔飼っていたチワワの「ニルス」を思い出します。

ニルスは、私が結婚後すぐに、生まれて初めて飼ったチワワ。オスで、白っぽいベージュのロングコートを着たような、ふわふわとした毛が特徴でした。

その後、同じくチワワで、どちらもメスの「めい」や「テト」が我が家にやってきましたが、ニルスだけは、どこか人間くさいところのある犬でした。常に私に寄り添い、注目を要求しては、何かを訴えているのです。

犬でも猫でも、性別によって性格が違うと感じます。夫はよく、「あなたが人間の男の子を育てていたら、きっとダメにするね」と言います。私が甘やかして育ててしまうだろうから、という理由。レオはオスだから、というより、初めての猫だったからではないか、と思うのですけれどもね。

レオは注目を浴びることが大好きです。時折、インタビューの収録でテレビカメラがオフィスに入る時などは、窓際のスタジオに偵察にやってきて、みんなの前で床に背中を擦り付けて転がってみたり、足元の匂いを嗅いだり。初対面の人に「なでられて嫌がらないのは人懐っこいですね」と言われます。ヘアメイクさんやカメラマンさんのスーツケースも大好きで、その中に入り込むとなかなか出てきません。いつの間にか照明を浴びる位置に移動し、私がメディアの人と話しているのを聞きながら悠々と毛づくろいをしています。「かわいい」と声が上がると、見るからに満足そう。

カメラがレオに向くと、レオは落ち着き払った様子で写真に納まります。「これはポーズを取っているね」とカメラマンさん。レオの写真をいただくこともあり、親バカな保護者としてはうれしい限りです。

「レオはカメラ好き。取材でカメラマンさんが来ると、『撮っていいよ』というふうにポーズを取るんです」(東京都内で) 今利幸撮影

(このコラムは、読売新聞で2月、3月に掲載されたものをまとめて再掲載しています。)

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三浦 瑠麗(みうら・るり)
国際政治学者
1980年生まれ、神奈川県出身。国際政治理論と比較政治が専門。東大大学院法学政治学研究科博士課程修了。自身で設立したシンクタンク「山猫総合研究所」代表。テレビ番組への出演や執筆を通して、言論活動をしている。
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