「THE BATMAN―ザ・バットマン―」怒り宿す、ダークなヒーロー

DCコミックス原作のヒーロー映画の中でも、「バットマン」シリーズにはダークなイメージがある。だが今回は、過去のどのバットマンよりもさらに暗い。もはやヒーロー映画というジャンルを超え、サイコスリラーやホラーを思わせるほどだ。

いつも雨が降っている架空の街ゴッサム・シティ。悪人たちの前にバットマンが現れる。「悪」に対する「正義」のはずだが、闇から忍び寄る黒い影は「恐怖」にしか見えない。その目にはヒーローにふさわしくない怒りが宿る。正体はブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)。両親を何者かに殺された大富豪の青年だ。彼が報復のため悪と戦うようになって、2年目の物語である。格闘技もまだ未熟。圧倒的に強いがダメージも負う。スーツを脱いだ体は生傷だらけ。リアルなアクションがその痛みを伝え、パティンソンの三白眼が、痛みでしか抑えられない激しい怒りを物語る。

ある日、権力者を狙った連続猟奇殺人が起こる。犯人を名乗る男リドラー(ポール・ダノ)は、殺人現場に事件のヒントとなる「なぞなぞ」を残す。そこにはバットマンに宛てたメッセージもあった。世の中のウソを暴くというリドラーの犯行が続くうち、街の腐敗が明らかになる。そして、バットマン自身が腐敗に関わっていることも。

映画「THE BATMAN―ザ・バットマン―」
(C) 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC

おなじみのキャラクターも登場する。しなやかでアクロバチックなキャットウーマン(ゾーイ・クラヴィッツ)のアクション。コリン・ファレルが演じているようには見えない特殊メイクの怪人ペンギン。それらも見どころだが、物語の中心はブルースだ。バットマンですらない。

ブルースが「変身」して超人となる。従来の作品はそんな印象が強かった。今回は違う。マスクの下に常に生身が感じられた。これほど内面に迫ったのは、バットマンの宿敵の原点を描いてオスカーを獲得した「ジョーカー」の影響もあるだろう。秘密兵器にも洗練されていない良さがある。例えばバットマンの車「バットモービル」。いかにも改造車で怪物のような 猛々たけだけ しさ。ペンギンとのカーチェイスはすさまじい迫力だ。

戦闘スーツに身を包んだ青年は、探偵役として猟奇殺人の現場を調べ、謎を解き、次第に犯人の狂気にのみこまれていく。恐怖が支配する闇の世界でのハードボイルドは 陰鬱いんうつ だが魅力的だ。最後にバットマンが見せる姿は、同時テロ以降、米国で変化したヒーロー像を反映しているようで、胸を打たれた。マット・リーヴス監督。

(読売新聞編集委員 小梶勝男)

THE BATMAN―ザ・バットマン―(米) 2時間56分。新宿ピカデリーなど。公開中。

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