「なぜ最近の若者は結婚したがらないのか」と上から言う前に

2021年に生まれた子供の数が約84万人と過去最少を更新したことが先月、厚生労働省の発表でわかりました。出生数が減少するのは6年連続で、1899年に統計を取り始めてから、最も少ない数となっています。

コロナ禍になったばかりの20年は「生涯をともにするパートナーを求める人が増えている」との情報もあったものの、コロナ禍になって2年目の21年は一昨年よりも結婚したカップルが2万組以上減っており、これは戦後最少とのことです。今回は海外と日本を比べながら、女性の生き方を考えます。

「子供を産まない女性」が頻繁に話題になる日本、出生率急上昇のドイツ

日本で結婚をする人が減り、少子化が進んでいることは事実ですが、それが何かと話題になるところが、筆者は「日本的だな」と感じています。

昔と比べて若者が結婚に積極的でなくなったのはドイツも同じですが、ドイツではそのことはあまり話題に上がらず、問題視もされていません。一生独身の人、パートナーと同棲どうせいしているけれど結婚しない人、従来の「男女の結婚」ではなく同性のパートナーと結婚をする人……。多様な生き方が当たり前となった今のドイツでは、「一昔前は当たり前」だとされていた「男と女の結婚」が減ることについて、「自然な流れ」として受け止められており、ことさら話題にすることはないのです。

AFP通信によると、ドイツは2016年に出生率が急上昇し、1973年以来の高水準を記録しました。そのうち、ドイツ人女性の出生数は前年と比べると約3.0%増えたのに対し、外国人女性の出生数には25%の増加がみられました。これは2015年にイスラム圏など「伝統的に子供を多く産む傾向の強い文化圏」の出身の人が、移民としてドイツに多数流入したことと関係しています。

ドイツでは長らく出生率が低迷していましたが、移民が多く流入したことで結果的に出生率が上がりました。このことについて、ドイツの「右寄り」の人からは批判の声も聞かれるものの、ドイツで「ドイツ人の女性ももっと子供を産むべきだ」といった声は聞かれません。基本的に「女性はもっと子供を産むべきだ」という旨のことを公の場で言うことは、タブーだとされています。

なぜ「女性に考えを改めてもらおう」となるのか

日本では昨年11月、広島県の「働く女性応援よくばりハンドブック」という女性向けの小冊子がネットで炎上しました。「結婚し子供を持ち仕事も持つ」という女性がタイトルで「よくばり」呼ばわりされていること、また小冊子の中で、家庭を持ちながら働く女性に対して「周囲への感謝や気遣いを忘れないように促していること」が批判の対象となりました。

同冊子では「パパ」が「ママ」に対して「『私ばっかり家事と育児をしている』というけど多少は(育児を)手伝っているんだから、勘弁してほしいな……」と言う一コマがありましたが、これも子供の育児は父親と母親の双方がするべきものなのに、パパが「手伝う」という言葉を使っていることに批判の声が寄せられました。指摘を受け、広島県は2月24日に有識者会合を開き、表現の見直しを行った上で、今年7月に改訂版の発行を目指すとしています。

過去には2013年に内閣府が作成した「生命いのちと女性の手帳」略して「女性手帳」が炎上したことがありました。同手帳には、女性の身体のメカニズムをふまえて「30代までの結婚や出産が望ましい」とする内容が盛り込まれていましたが、これが「少子化の責任を女性にばかり負わせているのはいかがなものか」「国が女性の人生設計に口を出すのはどうかと思う」と批判を受けたのです。配布は撤回され、改訂のうえで翌年に配布されています。

問題なのは、「女性が考えを改め、子供を産むことに前向きになれば、少子化は解決できるはず」と、安易に考えている人がまだまだいることです。「とにかく女性に産む気になってもらって、あとは女性が周囲に気遣いと感謝をしながら仕事と子育ての両立を頑張れば全てがうまくいく」……そんな思惑が透けて見えるのです。子育てを男女の共同作業としてとらえる視点が欠けています。

筆者も、女性の立ち居振る舞いや人生設計に第三者が当たり前のように口を出しをし「啓蒙けいもう」しよう、という「上から目線」が気になりました。

結婚するだけで実は充分コスパがいい

このように女性に対する役割の押し付けは問題ですが、その一方で、筆者は「婚活市場で高収入でない男性、正規雇用でない男性が不人気である」こと、すなわち結婚する男性に「稼ぐこと」という昔ながらの役割が求められていることも大きな問題だと思います。

このことについて話すと、よく「でも結婚は恋愛とは違って『生活』だから、やっぱり安定した収入の男性でないと困る」と反論されることが多いです。でも一人暮らしをしている男性と一人暮らしをしている女性が、互いに一人暮らしをやめ住まいを共にする、すなわち「結婚か同棲をする」だけでコスパは良いのです。
カップル

たとえば、家賃が8万円のワンルームマンションで一人暮らしをしている女性が結婚すれば、結婚後に同じ8万円を払ったとしても、2人なら16万円の部屋に住めるわけで、部屋数もそれなりに増えます。つまり同じ出費であっても、生活のクオリティーは1人よりも2人のほうが上がるわけです。一人暮らしの人は「せっかく料理をしたものの大量に余ってしまった」という経験をした人も多いのではないでしょうか。食費も光熱費も2人のほうがコスパが良いわけですが、日本では、この程度のコスパの良さでは「結婚の意味がない」と、納得しない女性もいます。

結婚をするもしないも、子を産むも産まないも、最終的には個人が決めることです。「なぜ最近の若者は結婚をしたがらないのか」「なぜ最近の女性は子供を産みたがらないのか」を分析するのもいいけれど、そもそも結婚も出産も女性の自由だということは、国にも自治体にも忘れてほしくありません。

昭和の時代のままの感覚で「結婚結婚、出産出産」と若者や女性をせかしたところで、この21世紀でしあわせになれる人はいるのでしょうか。

あわせて読みたい

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住23年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)。


購入はこちらから↑

Keywords 関連キーワードから探す